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壊れゆく花嫁
悲しい、辛い、苦しい、全部捨てちゃおう、忘れちゃおう
しおりを挟むヴァイスはルリの血を吸う。
ルリは抵抗もなにもしない、されるがままだ。
血をすっている彼にはルリが諦めたような、絶望したような表情をしているのが見えなかった。
吸血が終わると、ヴァイスは少々血を吸いすぎたかと思った。
ルリの肌が血色が悪くなっているのだ。
ただ、これも少し経てばよくなるのは分かっていた、ヴァイスはルリの血色がよくなるのを少し待った。
ベッドの上で顔を背け、ぐったりとしているルリの頬を見て、血色が元の良い色に戻るの確認したヴァイスはルリに手を伸ばす。
顔をこちらに向かせ、薄紅に戻った唇に口づけをする。
相変わらず反応が悪い、舌を絡ませてもされるがままだ。
自分がどれだけ教え込もうとそれを拒もうとする。
アルジェントはルリに厳しい態度を取るがそうすると、ルリは反応するという。
自分も少し厳しくするべきか、という考えが浮かんだが、それをすぐさま否定した。
抱くとき悦ばせようと必死になるだろう、だがそれは恐怖心からであって愛情からではない。
ヴァイスが欲しいのはこの愛しい妻の愛だ。
自分を愛してほしくてたまらないのだ。
けれども――
ルリはいまだ誰も愛してはいない
外に出してかつての悲劇が起きるのも恐ろしければ、他の誰かを愛してしまうのも恐ろしい。
神に呪われたこの身でも神に祈りたくなる、どうか彼女が愛してくれるのが自分だけであるようにと。
ルリは口を開放され、口の中に広がる自分の血の味を感じたままぼんやりと考えている。
何故私を抱こうとする者達は自分をそんなに欲しがるんだろう。
自分の価値は「不死人の女」ということだけ。
政府の役人とかの説明で、性別が分からない不死人――グリースの事だろう、それが一人、それ以外で見つかった不死人は皆男だったそうだ。
不死人の男達は皆政府の監視下にある、不死人の男と人間の女が交わってできた子どもは皆普通の人間だったそうだ。
政府の役人が何か言っていたのを思い出す「不死人の男と女の子どもはどうなる」という内容だ。
今思えば、人間政府からすると盟約を破ってその実験をしたい気持ちがあったんだろうと思った。
早く他に不死人の女性が出てこないかなぁと思った、そうしたら多分真祖の気持ちもそっちにいってくれるんじゃないかなと淡い期待を持つ。
でも、そうしたら解放された自分は人間政府の監視下に置かれて、実験体になるのかなぁと思った。
どっちにしろ悲惨だが、今みたいな心が過酷な責めとかはないだろうから今よりはマシかなぁと思う。
「……早く不死人の女の人で美人の人出てこないかなぁ……そうすれば私用無しなのに」
思ったことがぽろりと口から零れた。
失言だとも思っていない、ルリは心の底からそう思い、信じているのだ。
ルリの口から発せられた言葉にヴァイスは耳を疑った。
ルリの発言はヴァイスにとって爆弾発言だった。
――次の不死人の女が出てきたら用無し?――
――ふざけるな!!――
――次の不死人の女などいらぬ、人間側の研究材料にでもなってればよい、私が欲しいのはお前だけ、お前だけだというのに!!――
ヴァイスはルリの体を覆っている薄い布を力任せに破いた。
「?!」
今までと違うヴァイスの行動に先ほどまでロクに反応しなかったルリが漸く反応した。
困惑と恐怖の反応だったが、怒りで頭が煮えたぎったヴァイスはそれを配慮することはなかった。
下着も裂き、ルリの受け入れる準備も何もできていない、そこに雄を無理やり挿入した。
「あぐぅううう!!」
ルリの口から苦鳴が上がる。
異物を拒否する締め付けをする膣内に無理やり押し込んでいく、下りてきていない子宮口に接触するが、ルリの口からは苦鳴しかあがらない。
柔肌に噛みつき、あちこちき噛んだ痕跡をつける。
「っ……!!」
痛みにルリは顔をゆがめている。
死ぬほどの衝撃などでは痛みはないらしいが、死なない程度の傷では痛みを感じるのが不死人の特性だ、噛まれる度に痛みが走っているのか声を上げる。
「や゛だ、ぬ、い、て、い、た、い!!」
異物が膣内を犯す感覚に耐えられないのかルリは拒絶の声を上げる。
ヴァイスは答えず、再びルリの喉に牙を立てた。
「い゛……!!」
快楽を与える吸血ではない、苦痛を与える吸血だ。
捕食する吸血だ。
吸血を終える、腹立たしいことに、不死人ではどれだけ痕をつけようと消えてしまう。
