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はなよめの傷
みずあそびとおはなし ~愚者たちへの対応~
しおりを挟む水遊びを堪能して満足したのかルリは水場から上がった。
アルジェントはタオルをだし、ルリの体を包んでやる。
「ぐしょぐしょするー」
ルリはそう言ってショーツを放りなげた。
グリースが拾おうとしたのを見て、アルジェントは噛みつくように叫んだ。
「私が拾うから貴様は触るな!!」
「ええームッツリ君よりオープンな俺の方が安全だと思うんだけどなぁ」
「貴様本気で口縫い合わせるぞ!!」
アルジェントは怒りと恥ずかしさで顔を赤くしながら、放り投げたショーツとネグリジェを回収する。
「ルリさま、タオルでお体を隠したままでいてくださ……」
「きゃー」
ルリはタオルをマントのようにして走り回っていた。
「ルリさまぁあああああああ!?」
「おーいい眺め」
アルジェントはついに手がでた、グリースに目つぶしをしたのだ。
「ぐおおおお!?」
グリースは目を覆って倒れた。
アルジェントはネグリジェとショーツをもったまま、ルリを確保しタオル包んで、抱きかかえた。
「……ルリ様、お願いですから今のような行為は今後おやめください……!!」
顔を真っ赤にして必死の形相になったアルジェントを見て、なにかしちゃったのかなと言いたげにルリは首を傾げつつ答えた。
「うん」
「くれぐれもグリースの前では絶対、絶対に!! なさらないように!!」
「お前、俺が不死人じゃなかったら失明してんぞ……!!」
起き上がって文句を言ってきたグリースを見て、アルジェントはルリの耳に音楽しか聞こえなくなるイヤホンを装着させてから、ルリを抱きかかえたままグリースを怒鳴りつけた。
「失明してしまえ、このろくでなしスケベが!!」
「ムッツリスケベに言われたくありませーん!!」
「黙れこの覗き魔が!!」
しばらくの間、グリースとアルジェントの悪口の言い合いが続いた。
音楽しか聞こえてないルリは、アルジェントの腕の中できょとんとしていた。
悪口の言い合いで、アルジェントはグリースに敗北した。
ルリを抱きかかえながらがっくりとうなだれる。
相手が悪すぎたのだ、自分のルリに対するあれこれとした誰にも知られたくなかった性癖を暴露されまくって撃沈したのだ。
グリースけらけら笑ってアルジェントを指さしている。
ルリは状況が把握できていないため、相変わらずきょとんとしている。
ルリはくいくいとアルジェントの服を引っ張った。
「あ、はい、今イヤホンを外しますね」
アルジェントはなんとか笑顔になってルリのイヤホンを外す。
ルリはアルジェントをじーっとみてから、手を伸ばし頭をなでてきた。
「よくわからないけどあるじぇんとおにいちゃんげんきだして」
「……ありがとうございます、ルリ様」
アルジェントはは嬉しくて笑った。
「ルリちゃんいいんだよーさっきそいつが凹んだのは自業自得だからー」
「だから貴様は黙れ本当!!」
グリースの発言に、アルジェントは噛みつくように言った。
「ルリちゃん楽しめた?」
グリースはアルジェントの発言を無視してルリに話しかけた。
「うん!」
嬉しそうに笑うルリを見て、グリースは再び転移魔法陣を展開した。
そして全員を城のルリの部屋に転移させる。
「場所を覚えたか?」
「覚えられるか!」
「じゃあ、俺連れっててやるからまたプール所望なら」
「……真祖様にルリ様がプールを所望と進言しておく」
「そこまでするんかお前!?」
相変わらず自分に噛みついてくるアルジェントを見ながらグリースは呆れのため息をついた。
「じゃ、俺帰るわ、ルリちゃんまた明日なー」
「またねー」
ルリが手を振ったのをみて、グリースは手を振り返してから姿を消した。
グリースが居なくなるとアルジェントは安堵の息をついてまだ濡れているルリの髪をそっと撫でる。
「ではルリ様、お風呂に入りましょうね」
「うん」
浴室にルリを抱えて転移し、ネグリジェとショーツは洗濯場に転移させる。
いつものようにルリを洗うが、今回はグリースに自分の秘密を暴露されたのもあり、彼女の体を洗うのを手伝うのが非常に気まずかった。
なるべく見ない様にしてもどうしても見てしまうのだ。
小さいが膨らんだ胸、ほっそりとした手、緩やかにくびれた腰、柔らかそうでハリのある尻、手同様ほっそりとした足。
手を冷却して自分の股間の部分に当てた。
興奮して勃起しそうになったのだ。
風呂場でルリの裸をみてそんな事案になったと知られたら不味いどころではないので何とか抑えた。
「……? あるじぇんとおにいちゃんどうしたの」
