不死人になった私~壊れゆく不老不死の花嫁~

琴葉悠

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偽りの忘却

楽になったと思ったら何この異変?! ~俺たちが愛しているのは『君』~

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 グリースは窓に寄りかかりながら、ルリが戻ってくるのを待った。
 そこそこ時間は経過している、アルジェントを殴っていた時間よりも少し長い時間が。
 アルジェントは術で痣や服の汚れを全て消している、グリースが「そんなぶっさいくな面でルリちゃんのお世話すんのか?」と煽ったらアルジェントは即座に術で全て治療した。
 痛みは若干残っているだろうが。

 闇が出現し、消えるとルリだけが現れた。

「あーこれで幾分か気が晴れた」
 ルリは少しだけすっきりした明るい表情を浮かべていた。
「……ルリちゃん、ヴァイスは?」
「……顔を殴ったら痕ができたから消えるまで時間がかかるし配下に示し突かないから見えない箇所にしてくれって言われたんで服来てる箇所を殴ったり蹴ったりしたら結構効いたらしく、今棺桶でぐったりしてる」
「わぉ……」
「これで――あれ?」
 ルリはその場に倒れこんだ。
「ルリ様?!」
「ルリちゃん?!」
 グリースとアルジェントが駆け寄り、ルリを抱き起す。
「ありぇ、にゃんかあたまがぐりゃぐりゃして、めがぐりゅぐりゅして……にゃんかよくわかんにゃ――」
 ルリの頭がガクンと後ろに倒れる。
「ちょっとルリちゃん?!」
 ルリは目をつぶっている、叩いても呼んでも返事がない。
「気を失ってる……一体何が……」
 ルリが突然意識を失った事に、グリースは原因が分からず戸惑うだけだった。


「ん……」
 ルリが目を覚ますと、リビングにいた。
 そう実家のリビングだ。
 ソファーには女性が座り、その膝を枕にするように幼子がすやすや眠っている。
 ルリはもう一つのソファーに腰をかけていた。
 女性を見ると、長くて顔が見えなかった容姿に変化があった。
 髪がルリと同じになりルリと似た――否ルリと瓜二つの顔がはっきりと見えていた。
『……ありがとう』
「本当は貴方がやった方がすっきりするんだろうけどねぇ」
『……私には怖くてできない』
「精神構造私の方がタフにできてるのかねぇ」
『かもしれない』
「で、何で私気絶したの?」
『私が呼んだから』
 女性はそう言いながら幼子の頭を撫でる。
『ねぇ、貴方はあの三人に愛してほしいと言われたらなんて答える?』
「は? あの三人って……ヴァイスとアルジェントとグリースのこと?」
 ルリが困惑しながら尋ねると女性は頷いた。
「えー?! いや、困る!! 人好きになったことないよ私!!」
『私もよ』
「いや、そりゃそうでしょう、私なんだからというか貴方が私の元なんだから」
『そうね……』
 女性は苦笑した。
「……ねぇ、何か変だよ、どうしたの私?」
『……』
 女性の体にひびが入った。
「ちょっと、待って、まさか、おい、ふざけんな!! それは、それだけはすんな!!」
 ルリが女性の体を掴みヒビを入るのを防ぐ。
『……私、いない方が……』
「ふざけんな!! 何のために私が傷と向き合ってると思う!!」
 ルリは怒鳴った。
「ああ、くそ、誰か、誰か――!!」
 ルリは助けを求めた。


 グリースの赤い目が白く変わる。
「――不味い、本当のルリちゃんが崩壊しはじめてる」
「どういう事だ?!」
「お前たちは気づいてなかったけど、あれは記憶喪失したルリちゃんじゃない、記憶喪失したという設定を与えられたルリちゃん、つまり別人格みたいなもんだ。ただ作りが精巧で頑丈すぎて記憶喪失もその通りだし、精神のタフさは体感しただろう?」
「……」
「本来のルリが自壊だと?」
 ヴァイスが姿を現した。
「ヴァイス、ルリちゃんにボコられた所は大丈夫なのか?」
 グリースは厭味ったらしく聞く。
「痛みがある程度だ、それよりルリだ」
「……ルリちゃんは、作ったルリちゃんに全部任せて自分は消えるのを選択しようとしてる、だから俺が妨害に行ってくる」
「……待て、つまり――」
「はい、予想通り、またキスし続けることになります、つーわけで離れろ離れろ!! 本気でやべぇんだから急ぐんだ寄るな触るなあっち行け!!」
 グリースが怒鳴ると、ヴァイス達はベッドから離れた。
 グリースはベッドに横たわるルリの顔に顔を近づける。
「間に合えよ、そして早まるなよいいなルリちゃん!!」
 そういってルリの薄紅の唇に唇を重ねた。


「なんじゃこりゃあ!?」
 前回来たときとは異なり、ルリの精神の階層の構造が大きく変化していたのだ。
 明らかに外部を拒むような、そう鋭い茨で覆われた空間になっていたのだ。
 グリースは茨のない箇所を飛びながら次の階層を探す。

