43 / 45
# 43 再会
しおりを挟む
「ごめんなさい、油断してましたわ」
「わっ、私は八雲家の人間よ、わざと引っかかったに決まってるじゃない!」
豆丸に雨が謝り、カグヤが苦しい言い訳を始める。
まだ高校生ぐらいなので、しょうがないが、社会に出ると言い訳ばかりの人間は、まわりの人は実は気づいていて辟易としている。知らぬは本人のみ。まあ、その社会全体が崩壊してしまったので、雨が今後ゆっくり彼女を諭してくれるだろう。
自然に寝たわけではない人間を無理に起こしてよいものか迷っているうちに雨、カグヤ、歩茶の順で目を覚ました。モリ達はまだ目覚めないので、寝たままの状態でストレージに収納した。
その後は、問題なく大きな屋敷の裏へ回り込めた。
岩場があり、人の手で削って作った石段を上ると、奥底まで澄んだ池があった。
池の底に目を閉じた斎宮ミカドが横たわっている。エン婆の話では、眠りについているとのことだったので、倭の地――邪馬台国で手に入れた瑞果を使えば、あるいは目を覚ますと言われていた。
だけど、瑞果をどうやって使うんだっけ?
池の底は、水深5メートル以上はある。
河童の二瓶という異名を持つ豆丸にとっては、ミカド少年のところまで潜るのは容易いが、その後、どうするんだろう。まさか水中で瑞果を食べさせるわけにはいかないし……。
「何してんの、豆丸。アンタ馬鹿じゃないの!」
とりあえず潜ってみようと思ったが、カグヤが止めた。
最近、ちょいちょい呼び捨てにしてくるが、気にしないようにしている。それより潜っては、ダメというのはなぜだろう?
「食べ物をなんでもいいから出して!」
カグヤに言われるまま、例の刑務所で譲ってもらったピーマンを渡すと、ポイっと池の中に放り投げた。
ジュゥっと、ピーマンが落ちた水面のあたりが白い煙を上げ、泡がぶくぶくしている。数秒後には収まったが、透明な水中にピーマンがどこにも見当たらなかった……。
「ものすごく強酸性の水よ。指を入れたら数秒で骨ごと溶けるわ」
――こわっ。
でも、それならミカドが溶けずに池の底に沈んでいる現実と食い違いが生じる。
「私も五家の人間だけど、斎宮家の〝神憑〟については少ししか聞かされてないから、憶測が交じるけど……」
カグヤの仮説は、「神憑」という儀式は、完全に失敗したのではなく、半分は成功したのではないか、という話だった。
斎宮家の選ばれた人間以外を拒むこの池に受け入れられたということは、器たり得ると認められた証ではないかという。ただ、彼には「神憑」なる何かを受け入れるための意志、または覚悟が足りなかったのではないかとのことだった。
えーと、じゃあ、つまり……どういうこと?
考えても、豆丸の頭からは答えが出そうもない。素直にカグヤの仮説に基づく対策を聞くことにした。
「回廊を過ぎたあたりから視線が剥がれたわ。今なら呼び出しても大丈夫よ」
なるほど。そういうこと!
カグヤの言わんとしていることにようやく気付いたので、さっそく斎宮ハガネをストレージから出した。
本来なら彼が試練を受ける資格があったとエン婆が話していたので、ハガネなら、この酸の池に飛び込んでも溶かされないはず。
「ハガネ、ミカドを助けてもらえる?」
「…………」
──そうだ、忘れてた。
斎宮ハガネは普段、ストレージの中にしまったままなことが多いので、すっかり忘れていたが、命令系の言葉にしか反応しないある意味ドMなキャラだった。
「ハガネ、ミカドを助けろ!」
「はっ――! しかし、ミカドとは誰ですか? 我が主」
覚えてないのか?
それとも斎宮ハガネとしての人格ではなく、Unit化したのでゲームキャラのような仮の人格がハガネの身体に宿っているのかは、わからない。
池の底に眠っている少年を池の外に出すように具体的な指示を出したら、すぐに行動に移した。
カグヤの仮説通り、ハガネは強酸の池の中でも特に問題なく潜っていき、ミカドを抱えて水面へと顔を出した。
「オジ様、ちょっと待ってて」
雨が水のスキルを使って、まだ強酸まみれのミカドを洗い流す。ホースを絞ったような勢いのある水をかけ続け数分、豆丸が瑞果をミカドの口に入れて食べさせた。
「――うっ、――ここは……」
きれいな顔をしている。
まだ、髪も服も濡れているが、それがまた美少年っぷりに拍車をかけている。
「ミカド君! ――よかった」
「――っ⁉ あっ」
豆丸に気づいたオカッパ頭の少年。何か言おうと口が開きかけたので、話す順番を少年に譲った。
ちょっと恥ずかしいが、感動の再会の場面というヤツ。あの手紙を受け取ってからというもの、ミカドとの再会をどれだけ待ち望んだことか……。
「あんた誰?」
関西芸人伝統のズッコケ芸のごとく、盛大によろめいた。
そうか、そうだった。
以前、会った時と違って、30代前半の見た目なので別人だと思っているのか。
「嘘だって! 爺ちゃんって、ひと目でわかったよ」
えっ、そうなの?
もしかして、からかわれた?
