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# 44 神具?
しおりを挟む「それにしても」
ミカドが、豆丸以外のメンバーを見回す。
「やっぱり、ハーレムしてんじゃん」
「――っ⁉ いや、違うよ、これは……」
真剣に事情を説明する。
「まあ冗談がさておき」
冗談だったんだ……真面目に事情を説明して損した。
「どっかで見たことがあると思ったら、八雲の姉ちゃんじゃん」
「ふん、アンタみたいな生意気なガキって嫌い」
「お互い様だけどな?」
「あん? もう1回言ってみろよ、コラ?」
ちょちょっ、ストップ。
再開してすぐに口喧嘩を始めるって、この二人、仲悪すぎじゃ……。
「私は門口雨、この子は滝川歩茶ちゃん、よろしくね」
「爺ちゃんから聞いてると思うけど俺は斎宮ミカド。よろしくな、雨姉ちゃんと歩茶」
「はっはい、よろしくおねがい……しましゅ」
雨が挨拶をかねて歩茶と一緒に自己紹介を済ませた。知らない男の子に急に下の名前を呼ばれた歩茶は雨の後ろに半分隠れて挨拶したが、焦って語尾が可愛くなった。
いったん落ち着いたので、エン婆から話を聞いて倭の地へ瑞果を取ってきたこと。そしてその実をミカドに食べさせたことを話した。
「そっか、俺、試練に失敗したんだな」
落ち込んでいる様子はなく、何か考え事をしている雰囲気。
「爺ちゃん、ハガネの兄ちゃんを借りるよ」
「はっ、はい――、ハガネ、少年の言うことを聞くんだ!」
「はっ、承知しました⁉」
命令口調じゃないと言うことを聞かないM体質のハガネに命令した。
それにしても、ミカド君、また試練に挑もうとしている?
斎宮家の親戚同士は、二人同時に池へと飛び込み、池の底へと潜っていった。
あれが試練の正体。
透明だったというより、カメレオンのような周囲の景色と同調していて、見えなかった巨大なカエル。その巨大なカエルが底に到着したハガネとミカドに姿を現して迎えた。
「あれって、たぶん多邇具久っていう神じゃない?」
──神?
カグヤが斎宮家の土地には、神様が棲んでいると親から聞いたと教えてくれた。日本にはいろんな神様がいるというのは、知っていたけどカエルの神様なんているんだ……。
オカッパ頭の少年、ミカドの様子がおかしい。
池の底で急に動かなくなり、気を失ったように見える。
その間に池の底から大量の泥が底から浮き上がってきた。泥から無数の手が伸びて、ミカドとハガネを捉えようと動き出す。
ハガネの方は、元気に見える。気を失うことなく、泥の手を刀で切り払っていて、激しく動く方にと泥の手が集まり、泥の手のほとんどをハガネが受け持つ形になっている。だが、数本の泥の手が向きを変え、ミカドを捕らえた。ハガネが時間を稼いでくれたお陰なのか、ミカドが目を覚ました。水中で「紙垂」を繰り出し使い、泥でできた無数の手を切り裂き、自ら拘束を解いた。
二人とも、泥の手を切り裂くこと数十秒。カエルの神様が口から何かを吐き出して、ふたたび姿が消えていった。
「お待たせ-」
「だっ、大丈夫?」
何ごともなかったかのように池から這い上がってきたミカドとハガネ。ミカドの手にはカエルの神様が吐き出した何かを握っている。
「さっき気を失ったように見えたけど?」
「あーあれ? 前回は、あれでやられちゃったんだよね」
気を失ったのは、精神に作用する試練で「魂の重さ」の篩にかけられたからだそうだ。以前、寺に発生したダンジョンの中で、何度も滝つぼに叩き落された試練。あの時は、過去の痛み、選択の重み、誰かを想う心、背負った責任など、「生き様の密度」を試されたが、あれと同じ内容だったみたい。
そう考えると、後継者の有力候補として幼少の頃から重圧に耐えてきた年上のハガネの方が魂の重みという観点では優位なのかも。ミカドは6歳まで母方の祖父の元で一般人として、過ごした過去があるのでどうしても、分が悪かったんだと思う。まあ、それを言ったら、還暦まで生きてきたはずなのにバンバン滝つぼに落とされた自分が悲しくなってくるので、これ以上、考えないことにした。
「これが〝神憑〟の神具らしいよ」
雨のスキルで、先ほどと同じく身体を洗浄して強酸水を洗い落としてもらった後、ミカドが小さな黒い板を豆丸に見せた。
うーん。
どう見ても、ドラレコとかスマホに使うメモリーカードにしか見えない。
どうやって使うのか、ミカドも知らないらしい。
一度、エン婆のいる巨大な門へと戻るためにハガネをストレージの中に入れた。
「婆ちゃん、この神具ってヤツどうやって……婆ちゃん?」
門から一度出て、エン婆のいる小扉を見上げると閉まったまま。もう一人の爺の方も扉を閉めたまま、反応がない。
ミカドが、エン婆がいた扉のところまでジャンプして、扉をこじ開けてみたところ、エン婆の体積分の白い灰しか残っていなかった。もう一人の虫を操っていた爺の扉の中も同じだった。
神憑の試練を誰かが達成するまで門を守るのが、歴代斎宮家の当主の中でも特に実力者だったエン婆たち3人の役目だったのではないかと教えてくれた。
「とりあえず爺ちゃんが預かってて」
「う、うん」
メモリカードっぽい物をストレージの中に保管した。まあ、豆丸のストレージの中で預かるのが一番安全かもしれない。小さいので、どこかで落としたら大変なことになる。
ミカドを助け出せたので、ひさしぶりに我が家に戻った。
豆丸がいない間も単純な作業ならできる野良サルとゴリ親方が、見違えるほど敷地内を整えてくれていた。ログハウス5棟に別棟の浴場、トイレ。開墾済みの広い土地もセットなので、なんだか別荘に来た気分になる。
現在、スキル〈収益化〉のおかげで、豆丸の所持コインは20億コインを超えている。そのため、いっそ敷地外に土地を広げようかと考え始めた。資金は潤沢、人手(モリの手?)も十分。敷地外の木を切っても、文明が壊れてしまった今となっては誰にも怒られない……はず。皆に相談したところ、ミカドに「いいんじゃね?」と返され、雨には「大地主の愛人も悪くないかも」と冗談を言われた。
あははっ。
──冗談、だよね?
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