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傷深き花嫁
憂鬱、そしてこんな時に…… ~厄介な「発情」~
しおりを挟むルリが目を覚ますと、もう見慣れた黒い天井だった。
おぼつかない動きで薬を取り出し、冷蔵庫のボトルの水で流し込む。
――効いているのかよくわからない、でも飲まないと――
飲み終えると、起きているのが辛くてベッドに戻り、横になる。
――外には怖いものが一杯いる――
外に出る気にはならなかった。
家族や友人の事が気になったが、連絡を取る気にもならない。
自分が居なくなってどうなってるか知るのが怖いからだ。
だから連絡ができない。
窓の外は明るく、日の光が差し込んでいる。
それを遮るような何かが来た。
「ルリちゃん、おはよう」
「……おはよう」
グリースだった。
グリースはベッドでぐったりしているルリの所に近づき、ルリの上半身を抱き起す。
「昨日は大丈夫だったかい?」
「……うん」
「そうか、なら良かった」
「……不死人ってなんなんだろう……私も同じ不死人なのに、グリースやアルジェントみたいな力とか何もない……」
「――悪い、それには俺も分からない。同じ不死人なのになんだろうな……この差は」
グリースはそう言いながらルリの髪をすき、頬を撫でる。
「……無価値の私を守る意味ってどこにあるんだろう?」
「ルリちゃん、君は無価値じゃないよ、それだけは言っちゃだめだ」
「……」
生気があまりない目でルリはグリースを見ている。
「……俺はルリちゃんが大事だよ、本当はずっと傍にいてあげたい、外に出してあげたい、でも俺がそれをやるとルリちゃんの立場が余計危うくなる、それと俺がいっている自由にするという選択肢もあるけどルリちゃんはそれだけは絶対選んでくれないだろう?」
「……うん」
「……本当ごめんよ」
「……いいよ、べつに……」
ルリは諦めたように笑った。
「……ルリちゃんの好きなタイプとか分かればいいんだけどなぁ……」
「……考えたことないからわからない……」
グリースがルリの髪をすくように撫でながら尋ねると、ルリは少し無言になった後そう答えた。
その答えに、グリースは困るしかなかった。
誰かを「好き」になったこともなく、恋愛もしたことがなく、そして今も「愛する」ことが分からずにいるのだ。
せめて好みの相手がいればその相手を探し出すという手もあったが無理というのを突き付けられたのだ。
「……友達とそういう話したなぁ……」
ルリが懐かしそうな表情をして話し出した。
「恋愛話?」
「うん……私は全く分からないから、いつも分からないって答えたらみんな揃って『ルリにはいつか白馬の王子様が来るよ!』っていってた……ふふ」
「……」
「……実際は王は王でも吸血鬼の王の所に連れてこられるってオチになっちゃったけどね……」
遠い目をして言うルリに、グリースはかける言葉がなかった。
「……何で私はあの『好き』だけが分からないんだろう……」
「……どうしてだろうね」
「……グリースも、アルジェントも、真祖も好きになれない……」
「いいんだよ……ルリちゃん……ルリちゃん?」
グリースはルリの頬を触った、平常時より熱い、目も虚ろというよりも熱に浮かされている風に見える。
手は腹を抑えて、口からは熱っぽい息を吐き出してる。
――ま、さ、か――
「ルリちゃん、体おかしいんじゃない?」
「……なんか急に熱っぽくなって……頭がぼんやりして……お腹がおかしい……」
グリースは顔をこわばらせた。
――発情、こんな時に!!――
ルリの事を考えて性行為をしないようにしていたのがここで悪く出てきたのだ。
「ルリちゃん、多分それ風邪――」
「――発情……でしょ……聞こえてたから覚えてる……治す方法……一つ、だけ……なんで、しょ?」
どうやら、幼児退行したルリの内側でばっちり聞いていたことがルリの今の発言でグリースは理解させられた。
――ごまかせなかった!!――
グリースは内心冷や汗をかいた。
「……本当、面倒な、体……ああ、下腹部に酷い感覚が走って気持ちが悪い……」
ルリはグリースに抱きかかえながら、ぐったりとしたまま腹部を手でつかんだ。
「起きていたくない……まだあの行為は怖い……」
ルリは怯えたような声色で呟いた。
「……分かった、前みたくルリちゃんには眠ってもらっていいかな?」
「それがいい……」
グリースは液体を取り出した。
「じゃあ、コレ、頑張って飲んで」
ルリの口元に液体を運び、ルリはその液体を飲み干した。
「……酸っぱい」
「絶賛味は改良中、ごめんね」
