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2、醜い私
しおりを挟む何を……?
何を、分かれというの?
シンシアさんの言ったことも、ジュラン様の言ったことも、全く理解が出来ない。
いっその事、お前は醜いから離婚してくれと言われた方がマシだ。
何もかもがショックで、私の中で整理出来なくなっていた。そんな私の気持ちなどどうでもいいようで、2人はそのまま離れに消えて行った。
「奥様、大丈夫ですか?」
メイドが心配して、声をかけてくる。
「……ええ、大丈夫よ。部屋に戻るわ」
部屋に戻るとベッドにうつ伏せになり、枕に顔をうずめる。1人になると、様々な感情が押し寄せて来た。
怒りが込み上げて来たと思ったら、悲しみが押し寄せる。愛している人からの裏切り……
「……っ……ぅ……ぅぅっ……」
枕に顔を押し付けながら、泣き続けた。
どれくらい泣いていたのか……
気付いたら、窓の外はすっかり暗くなっていた。
少しだけ冷静になった頭で考えても、ジュラン様の行動は理解が出来ない。
あれ程、愛していると言っていたのに、愛人を連れて来ただけでなく、子供を生ませるなど、最初から愛していなかったとしか思えなかった。全てが、偽りだったのだろうか……
結婚してから、1度もジュラン様に抱かれてはいない。私の身体を、気遣ってくれているのだと思っていたけど、私が醜いから抱きたくなかっただけのようだ。
私は、ジュラン様の何を愛していたのだろう……
彼と婚約してから一緒に過ごした日々は、すごく幸せだった。私に向けてくれたジュラン様の笑顔が大好きで、結婚したら毎日彼の笑顔が見られるのだと思っていた。
それなのに、結婚式以来、彼の笑顔を見ていない。あの事件以来、私に笑いかけてくれなくなっていた。
傷痕が残っているのを見て、彼は私を見限り、愛人を連れて来たのだろう。もう私は、ジュラン様にとってただのお飾り妻になったのだと悟った。
だからといって、納得はしていない。納得出来るはずがない。
妻が醜いから、愛人に子を生ませるなんて聞いたことがない。必要がないなら、私と別れればいい。
正直、こんな目に遭わされているというのに、それでもジュラン様を愛している自分に腹が立つ。
彼は、私を愛していない。それならば、私が身を引けばいい。
そのことを伝えようと、離れに行くことにした。
玄関までは普通に歩いて来られたけど、玄関を出た途端、足が動かなくなった。
ジュラン様が、シンシアさんと……
考えないようにしていたことが、急に頭に浮かんで来た。それでも無理やり足を動かし、進んで行く……
「こんな所で、どうしたんだ?」
声が聞こえて、我に返った。
「……ロード……侯爵?」
気付かないうちに、いつの間にか門の前まで来ていたようだ。
離れに向かうはずだったのに、ここから逃げたいという気持ちが、邸の外に足を向かわせていたみたいだ。
ロード侯爵は、私の様子がおかしいと感じたのか、心配そうな顔をしながらこちらを見ている。
「何か、あったのか?」
2人は友人同士だけど、シンシアさんのことは知らないのだろうか……
「……いいえ、何もありません。ジュラン様に会いにいらしたのですか?」
ロード侯爵に話したところで、何も解決しない。
「いや、ジュランは俺には会わないよ。俺は嫌われているからね」
「どういう意味ですか?」
私とジュラン様が出会う前から、ジュラン様とロード侯爵の仲がいいことは噂で聞いたことがあった。それなのに、嫌われているとはどういうことなのか。
「さあ……どういう意味だろうね。
今日は、君に会いに来たんだ。そろそろ、ガーゼが取れる頃だと思ってね」
言いたくないのか、はぐらかされてしまった。
「心配してくださり、ありがとうございます。少しだけ痕が残ってしまったので、ガーゼはこのままにしておくことにしました」
結局私は、ジュラン様の言う通り、ガーゼで傷を隠すことにした。そうしたところで、醜いことには変わりがないのだけど……
「……痕が、残ってしまったのか」
暗い表情になるロード侯爵。
ロード侯爵も、ジュラン様と同じで私を醜いと思っているのかもしれない……
そんなことを考えてしまうほど、私は疑心暗鬼になっていた。
「女性の顔に傷痕が残ることが、どれ程辛いことなのか俺には想像がつかない。だが、君の魅力は容姿だけではない。それを、忘れないでくれ」
ロード侯爵のその言葉が、私の心の闇に光を照らした。
「……ありがとうございます」
お礼の言葉しか出ない。これ以上何か言えば、涙が溢れてしまいそうだった。
「何かあったら、いつでも話を聞くから。なんて言ったら、またジュランに怒られてしまうな。だが、本心だ。じゃあ、今日は失礼する」
ロード侯爵は優しい笑顔を残して、馬車に乗り込み帰って行った。
ロード侯爵に勇気をもらった私は、そのままジュラン様とシンシアさんの居る離れへと向かった。
離れには、1度も来たことがなかった。
結婚式の帰りにあんな事になり、お義父様であるノーグル侯爵が用意して下さった邸の中を全て把握する時間もないまま、ジュラン様は愛人を連れて来た。
新婚生活を、2人で送れるようにと気を使って用意してくださったのに、愛人が暮らすようになるとは、ノーグル侯爵も思っていなかっただろう。
離れに着くと、中から楽しそうな笑い声が聞こえて来た。少なくとも、取り込み中ではなさそう。
息を整えてから、部屋のドアをノックした。
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