「なんでも、なんでもありません」
なんとか笑みをはりつけ、勃起も抑え、ルリの体をタオルで拭き、包んだ。
包んで抱き上げ、ルリの部屋に転移する。
興奮しない様に平常心を保ちながらショーツとネグリジェを選び、ルリに着せる。
「では、真祖様が来るまでお待ちください……」
「うん」
ルリは再びぬいぐるみを抱きしめて、ベッドに腰をかけていた。
アルジェントは一礼し、ルリの部屋から出て大急ぎで自分の部屋に戻る。
何重にも除き防止の術で部屋を覆う。
そして荒い呼吸をして、勃起した自分の雄を扱く。
あれほど、最も愛する女性の裸のオンパレードを間近で見たのだ、少し危なかったが今まで我慢できていたのがアルジェントとしては自分を褒めたかった。
射精し、手が汚れた。
アルジェントはタオルで汚れを拭った。
男子の自慰にオナホールという道具があるらしいが、アルジェントは使う気にはなれなかった。
自分は性欲が薄い方だと思ったが、ルリという存在を知ってから性欲が人並みによりはあるのが分かった。
ただ、オナホールはルリのナカを模したものではない、ただ雄を刺激するだけのものだった、自分にとっては、あまり気持ちよくなかった。
なので、興奮を吐き出すには手で扱くしかなかったのだ、ルリの裸をいわゆる「オカズ」にして。
アルジェントは、欲を吐き出した後、今後自分の欲望が暴発しないように自分を戒めた。
ルリはぬいぐるみを抱きかかえながら、ベッドに座って外を見た。
日は暮れていた。
だいぶこわくなった「しんそ」が来る。
でもまだ不安だった。
今日は怖くないかな、と思いながらぬいぐるみを抱きしめる。
自分の周囲が少しだけ暗くなる、顔を上げると「しんそ」が立っていた。
ヴァイスは部屋にかすかに残る、特殊な「液体」の匂い。
「ルリ、どこへ行ってきた?」
ヴァイスは自分を見上げているルリに尋ねる。
「ぷーるいきたいっていったらぐりーすおにいちゃんが、きれいなみずばにつれていってくれたの、そういえばにんぎょのぞうがあったよ」
「あ奴め……」
二千年前、戦争が起こる前に前の妻と吸血鬼である己の血を引く息子のために作った水場だ、今は結界で覆われており、入れない様になってるはずだが、グリースは結界を無視して入ったのだろう。
「どうしたの?」
「いや、お前が気にすることではない」
ヴァイスはそう言い、ルリの頭を撫でる。
目を閉じ、何処か幸せそうな顔をしながら頭を撫でられているルリを見ると、もう朧気にしか思い出せない幼かった息子の事がわずかに頭に浮かぶ。
だが、顔も、声も、もうほとんど思い出せない。
名前はなんだったか、自分をどう呼んでいたか。
二千年という歳月は覚えているだけで悲しみをもたらす記憶を忘却させるには十分だった。
だが――
二千年経っても、消えぬ物がある、愚者たちへの憎悪、いまだ吸血鬼を滅ぼそうと考えている人間共への憎悪は消えなかった。
密偵から、吸血鬼に対抗する手段を作りだせるものを人間政府が見つけ、聖なる物を作らせているとの情報が届いた。
近いうち実力行使にでてくるかもしれない、その時はその「聖なる物」も効かぬこの身を持って、自分たちがどのような存在に歯向かったか教えるつもりだ。
「しんそおじちゃんどうしたの? おかお、すこしこわい」
ルリがぬいぐるみを抱いたまま不安そうな声をかけてきたことに我に返る。
「すまぬ、少し考え事をな」
「どうして?」
「私はこの国の王、色々とやらねばならぬことが多いのだよ」
「……おしごとのあいまにあそんでくれてるの?」
「……そう、なるな」
「……わたしめいわくしてる?」
「いや、お前がいないと息が詰まりそうだ」
不安そうなルリを抱きしめる。
相変わらず華奢な体だ。
グリースのような強大な力を持たぬ不死人。
それ故、多くに狙われている哀れな娘。
今のルリはわからないだろう、だが本来のルリは知っているらしいのが酷なことに思えた。
グリースが態々報告に来たのだ。
普段何をしているか知らないが、全ての情報はグリースには筒抜けだ。
密偵の情報もついでに聞かされた、近いうち、特殊部隊をこの城に送り込もうとしていると。
こちらから、行って先に潰すべきか、それとも待って潰して責任をどうとらせるかと脅すべきかどちらが良いのかとヴァイスは悩んだ。
「しんそおじちゃん、きょうもきのうとおなじくおはなしきかせて」
「ああ、良いとも」
昨日と同じく話をせがむ、ルリにヴァイスは話を聞かせた。
ルリがうとうとと眠りにおちかけるまで、優しく、時に彼女の質問に答えながら、話つづけた。
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