グリースは液体が入っていた容器を消すと、ルリの額に口づけをした。
「……」
ルリの目はゆっくりと閉じられる。
静かな寝息が聞こえてきた。
グリースはルリをベッドに寝かせると、扉の方を見る。
「と言うわけだ、今回はどうする? 俺でも構わないぜ?」
挑発するような物言いで扉の所に立っているアルジェントを見る。
「貴様だけは我慢ならん」
アルジェントは扉に寄りかかったままグリースを睨みつける。
「できることなら真祖様がよいのだが……」
「だってよヴァイス」
闇が人の形を取る。
「……」
「ずいぶんと離れてるな」
「……香りが、な。我慢しているが、普通の吸血鬼や人間なら理性を確実に放棄してルリを襲っているぞ」
「俺はそんなに感じないんだけどなあ、甘い香りがするなぁ程度で」
「……一体私とお前年数以外に何処に違いがあるんだ……」
アルジェントが忌々しそうにグリースを見ている。
彼もルリの体から放たれるフェロモン――「香り」がかなり強く頭を刺激しているようだ。
それを我慢するため、距離を取っているようだ。
「……いくら俺の術で眠ってるとは言え、あんまりやり過ぎると解けかねないんだが、お前ら大丈夫か? 見てる限り前回よりも『香り』が強くなってるんじゃねーの?」
「……」
「……その通りだ、喉に牙を食らいつきたい、抱きたい、この二つの欲求を抑えるのが前回よりかなり苦痛に感じている。だから私は抱かぬ、グリースお前が抱け」
「真祖様?!」
アルジェントが信じられないものを見るような目でヴァイスを見る。
「アルジェント、お前相当我慢しているだろう、前回でも我慢して抱くのがかなりきつかったのか当分疲弊しておったではないか」
「そういやそうだな、じゃ俺が抱くから後始末はよろしく」
「……真祖様が言うのであれば……」
「じゃあ、お前ら部屋から出た出た、あと覗き見すんなよ。見られて興奮する趣味俺はねぇからな」
「分かっている」
ヴァイスはそう言って闇を纏って消えた。
アルジェントは、何か言いたげだったが結局何も言わず部屋から出て行った。
自分と眠るルリ二人っきりになるとグリースは念のため結界をはった。
覗き見しないとは言ったが、見る輩がいるかもしれないことと、部屋に招かれざる客が来ない様にするためである。
グリースはベッドに乗りルリのショーツを脱がす。
愛液でぐっしょり濡れていた。
ネグリジェの裾を上げて、とろとろと愛液をこぼす恥部にそっと触れる。
赤くなっている陰核に軽く触れると、ルリの体は震えた。
軽い絶頂をしたのが分かった。
「……確かに、今のルリちゃんにはちょっと感じたくない事だろうなぁ」
グリースはそう言って愛液を垂らす肉壺に指を入れる。
指はすんなりと入り、膣肉はぎゅうぎゅうと指を締め付けてきた。
少し動かすだけで、締め付けが強まり、愛液がだらだらと零れ、ルリの体はのけ反った。
「発情するとここまで敏感になるんだな……今のルリちゃんには寝ててもらわないとだめだな、ショックがでかすぎる」
グリースは愛液で塗れた指を抜き、雄を押し当て、挿入した。
挿入しただけで、締め付けが強い。
精液を欲しているかのような、絡みついてくる、射精を促す締め付けだった。
「っは……ヤバいなコレ、ちょっとクセになりそうだ……」
グリースはそう言いながら腰を動かし、奥を突く。
眠っているルリの口から喘ぎ声が零れる。
のけ反り、体を震わせ、何度も絶頂を繰り返していた。
グリースは最奥に雄を押し付けながら、精液を吐き出す。
グリースはルリの様子を見る、体温は相変わらず高いまま、熱に浮かされたような艶を帯びた息を吐き出している。
グリースの嗅覚にも、まだ「香り」が漂ってきている。
「マジかよ……一回じゃダメかよ……」
グリースは困ったような顔をしてから、再度突き上げ始めた。
グリースは何度も突き、膣内で射精した。
ごぷり……と精液が零れるころ、「香り」が消えた。
ルリの体温も平常時に戻っている。
グリースは安堵の息を吐き、薬を取り出し、膣内で薬をつぶした。
「これでいいだろう……」
グリースはルリのネグリジェの裾を元に戻して呼ぶ。
「アルジェント! 終わったぞ!!」
「……終わったか」
アルジェントは不満そうな顔をしたままルリを抱き上げた。
そして姿を消した。
「……もしかして発情する度に悪化するんじゃねぇだろうなぁ……コレ」
グリースはベッドに腰をかけため息をついた。
予感が当たらないことを祈った。
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