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# 28 獅子奮迅
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「んなっ!」
びっくりした。
横穴から大量の化け物が這い出てきた。
一つ目の蜘蛛の化け物。
例の謎のモニュメントの姿に近い。
並行思考で片方を分析に回しつつ、対策を並行して練り始める。
うん、あの数は普通に無理。
現在、豆丸を守っているのは、7体のモリと巫霊斎宮ハガネ。その内、モリの方は2体がオブジェクト化したばかりの未強化状態。蜘蛛の化け物にどれだけ通用するか疑わしい。それに対して他5体のモリは、豆丸がモリ達をオブジェクト化できるようになった初期の頃からいる、いわば最精鋭のモリ達。1体1体に名前をつけているわけではないが、識別しやすいように強い個体には「お気に入り」という機能でマーキングしている。お気に入り登録しておくと、ステータスを開かなくてもその個体を見ると、頭の上に「☆」のマークがついている。
一つ目の蜘蛛たちは、無数の穴から這い出してきたものの、その動きは緩慢で、まるで外からやってきた豆丸達を値踏みしているかのよう。獲物として認識された瞬間、一斉に襲われるのは目に見えている。
「とりあえず後ろに下がろう」
池をバックにすることで背面から襲われないように戦場となるべき場所を最初に選んだ。
徐々に半円形に包囲され、そのかまぼこ形の輪が狭まっていく。
「ゴリィィ~」
──ん?
ゴリ親方がけん制のために背後の水を大きな手で掬って蜘蛛の化け物に浴びせようとしたら、大きく退いた。
蜘蛛の化け物の挙動を見て、弱点らしきものに気づいた。
確かストレージの中に……あった。
ただのバケツ。
豆丸はストレージからバケツを出し、池の水を汲み取っては周囲に蒔いた。
やっぱり。
一つ目蜘蛛の弱点はずばり水。
水しぶきが少しかかっただけで、まるで強力な酸でも浴びたように白い煙が噴き出し、悶えている。
ただ、脚の部分は硬い爪でできているためか、少しだけ煙を上げながらも豆丸が蒔いた水の上を進んでくるので、完全な結界としての役割は期待できない。
相手が事前に姿を現している状況下では、勝敗というのは、戦う前にだいたい決まるものである。それは豆丸の長い人生で嫌という程経験してきたビジネスという戦場での理論がこんなところでも活きてきている証拠。
そのため、池を背にするという地の利を得た今でも、現状の不利な状況が変わっておらず、もう一手決定的な手を打たないとやられるのは目に見えているのを理解している。
これならどうかな?
発想の転換から得た新たな代案。
代案のリスクを精査して、勝率を導き出す。
並行思考のおかげで短時間で頭の中を整理できた。
豆丸はストレージの中からあるモノを取り出した。
取り出したのは、蟹の化け物ラヴァ・クラブ戦で大いに役立った「氷星花火」──。
ツタ忍にお願いして、蔦に氷の球を巻いて、池の中に放ってもらった。
パリッと、一瞬で氷のアートが池の中に生成された。
池の上にできた銀盤に転ばないように移動する。一つ目の蜘蛛の化け物達は、水が苦手なせいか、氷上には入ってこなかった。
豆丸は続いて、モリ達をオブジェクト化し始めた。最初に野良サルを5体優先的にオブジェクト化して、ボウガンを乱射して、一つ目蜘蛛の数を減らすよう試みた。だが、どんなに仕留めても後から次々と湧いてくるので、一向に減る気配がなかった。
「オブジェクト化の使用が一定回数を超えたことにより〝高速オブジェクト化〟を習得しました」
────────────────
高速オブジェクト化
生成時間30秒
一度に最大3オブジェクトまで生成可能
────────────────
並行思考を発動し、器用に右手でボウガンを扱い、左手でオブジェクト化を続ける。
これまで3分に1体と戦闘中には不向きだったオブジェクト化が、高速化したことによって、実用的になった。30秒で3体生成できるということは1時間続ければ、今までは20体しか生成できなかったところを360体ものモリをオブジェクト化できることになる。
10分ほど野良サルと豆丸のボウガンで数を削っていたが、約70体のモリを化け物の中に突撃させて、一気に数を減らす作戦に出た。当然、数が増えたとはいえ、夥しい数の化け物。みるみる内に倒されてしまい、30体を切ったところで、池の方に撤退させた。やられてしまったのはすべて生成したばかりのモリ達で最精鋭のモリは1体もやられていない。豆丸は、これを何度も繰り返して、怪物の数が尽きるのを待った。
しかし──
怪物の数が減る気配がない。
モリ達のスタミナが先に尽きてきたので、精鋭のモリ達を前に出すのを控えるようにすると被害が増えた。やはり、強化した個体に頼らざるを得ない状況だが、その中で、斎宮ハガネだけが異彩を放っていた。
凄まじい剣技で、化け物を次々と葬っていく。そのスピードは、強化個体全部足しても上回るほど。今回の戦闘が始まってレベルがどんどん上がっていって、現在レベル27で、総ステータスが5,399もある。獅子奮迅の働きで、戦線をかろうじて維持できている。もしハガネがいなければ、モリ達だけではとてもではないが、一つ目蜘蛛の化け物の圧倒的物量に太刀打ちできなかったはずだ。
戦いの結末が豆丸にはまったくわからない状況の中で、ひとつ嬉しいお知らせが届いた。
「斬リッ株のレベル、スキルがカンストしました。これにより〝進化〟のロックが解除されます」
びっくりした。
横穴から大量の化け物が這い出てきた。
一つ目の蜘蛛の化け物。
例の謎のモニュメントの姿に近い。
並行思考で片方を分析に回しつつ、対策を並行して練り始める。
うん、あの数は普通に無理。
現在、豆丸を守っているのは、7体のモリと巫霊斎宮ハガネ。その内、モリの方は2体がオブジェクト化したばかりの未強化状態。蜘蛛の化け物にどれだけ通用するか疑わしい。それに対して他5体のモリは、豆丸がモリ達をオブジェクト化できるようになった初期の頃からいる、いわば最精鋭のモリ達。1体1体に名前をつけているわけではないが、識別しやすいように強い個体には「お気に入り」という機能でマーキングしている。お気に入り登録しておくと、ステータスを開かなくてもその個体を見ると、頭の上に「☆」のマークがついている。
一つ目の蜘蛛たちは、無数の穴から這い出してきたものの、その動きは緩慢で、まるで外からやってきた豆丸達を値踏みしているかのよう。獲物として認識された瞬間、一斉に襲われるのは目に見えている。
「とりあえず後ろに下がろう」
池をバックにすることで背面から襲われないように戦場となるべき場所を最初に選んだ。
徐々に半円形に包囲され、そのかまぼこ形の輪が狭まっていく。
「ゴリィィ~」
──ん?
