不死人になった私~壊れゆく不老不死の花嫁~

琴葉悠

文字の大きさ
30 / 96
こわれたはなよめ

おそとにでたらそこであったのは「こわいこと」

しおりを挟む



 アルジェントはようやく立ち上がった。
 殴られた箇所と蹴られた箇所が酷く痛む。
 術で痛みを緩和させているが、それでも痛みは酷い。
 ルリの方へと視線を向けると、ルリは怯えた表情を自分に向けたままぬいぐるみを抱いている。
「ルリ、様」
「いや……こないで……!!」
 ルリは怯えた表情を浮かべてアルジェントを拒絶していた。
「ルリ様……!!」
「ぐりーすおにいちゃんしななかったけど、ふつうのひとならしんでたもんさっきの……いや、こわい……そうやってへいきでひとをころせるこわい!!」
 先ほどの行いが、別の恐怖心をルリに植え付けてしまったようだ。
 だが、アルジェントは感情がコントロールができなかった。

 彼は気づいてなかった、自分の主を愛してくれといっているのに、本当の自分の願望は己を愛してほしい、己だけ見てほしいというものだと。

 どうしてコントロールが効かなくなりつつあるのかアルジェントは全く分からなかった、ただ頭がルリを求めて仕方がなかった。
「ルリ様、ルリ様……!!」
 腹を抑えながら近寄っていく、手を伸ばす。
 ルリは怯えながらぬいぐるみを抱きしめて後ずさりをしている。

 しかし逃げ場がなくなり、怯えてしゃがみこんだ。

 アルジェントは虚ろな笑みを浮かべて、ルリの肩を掴んだ。
 にたりと口元に笑みが浮かぶ。
「や……いや……」

――その華奢な体を抱きたい、薄紅色の唇に口づけをしたい――

 欲望のまま体が動いていた、だがルリの怯えたに染まった瑠璃色の目を見た瞬間アルジェントは目を見開き、そして自分で自分の顔を殴った。
「?!」
 突然の行動に、ルリは困惑の目でアルジェントを見ている。
 アルジェントは歯を食いしばり、いつもの表情に戻った。
 ルリはそれを見て怯えた表情に戻る。
 アルジェントは膝をつき、頭を垂れた。
「……ルリ様、申し訳ございません。貴方様の目の前であのようなことをしてしまい……」
 雰囲気の変貌っぷりにルリはまた困惑した表情でアルジェントを見る。
「……ルリ様からお許しが出るまで、私は触れません、そしてお願いです、部屋からは決して出ないでください」
「……うん」
「ありがとうございます」
 アルジェントはそう言うと部屋から姿を消した。

 部屋に取り残されたルリは、部屋を掃除しにきた不思議な生き物を見ながら、先ほどまでのアルジェントの行動の変わりようにただ困惑していた。
 まるで、別人のようで――


 アルジェントは自室で自分の体中に傷をつけた。
 少し日に焼けた色をしている体に無数の切り傷がつき、血がだらだらと流れ、鈍痛が体のあちこちに生まれる。
 ガンと、額を壁に打ち付けた。
 徹底的に自分の体を痛めつけた。
 痛めつけ終わると荒い呼吸をして、ルリの写真が入った写真立てを持つ。
 そっと触れ、写真立てを置いて、額を抑える。

――何故、何故あんな行動をした!!――
――主の立場が危うくなる、その上ルリ様の心に更に傷をつける行為を!!――
――そして怯えるルリ様にあんなことをしようとして――

 頭を押さえ呻く。

――あの華奢な体を抱いて、唇を奪って、自分だけを見てほしい――

「黙れ黙れ!!」
 耳を塞いで叫ぶ。
「ルリ様は、真祖様の奥方様だ!! ルリ様の愛は真祖様にだけ向けられなければならない!!」

――嘘をつけ、愛されたいのはお前だ――

 アルジェントが耳を引きちぎりたくなった。
 だが分かってる、引きちぎったところでこの声は消えないと。
 うずくまり、酷い自己嫌悪に陥る。
 自分の中に産まれた酷い欲を消す自信が、アルジェントには無かった。
 消さなければという考え以上に、消したくないとういう感情が強く、自分を支配していたからだった。


「……」
 ルリはぬいぐるみを抱きしめたまま部屋を出ようとした、鍵がかかっている。
 だが、聞こえる声に従って鍵を動かすと扉を開いた。
 ルリは裸足のまま、城の中を歩いていく。
 時折出現する道を塞いでいる壁は叩けば消えた、ルリは城の外へ出た。
 人影はない。
 ルリはそのまま城下をさまよい始めた。


 アルジェントは自室を出てルリの部屋へと転移した。
 部屋にルリはいなかった。
「ルリ様……!!」
 アルジェントはぎりっと歯を食いしばり、急いで城の扉の前に転移する。
 扉に触れて読み取ると、ルリが外に出たのが見えた。
 術を発動させ、ルリの足取りを追う。
 しばらく見えた足取りが急に薄くなる、何か乗り物に乗ったのが分かる。
 その時の状況を念のため読み取る。

 男達がルリを囲んでいる。
 嫌がるルリを無理やり車に引きずりこんで、車は走り出した。

 アルジェントは舌打ちして身体強化を使い追跡を開始した。


 見知らぬ場所の、見知らぬ部屋に連れてこられて、ルリはぬいぐるみをもって震えていた。
「俺たちみんな喉が渇いてるんだよ」
 男達はにやにやと笑っている。
 一人がルリを押し倒して、首に牙を立てた。
「いたい!! やめて!! やだぁ!!」
 ルリはじたばたと動くが男達が体を押さえ付けて抵抗できなくする。
「おい、お前飲みすぎだぜ俺たちの分が無くなるだろう?」
「っぷは! すげぇこんな美味い血飲んだことねぇ!!」
「もしかしてどこかの貴族の秘蔵っこか? だったら運がよかったなあ俺たち!!」
「俺にも飲ませろ!!」
「俺にもだ!!」
「やめて……やめて……」
 弱弱しい声を上げるが男達は体のいたるところに牙を立てていく。
 痛みで頭が恐怖に汚染される。

 血を満足するまで飲んだ男達はほとんど体を痙攣させるだけになったルリを見てげひびた笑いを浮かべた。
「お嬢ちゃん、俺たちを満足させたお礼に天国を見せてやるよ」
 ルリのショーツに手をかけ脱がした。
「こわい、こわいよぉ……やめて、やめてぇ……」
 ルリはこの男達は「こわいこと」をすると理解した。
 拒否の声を上げた。
 しかし、それは無視された。
 男の雄が、ねじ込まれる。
「やぁああああ!!」
 ルリは悲鳴を上げた。

――たすけて、こわいよぉ、だれか、だれか、たすけて、たす、けて――


 倉庫の前に車が止まっていた。
 アルジェントは状況再現の術を再度使用する。
 車からルリが引きずり出され、連れていかれる、アルジェントはその後を追って、一つの倉庫の前にたどり着く。
 鍵がかかっている、術では解呪できない鍵だ、氷の塊をぶつけるがそれにも耐性があるのか破壊できない。
「お前、本当役にたたねぇな」
 馬鹿にするような腹立たしい存在の声がアルジェントの耳に届く。
 振り向けば酷く不機嫌そうな顔をしたグリースが立っていた。
「貴様に構ってる……」
「ルリちゃんが誘拐されたんだろ!! 俺お前から喰らった術の所為でしばらく呻いてて気づくの遅れたけど気づいたからきたの!!」
「だが扉が……」
「そんなもんこうだ!!」
 グリースが指を鳴らすと扉は蒸発した。
「ルリ様!!」
「あ、おい待て!!」
 出来た入り口にアルジェントが入っていった、グリースも慌てて中に入る。

 生臭い匂いが鼻についた、アルジェントは嫌な予感に内心怯えながら奥の部屋を開ける、そこには――
 複数の吸血鬼の男達に輪姦されているルリの姿があった。
 体のあちこちに噛んだ傷や切りつけた傷が見えた。
 怒りが噴き出る。
「貴様らぁあああああ!!」
「な、なんだテメェ!!」
「おい、鍵したんじゃなかったのかよ!!」
「アレは人間だ、殺しちまえばバレねぇよ!!」
「そうだやっちまおう!!」
 術を発動させようとするアルジェントの肩をグリースがたたいた。
「お前はルリちゃん連れて今すぐここから出ろ、城に戻れ」
 アルジェントの耳元で囁く。
「ルリちゃんの目の前で流血沙汰はもうやめとけ」
 グリースに言われ、アルジェントはぎりっと歯を食いしばり口を開いた。
「……分かった」
 アルジェントは部屋に飛び込みルリを抱きかかえ、ぬいぐるみを持つとその場から転移して姿を消した。
「魔術師か今の!!」
「畜生やられた!!」
「もう一人のをやれ……ぎゃああああ!!!」
 吸血鬼が燃え上がり、悶え苦しんだ末、灰になった。
「散々楽しんだようだな、その分の代金」

「今から全部その命で支払ってもらう」

 グリースが指を鳴らすを残りの吸血鬼の男達も燃え上がり、悶え苦しみ、最後には灰になった。
「……くそ、もっと早くなんで動けなかったんだよ俺は!!」
 グリースは忌々しそうに己の指を噛んだ。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...