『誰か! 誰か!! お願い!!』

 ルリの声が聞こえた。
 グリースはルリの声が聞こえる方へと進んだ、其処は茨がみっちりと生い茂っているが、隙間から扉が見えた。
「燃やす……のはヤバいな、仕方ない」
 グリースは茨に手を手で引きちぎり始めた。
「っ……いってぇけど我慢だ!!」
 ぶちぶちとちぎっていく。
 手がボロボロになるころにようやく扉を開けれるところまできた。
「早くいかねぇと……!!」
 グリースは扉を開けて飛び込んだ。

 次の階層は変哲もなさそうな四角い通路だった。
「……」
 グリースは地面に違和感を感じ浮かんで進んだ。
 少しすすみ始めると左右の壁がゆっくりと迫ってくるのが分かった。
 その上天上と床は剣のような鋭い物体が生えてきた。
「くっそ!!」
 グリースは猛スピードで先を急ぐ。
 通路が非常に長く感じる。
「まだか、まだか……!!」
 目をほそめると、四角い穴が見えた。
「そこか!!」
 グリースは穴に入りそのまま落下した。

「っギャー!!」
 無数の黒い手たちがグリースを追いかけ始めた。
 グリースは落下速度を速める。
「次の階層の入り口は何処だ!!」

『ぐりーすおにいちゃん、こっち』

「ルリちゃん?!」
 声のした方を見ると壁から生える白い小さな手が見えた。
 グリースがその手を掴むと、グリースは壁の中に吸い込まれた。

 グリースは勢い余って壁に背中から激突して、ずるりと床に落ちた。
「そ、速度落としておくんだった……ん? リビングか?」
 グリースは立ち上がる。
「グリース!! 助けてグリース!!」
 声に振り向くと、ルリが助けを求める表情と声を出していた。
 彼女の腕の中には全身にヒビが入りつつある女性――否、主人格のルリが居た。
「ぐりーすおにいちゃん、おねえちゃんをたすけて」
 幼子――幼児のルリがグリースの服を引っ張り助けてほしいとお願いしてきた。
「――なんとか、やってみる」
 グリースは幼児のルリの頭を撫でてから、二人に近づく。
 グリースは二人を抱きしめた。
「ルリちゃん、俺が来るの分かってて妨害してた君の方だよ、未だ傷を抱え続けているルリちゃん、君だ!!」
 ヒビの入っているルリが目を開ける、彼女はグリースを見て少しばかり驚いているような風に見えた。
『どう、して』
「他の君が助けてくれた、じゃなきゃ俺は最初の階層と三番目でアウトだったからね」
『わたしが、きえた、ほうが、つごう、が、いい』
「都合とかじゃない、俺たちが愛しているのは君だ!! 他でもない君なんだよ!!」
「確かに私達も大事に……まぁ幼児の私は酷い目にあったけど一部……それでも、それでもよ、本当の私を愛してるのはグリースにあの二人なんでしょう!? 逃げるな!! 私なら、逃げるな!! 愛せなくてもいい、愛が分からないならそれでもいい、望むものが与えられるか分からないならそれを伝えろ自分の口で!! いつまでも傷を抱えて逃げて逃げて逃げてどうする!! なんのために私が三人をぶん殴ったと思ってるのさ!!」
 記憶喪失として作られたルリが、本来のルリに言う。
『……あなたなら、さんにんのきもちにそうこたえてあげられる』
「私じゃダメだっていってんでしょうが!!」
 作られたルリが怒鳴る。
「……ルリちゃん、それじゃあだめだよ……」
『なんで……』
 グリースは悲しい顔でルリに言う。
「君が消えても、ルリちゃんのことを皆大事にするだろうでも――」

「俺たちは一番愛しているルリちゃんを失うんだ、永遠に。ヴァイスもアルジェントも、俺もそれを永遠に抱えて生きていかなきゃならないんだ。それが罰だというなら受けるよでも――」

「罰ではなく、俺たちにとって幸せだというなら止めてくれ、俺やヴァイスに二度も愛する人を失う苦しみを味合わせないでくれ!」
『グリース……ああ、そうね……そういうはなし、してくれたものね……』
 ルリのヒビがゆっくりと塞がっていく。
『……私は――』
「大丈夫だって、私なんだから!」
「おねえちゃん、がんばってきたから、もうすこしだけがんばろ?」
 作られたルリが笑顔でルリの頭を撫で、幼児のルリがルリの服を引っ張る。

「――わかった、まだ苦しいし、怖いし、辛いけど――戻るわ」
『じゃ、私らは今回でお役目ごめんと行こう、なあに一つに戻るだけだから大丈夫だって!!』
『つらかったらまたよんでね』
「――わかった」
 二人の姿が淡い光になってルリの体に吸い込まれていった――




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