この吸血痕も、じき消えるだろう。
痛みを与え続けた結果か、ルリの目には生気がなくなっていた。
涙をこぼして、呆然としていた。
最奥で精液を放つ、アルジェントが事前に薬を飲ませている為、どれだけ精を吐き出そうがこの腹は精液で膨らむだけだ。
「……子を成せば、お前の考えも変わるか?」
腹を撫でながら呟く。
ルリには聞こえていないのか反応がない。
ずるりと雄を抜く。
精液がどろりとこぼれてシーツを汚す。
わずかに赤い液体も交じっていた。
無理やりの挿入で膣内を傷つけたのだろう、でもそれも明日には無くなっているだろう。
ルリの涙を舐める。
先ほどまで飲んでいた血の味の所為で味は分からなかった。
抱く気が完全に失せたヴァイスは、意識を完全に凍り付かせているルリを抱きかかえる闇に包まれ、闇が消えるとルリの部屋に移動していた。
アルジェントが立っている。
「後始末は任せた」
ルリをアルジェントに渡す、アルジェントはルリを抱きかかえた。
「畏まりました」
アルジェントはルリを抱いたまま頭を下げた。
ヴァイスはルリの部屋から姿を消した。
全身噛まれた痕だらけで、血を流しているルリをアルジェントは一度ベッドに寝かせた。
噛まれて血が出ている場所に舌を這わせる。
吸血鬼なら甘美な味がするのだろうが、人間のアルジェントにはただの血の味しかしなかった。
意識を閉ざしているのか、ルリは反応しない。
僅かに開いている薄紅の唇を見て生唾を飲み込む。
禁じられている行為だ、だめだと分かっていても我慢が効かなかった。
アルジェントはルリの唇に自分の唇を重ねた。
柔らかく、温かな感触がした。
――嗚呼、愛おしい――
アルジェントは多幸感を感じた。
貪りたい気持ちをぐっとこらえて、口づけを止め、ルリを抱き上げ、汚れたシーツを使い魔に交換するように指示を出し、浴室に向かう。
傷がついてるから今回は香りと洗浄効果のあるお湯だけで洗う。
主の吐き出した精液が残っている膣内も丁寧に洗う。
ルリは生気のない目をしたまま反応しない。
いつもと全く違うルリが非常に痛々しく見えた。
――お二人の間に何があった?――
アルジェントはそう思いながらも、いつも通りの対応しかとらなかった。
洗浄を終えると、傷を隠すため、下着をつけてから肌をいつもより隠すネグリジェを着せる。
そして部屋に戻り、真っ白なシーツのベッドの上に寝かせ毛布を掛ける。
生気のない目をしている、ルリの目を閉じさせる。
「お休みなさいませ、ルリ様。よい夢を」
アルジェントはそう囁くと部屋を後にした。
アルジェントが居なくなると部屋が真っ暗になった。
朝、ルリは起き上がる。
周囲を見て戸惑っているようだった、裸足のまま部屋から出ていく。
目の前に広がる城の作りに、まるで初めて見たものを見るかのような目で眺めてからペタペタと足音を立てながら城をさまよい始めた。
途中通路を塞ぐような壁に遭遇すると、とりあえず叩いた。
叩くと壁は無くなり、ルリは城の通路を歩く。
大きな扉が目の前に現れた。
ルリは力いっぱい押した。
扉はゆっくりと動き、光が差し込んでくる。
ルリは嬉しそうに笑う。
しかし、外の光景を見て呆然とする。
不安そうにきょろきょろと見渡す。
「おうち、どこ?」
幼子のような口調で言うと、ルリは城の外へと出ようとした。
「ルリ様、城の外に出て行ってはいけないとあれほど申したでしょう」
「?!」
知らない男の怒っているような声にルリは怯えて振り返る。
アルジェントは城の外に出たルリを見て近づき、彼女をとがめた。
ルリは怯えたような顔をして後ずさる、きっと昨日の行為が原因かと思った、だが――
「おにいちゃん、だれ?」
「?!」
ルリの言葉にアルジェントは耳を疑った。
「――ルリ様、悪ふざけは止めてください」
「やだ、こないで、おにいちゃんこわいやだ」
ルリは幼子のような口調で後ずさりをし、誰もいない町へと逃げようとした。
「ルリ様!!」
アルジェントは慌ててルリの腕をつかむ。
「やだ! はなして! おかあさんたすけて!! おかあさん!!」
アルジェントはルリを抱き寄せ、城の中へと引きずっていく。
術で強化してなければ逃してしまいかねない程の力でルリはアルジェントの腕の中でもがいている。
「ルリ様、どうなされたのです?!」
アルジェントは困惑を隠せないまま、ルリに問いかけるが、ルリは母親に助けを求める声を上げてなきじゃくるだけだった。
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