ゴリ親方がけん制のために背後の水を大きな手で掬って蜘蛛の化け物に浴びせようとしたら、大きく退いた。
蜘蛛の化け物の挙動を見て、弱点らしきものに気づいた。
確かストレージの中に……あった。
ただのバケツ。
豆丸はストレージからバケツを出し、池の水を汲み取っては周囲に蒔いた。
やっぱり。
一つ目蜘蛛の弱点はずばり水。
水しぶきが少しかかっただけで、まるで強力な酸でも浴びたように白い煙が噴き出し、悶えている。
ただ、脚の部分は硬い爪でできているためか、少しだけ煙を上げながらも豆丸が蒔いた水の上を進んでくるので、完全な結界としての役割は期待できない。
相手が事前に姿を現している状況下では、勝敗というのは、戦う前にだいたい決まるものである。それは豆丸の長い人生で嫌という程経験してきたビジネスという戦場での理論がこんなところでも活きてきている証拠。
そのため、池を背にするという地の利を得た今でも、現状の不利な状況が変わっておらず、もう一手決定的な手を打たないとやられるのは目に見えているのを理解している。
これならどうかな?
発想の転換から得た新たな代案。
代案のリスクを精査して、勝率を導き出す。
並行思考のおかげで短時間で頭の中を整理できた。
豆丸はストレージの中からあるモノを取り出した。
取り出したのは、蟹の化け物ラヴァ・クラブ戦で大いに役立った「氷星花火」──。
ツタ忍にお願いして、蔦に氷の球を巻いて、池の中に放ってもらった。
パリッと、一瞬で氷のアートが池の中に生成された。
池の上にできた銀盤に転ばないように移動する。一つ目の蜘蛛の化け物達は、水が苦手なせいか、氷上には入ってこなかった。
豆丸は続いて、モリ達をオブジェクト化し始めた。最初に野良サルを5体優先的にオブジェクト化して、ボウガンを乱射して、一つ目蜘蛛の数を減らすよう試みた。だが、どんなに仕留めても後から次々と湧いてくるので、一向に減る気配がなかった。
「オブジェクト化の使用が一定回数を超えたことにより〝高速オブジェクト化〟を習得しました」
────────────────
高速オブジェクト化
生成時間30秒
一度に最大3オブジェクトまで生成可能
────────────────
並行思考を発動し、器用に右手でボウガンを扱い、左手でオブジェクト化を続ける。
これまで3分に1体と戦闘中には不向きだったオブジェクト化が、高速化したことによって、実用的になった。30秒で3体生成できるということは1時間続ければ、今までは20体しか生成できなかったところを360体ものモリをオブジェクト化できることになる。
10分ほど野良サルと豆丸のボウガンで数を削っていたが、約70体のモリを化け物の中に突撃させて、一気に数を減らす作戦に出た。当然、数が増えたとはいえ、夥しい数の化け物。みるみる内に倒されてしまい、30体を切ったところで、池の方に撤退させた。やられてしまったのはすべて生成したばかりのモリ達で最精鋭のモリは1体もやられていない。豆丸は、これを何度も繰り返して、怪物の数が尽きるのを待った。
しかし──
怪物の数が減る気配がない。
モリ達のスタミナが先に尽きてきたので、精鋭のモリ達を前に出すのを控えるようにすると被害が増えた。やはり、強化した個体に頼らざるを得ない状況だが、その中で、斎宮ハガネだけが異彩を放っていた。
凄まじい剣技で、化け物を次々と葬っていく。そのスピードは、強化個体全部足しても上回るほど。今回の戦闘が始まってレベルがどんどん上がっていって、現在レベル27で、総ステータスが5,399もある。獅子奮迅の働きで、戦線をかろうじて維持できている。もしハガネがいなければ、モリ達だけではとてもではないが、一つ目蜘蛛の化け物の圧倒的物量に太刀打ちできなかったはずだ。
戦いの結末が豆丸にはまったくわからない状況の中で、ひとつ嬉しいお知らせが届いた。
「斬リッ株のレベル、スキルがカンストしました。これにより〝進化〟のロックが解除されます」
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