「その……助けてくれてサンキュな、爺ちゃん」
「うん、うん。――よかった」
急に目頭が熱くなる。
頬をかきながら照れて目を背けているオカッパ頭の美少年のことがすごく愛おしく思えた。
たぶん、この感情が子に抱く親の愛情なんだと思う。
「わっ、私は八雲家の人間よ、わざと引っかかったに決まってるじゃない!」
豆丸に雨が謝り、カグヤが苦しい言い訳を始める。
まだ高校生ぐらいなので、しょうがないが、社会に出ると言い訳ばかりの人間は、まわりの人は実は気づいていて辟易としている。知らぬは本人のみ。まあ、その社会全体が崩壊してしまったので、雨が今後ゆっくり彼女を諭してくれるだろう。
自然に寝たわけではない人間を無理に起こしてよいものか迷っているうちに雨、カグヤ、歩茶の順で目を覚ました。モリ達はまだ目覚めないので、寝たままの状態でストレージに収納した。
その後は、問題なく大きな屋敷の裏へ回り込めた。
岩場があり、人の手で削って作った石段を上ると、奥底まで澄んだ池があった。
池の底に目を閉じた斎宮ミカドが横たわっている。エン婆の話では、眠りについているとのことだったので、倭の地――邪馬台国で手に入れた瑞果を使えば、あるいは目を覚ますと言われていた。
だけど、瑞果をどうやって使うんだっけ?
池の底は、水深5メートル以上はある。
河童の二瓶という異名を持つ豆丸にとっては、ミカド少年のところまで潜るのは容易いが、その後、どうするんだろう。まさか水中で瑞果を食べさせるわけにはいかないし……。
「何してんの、豆丸。アンタ馬鹿じゃないの!」
とりあえず潜ってみようと思ったが、カグヤが止めた。
最近、ちょいちょい呼び捨てにしてくるが、気にしないようにしている。それより潜っては、ダメというのはなぜだろう?
「食べ物をなんでもいいから出して!」
カグヤに言われるまま、例の刑務所で譲ってもらったピーマンを渡すと、ポイっと池の中に放り投げた。
ジュゥっと、ピーマンが落ちた水面のあたりが白い煙を上げ、泡がぶくぶくしている。数秒後には収まったが、透明な水中にピーマンがどこにも見当たらなかった……。
「ものすごく強酸性の水よ。指を入れたら数秒で骨ごと溶けるわ」
――こわっ。
でも、それならミカドが溶けずに池の底に沈んでいる現実と食い違いが生じる。
「私も五家の人間だけど、斎宮家の〝神憑〟については少ししか聞かされてないから、憶測が交じるけど……」
カグヤの仮説は、「神憑」という儀式は、完全に失敗したのではなく、半分は成功したのではないか、という話だった。
斎宮家の選ばれた人間以外を拒むこの池に受け入れられたということは、器たり得ると認められた証ではないかという。ただ、彼には「神憑」なる何かを受け入れるための意志、または覚悟が足りなかったのではないかとのことだった。
えーと、じゃあ、つまり……どういうこと?
考えても、豆丸の頭からは答えが出そうもない。素直にカグヤの仮説に基づく対策を聞くことにした。
「回廊を過ぎたあたりから視線が剥がれたわ。今なら呼び出しても大丈夫よ」
なるほど。そういうこと!
カグヤの言わんとしていることにようやく気付いたので、さっそく斎宮ハガネをストレージから出した。
本来なら彼が試練を受ける資格があったとエン婆が話していたので、ハガネなら、この酸の池に飛び込んでも溶かされないはず。
「ハガネ、ミカドを助けてもらえる?」
「…………」
──そうだ、忘れてた。
斎宮ハガネは普段、ストレージの中にしまったままなことが多いので、すっかり忘れていたが、命令系の言葉にしか反応しないある意味ドMなキャラだった。
「ハガネ、ミカドを助けろ!」
「はっ――! しかし、ミカドとは誰ですか? 我が主」
覚えてないのか?
それとも斎宮ハガネとしての人格ではなく、Unit化したのでゲームキャラのような仮の人格がハガネの身体に宿っているのかは、わからない。
池の底に眠っている少年を池の外に出すように具体的な指示を出したら、すぐに行動に移した。
カグヤの仮説通り、ハガネは強酸の池の中でも特に問題なく潜っていき、ミカドを抱えて水面へと顔を出した。
「オジ様、ちょっと待ってて」
雨が水のスキルを使って、まだ強酸まみれのミカドを洗い流す。ホースを絞ったような勢いのある水をかけ続け数分、豆丸が瑞果をミカドの口に入れて食べさせた。
「――うっ、――ここは……」
きれいな顔をしている。
まだ、髪も服も濡れているが、それがまた美少年っぷりに拍車をかけている。
「ミカド君! ――よかった」
「――っ⁉ あっ」
豆丸に気づいたオカッパ頭の少年。何か言おうと口が開きかけたので、話す順番を少年に譲った。
ちょっと恥ずかしいが、感動の再会の場面というヤツ。あの手紙を受け取ってからというもの、ミカドとの再会をどれだけ待ち望んだことか……。
「あんた誰?」
関西芸人伝統のズッコケ芸のごとく、盛大によろめいた。
そうか、そうだった。
以前、会った時と違って、30代前半の見た目なので別人だと思っているのか。
「嘘だって! 爺ちゃんって、ひと目でわかったよ」
えっ、そうなの?
もしかして、からかわれた?
「その……助けてくれてサンキュな、爺ちゃん」
「うん、うん。――よかった」
急に目頭が熱くなる。
頬をかきながら照れて目を背けているオカッパ頭の美少年のことがすごく愛おしく思えた。
たぶん、この感情が子に抱く親の愛情なんだと思う。
30
あなたにおすすめの小説
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる