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こわれたはなよめ
まっくら
しおりを挟むアルジェントは城の浴室へと転移した。
目が虚ろで、薄汚い液体と、痛々しい吸血痕と刃物か何かでつけられた傷後だらけで、服が破かれた状態のルリの服を脱がせる。
ショーツは履いてなかった、脱がされたのだろう、秘孔からは汚らわしい液体が零れている。
アルジェントはギリギリと歯を食いしばり、穢された膣内を洗浄する、薄汚い者達の精液を全て膣内から洗浄する。
綺麗になった膣内に、緊急用の避妊薬を入れ、潰し膣内を液体で清める。
孕む危険性はこれで回避した。
次はと体を見れば、傷は塞がっていた。
治癒術で傷跡を消そうと思っていたが、それをする前にルリの治癒能力が働いたようだった。
以前、主の噛んだ痕跡を消す時はそこまで働いていなかったが、今回は不死人特有の高い治癒能力が働いたようだった。
念のため体の隅々を見る。
傷跡一つ残っていない、一見すると綺麗な体だ。
だが、薄汚れた液体が付着している。
口の中にも、髪にも付着していた。
足は裸足だった為か、土で汚れていた。
アルジェントは何時もより念入りにルリの体の洗浄を行った。
ぬいぐるみは使い魔が持っていった。
いつもより念入りの洗浄が終わると、アルジェントはお湯で洗い流す。
そしていつもより強い香りのするお湯をはり、ルリの体をお湯に浸からせる。
しばらく浸からせてから、抱きかかえて上がらせ、タオルで体を優しく拭き、ルリをタオルで包んで部屋へと転移した。
キレイなショーツを履かせ、露出の少ないネグリジェを着せ、黒い綺麗な髪を乾かし、櫛で整える。
鏡を出現させ、身なりが整っているかを確認する。
整っているのを確認するとアルジェントは鏡を消して、ルリをベッドに寝かせた。
ルリの目に生気はない、虚ろだ、何も映っていないかのように。
「ルリ様……」
どうしてもいつもの表情を保てない、悲しい、辛い、悔しい、そんな色んな感情でぐちゃぐちゃになった顔でルリに声をかける。
反応はない。
自分がもっとしっかりしていたらルリ様はこんな目に合わなかったはずだとアルジェントは己を責めた。
城から出れないよう術をかけて置けばよかった、そんな後悔もする。
「ルリ様……」
頬を撫でる、反応はない。
目から涙を流し続けたまま、光のない目には何も映ってないように思えた。
泣いてはいけないのに、涙が目から留まらない。
ルリの顔に涙が落ち、流れる。
「申し訳ございません……申し訳ございません……」
ルリの手を両手で握り、謝罪を繰り返す。
『……逃げ場なんてなかったね』
泣き続けるルリに、大人の女性が悲しそうにつぶやいた。
「こわいよぉ、いたいよぉ、おうちかえりたいよぉ」
ルリは泣き続けた、大人の女性はルリを抱きしめて呟く。
『……そうだね痛かったよね、こわいこともされたもんね、ごめんね、ごめんね……』
アルジェントは、主の部屋の前で頭を垂れ、膝をついている。
『――わかった、だがお前を咎めるつもりはない』
「ですが……!!」
『……ルリが城から出れぬようにしておかなかった私にも責任がある』
「そんなことはありません……!! 私が、私が全て悪いのです……!!」
「真面目な話してるところお邪魔するぜー」
アルジェントは顔を少し上げ後ろを向くと、グリースが立っていた。
「グリース貴様!!」
「ルリちゃんの血吸って、レイプした連中のことだけどさー」
『どうした』
「全員炎に焼かれながら灰になったぜ、一瞬で蒸発なんて優しいことをやる程俺は慈悲深くないんでね」
グリースは肩をすくめながら話している。
『……そうか、礼を言う』
「いや、俺も気づくの遅くて悪かった。もう少し早ければルリちゃんは怖い目に合わずにすんだのに」
グリースはバツの悪そうな顔をしていた。
「……」
『ルリの精神状態はどうだ?』
「さっき覗いてきたけど、『大人』の方も今のルリちゃんも相当ダメージくらってるな、下手すりゃ崩壊するかもしれない」
「そんな……!?」
アルジェントは思わず立ち上がりグリースを見る。
戸惑いと後悔、そんな感情が混じった表情で見ている。
「……家に帰すという選択肢は無理だな。人間政府の役人が家を監視してやがる、戻したら連行されて、実験道具扱い確定だ今の状態だと」
「なんだと……!!」
「だからお手上げだ今の俺だと、精神を修復する術もあるけど、副作用が酷いから使えねぇ!! 二千年経ってんのにこの術だけは全く進歩がねぇのに嘆きたいわ!!」
グリースは深いため息をついた。
『……お前がそう言うなら手の施しようがないのだろうな……』
悲嘆の声が聞こえる。
「……ルリちゃん、どうするの?」
『ルリは私の妻だ、心が壊れても……私の愛しい妻なのだ……』
「……医者に見せるってのは?」
『……お前が診てだめなら医者も無理だろう』
「……そういうところ分かって現実直視して絶望するのやめてくんない? 俺にも良心があるんだよ」
グリースは罪悪感に染まった顔をしている。
「……まぁ、今日は俺帰るわ。多分次は城から出ないだろうけど、出ない対策はとっとけよ」
『分かっている』
「んじゃな」
グリースはそう言って姿を消した。
『アルジェント、お前も下がれ』
「……畏まりました」
アルジェントはその場から姿を消した。
自室に戻り、椅子に座り机の上で祈る。
「……ルリ様……」
――神よ、私の事は見捨ててくださって結構です。ですからどうか、どうかルリ様をお救いください、お願いいたします――
「……」
グリースは隠れ家のベッドに寝っ転がっていた。
「くそ、不死人になって分かってるから祈る気にもならねぇ」
グリースは忌々し気に呟く。
「神様ってやつは吸血鬼も、人間も、俺たちも救う気なんてこれっぽっちもねぇってな!! 祈るに祈れねぇよ!! ああ畜生、俺は誰にルリちゃんの心が救われる事を祈ればいい!!」
起き上がって地団駄を踏んだ。
「畜生、神様ってのはろくでもない運命ばっか俺らに与えやがる!!」
グリースは頭を抱えた。
「何か方法……ちょっとまて精神に干渉する術で一個なんかあったはずだ――」
グリースは何かを思い出したのか考え込み始めた。
日が暮れたルリの部屋に巨躯の影が現れる。
ヴァイスだ。
ヴァイスはベッドの上に横たわり、生気のない、光のない目をしたまま動かないルリの頬を撫でる。
「ルリ」
名前を呼ぶが反応はない。
顔が悲痛の色に染まる。
ヴァイスは薄紅の唇に、そっと口づけをする。
触れるだけの口づけを。
「……ア」
わずかにルリが声発した。
「ルリ?」
「……」
ヴァイスが呼びかけるが反応は無かった。
ヴァイスはルリの目を閉じさせて、部屋を暗くし、その場から立ち去った。
翌日、アルジェントはかなり早い時間に目を覚ました。
ルリの事が心配で仕方がないのだ。
身なりを整え、急いでルリの部屋へと向かう。
部屋に向かうと、ルリはベッドの上に横たわっていた。
ルリは不死人だが、不安になって毛布をめくる。
胸がわずかに上下し、口から吐息の感触が伝わる。
生きてはいる、アルジェントは呼ぶ資格などないと思いながらも名を呼ぶ。
「ルリ様」
返事はない、反応もない。
目を閉じたまま、横たわっている。
「ルリ様朝ですよ」
反応はない。
試しに揺さぶってみる。
やはり反応はない。
アルジェントはルリの手を掴み再び祈る。
――誰でもいいから、ルリ様を助けてくれ――
「邪魔するぜ」
来訪者だ、こんな時でも来てほしくない。
「……なんの用だグリース」
アルジェントは来訪者――グリースを睨みつける。
「……ちょっと試したいことがあってな……」
「何をだ」
「一個だけ、修復できるかはちっと不明だが副作用が少ない方法があったのを思い出した」
「本当か!?」
アルジェントはグリースの胸倉を掴んだ。
「まぁ、ただ方法がなぁ……」
「方法?」
アルジェントの問いかけにグリースは少し言いづらそうな顔をする、雰囲気的に言ったら怒るだろうなぁといいたげな顔をしている。
「いいから聞かせろ」
「……キスしつづけてなきゃいけないんだよ」
アルジェントがしびれを切らして問いかけると、グリースはかなり悩んだうえで方法を喋った。
「……は?」
グリースは耳を疑った。
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