不死人になった私~壊れゆく不老不死の花嫁~

琴葉悠

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壊れゆく花嫁

二日ぶりの我が家!! 知らない所で発生する不穏な空気

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 グリースが帰った後、真祖はヴィオレをアルジェントを呼び、ルリの部屋の掃除と、ルリを湯浴みさせるように命令した。
 風呂は特に、ルリの体を丹念に洗うようにヴィオレに命令した。
 ヴィオレは真祖に命令されるがままにルリの体を丹念に洗った。
 ルリは不満そうな顔をしながら全身を洗われた。
 全身からグリースの残した香りとは違う花の香りが漂っていた。
「……」
 嫌いな香りではないので我慢した。
 風呂から上がり、体を拭くと、下着を付けられ、服を着せられる。
「……」
 ルリはため息をついて、部屋に戻る。
 部屋に戻ると、あの甘い香りは消えていた。
「奥方様、グリースの甘言にはお気をつけください」
 ヴィオレが険しい表情でルリに話しかけてきた。
「あれは吸血鬼と人間の敵です、二千年前の戦争でもっとも被害を出したのはグリースなのですから」
「……」

――でも私には優しかった――

 ルリはそう言いたかったが言葉を飲み込んだ。
 真祖がどこかで聞いてるかもしれない。
 そう思うと言いたい事も言えなかった。
「……出て行って、独りになりたい」
「しかし真祖様から……」
「……出ていけと行ってるの」
 厳しい表情でヴィオレを見る。
 ヴィオレは渋々部屋から出て行った。
 ルリはまた部屋に鍵をかけ、ベッドに突っ伏す。
「……帰りたい……」
 ぼそりと呟く。
「やっぱり帰りたい?」
 グリースの声にばっと顔を上げる。
 そして窓をみると、そこにいた。
「……帰りたい……」
 グリースの問いに頷く。
「じゃあ、帰ろうか」
「それはなりません」
 いつの間にかヴィオレが入ってきていた。
 鍵も閉めたはずなのに。
「メイドさん、厳しいねぇ。俺はホームシックになってるお嫁さんを一度お家に帰してあげたいだけだよ?」
「真祖様から、城から一歩も出すなと命じられております」
「へーあいつもトラウマになってんだ、前の嫁さんと息子が城から出て殺されたのが」
「グリース……貴様、真祖様を侮辱するようなものいいは慎みなさい!!」
 ヴィオレが怒りを顔と声で示す。
「じゃあ俺も言うわ、あいつのルリちゃんの扱い最悪だわ、ルリちゃん相当まいってる、メイドさんもそれくらいわかるだろ?」
 ヴィオレは答えない、どんな扱いかはわからないが、ルリが精神的においやられる扱いをしているというのは理解できているからだ。
 だが、自分の仕える主に物申すことなど恐れ多くてできないのだ。
「だから家に帰らせる、嫁さん大事にしない罰だ」
 グリースはベッドの上にいるルリを抱きかかえると、その場から姿を消した。


「奥方様!!」
 グリースいた場所にかけより、窓を見るが姿はない。
 転移でルリの実家に移動したのだおそらく。
「何事だ」
 真祖が姿を現す。
「真祖様!! も、申し訳ございません、グリースにルリ様を連れていかれました!!」
「グリース……貴様……」
 ヴィオレは頭を垂れ、真祖は忌々し気に呟く。
「真祖様、経った今、全ての吸血鬼が人間の国に入れなくなったとの連絡が」
「何ですって!!」
 アルジェントが部屋に入り、情報を伝えるとヴィオレは驚愕の表情をし、真祖はぎりっと歯を食いしばった。


 ルリが目を開くと、そこは見間違うはずのない実家だった。
 グリースはルリを抱きかかえたまま、家に近づきチャイムを鳴らす。
 しばらくするとやつれた顔をした女性――ルリの母親が出てきた。
「はい……どちら……る、り? ルリ⁇」
 グリースはルリを下ろすとルリは母親に抱き着いた。
「お母さん!!」
「ルリ!! 会いたかった!!」
 母親はルリを抱きしめた。

 二人が抱き合っていると、何者かが現れた。
「おや、人間政府の役人さんかい?」
 グリースが問いかける。
「どうも、私ロクショウと申します、政府所属の人間です。盟約の不死人グリースさんでしたよね」
「ああ、そうだよ」
「先ほど、人間が吸血鬼の国に入れなくなり、吸血鬼が人間の国に入れなくなったという事態が発生したんですが、それ貴方の仕業ですよね?」
「当然、おっと少し黙ってな」
 グリースはルリとルリの母親家の中に入ったのを確認してから会話の許可を出す。
「……困るんですよねそういうことされると……今通信でやりとりしてて結構もめてるんですよ」
「文句は真祖様にいいな、かわいい不死人の後輩――女の子を無体に扱ったあいつが全部悪い」
「それが言えたら苦労はしないんですよ……」
 ロクショウは困ったような顔をする。
「解いてくれませんかね?」
「解いたら真祖の馬鹿が来るだろう? そうしたらルリちゃんはここに来れなくなっちまう、それはごめんだね」
 グリースの言葉にロクショウは項垂れた。
「ならしかた――おご?!」
 グリースの拳がロクショウの鳩尾にめり込んだ。
 ロクショウはその場に倒れこむ。
「俺に勝とうなんざ一万年早いわ、いいかルリちゃんと家族に危害とか何かしようとしたら――しようとした奴ら関係者事皆殺しだ」
 グリースは怒りの表情でロクショウにそう告げた。
 ロクショウは何とか立ち上がり咳き込みながらグリースを見る。
「……分かりました、お伝えします」
 大人しく引き下がった。
 グリースはルリの実家の壁によっかかるようにして姿を消した。


「ルリ、何が食べたい。好きな物を作ってあげる」
「お母さんの手料理がいい、あとから上げとじゃがいもゆでたの!」
「この子ったらもう」
 母親は心底うれしそうな笑みを浮かべて買い物に行く準備を始めた。
 二階から何事かと様子を見に来た兄が目を見開き硬直していた。
「兄貴、ただいま」
「……おう」
 低い声をしぼりだすようにルリの兄は答えた。
「おばあちゃん、ただいま」
「ん……あれま、ルリでないの……帰ってきたのかい?」
「うん!」
 ベッドで横になっている祖母にルリは話しかける。
 二日とは思えぬほど長く離れていたように感じた。


「……」
 吸血鬼の国の真祖の城の玉座では、真祖が明らかに不愉快そうな顔をして座っていた。
 配下の吸血鬼が人間の政府とのやりとりの情報を伝えるなどして尽力していることを伝えるが一向に怒りが収まる様子はない。
「真祖様、アルジェントを使いに出しましょう、人間であるアルジェントなら向こうに行けるはずです」
「だが戻ってこれまい」
 ヴィオレの言葉を真祖は一蹴する。

「やっほー」

 部屋の中央に、灰色の風が舞う。
 風が止むとグリースが姿を現した。
 配下の吸血鬼たちは一斉に武器を構える。
「やだなぁもう物騒だなぁ」
 グリースは全く動じてない調子で答える。
「よく私の前に姿を現せたものだな……!!」
 真祖は怒りを隠しもせずにグリースを睨みつける。
「真祖サマ、アンタと二人で話がしたい、だからこの邪魔な連中全員追い出してくれないか?」
 グリースが言うと吸血鬼たちが彼に怒りを向ける。
「……お前たち、全員下がれ」
 真祖はグリースの言葉に従った、配下たちはざわめく。
「下がれ!」
 真祖の一喝に、配下の吸血鬼たちは全員出て行った。
 玉座の間には、グリースと真祖の二人だけになる。

 グリースは真祖――ヴァイスを見て怒りの表情を見せた。
「二日、二日だぜ、お前の所に来てたった二日であの子はあそこまで精神やられちまったんだ!!」
 ルリや他の者に見せていた軽い口調とは全く違う調子でグリースはヴァイスに言う。
「引き離された母親のやつれ具合も酷いもんだ、二日であそこまでやつれるってのは相当愛していたからだ!!」
 グリースの言葉にヴァイスは無言のままだった。
「お前が言い出した盟約破棄させりゃあよかったと今心底後悔してるよ!!」
「……ルリを返せ」
「断る。テメェみたいな野郎には返さねぇ」
 ヴァイスは玉座から立ち上がった。
 凄まじい殺気を放っている。
 グリースは険しい表情のまま殺気の圧に全く動じずその場に立っていた。
「ならば貴様が死ぬまで殺しつくしてから連れ戻すのみ!!」
「やってみやがれ!!」
 悪鬼と化したヴァイスを見て、グリースは拳を構えた。
 凄まじい破壊音がその空間に響き続けた――




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