不死人になった私~壊れゆく不老不死の花嫁~

琴葉悠

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君を守るため

戻らなきゃ ~君が決めたのなら~

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「他ので試すのも問題なし……つまり完成だー!!」
 グリースはできた二つの注射器に入った液体を急いでそれ用のケースに仕舞った。
 ケースに鍵をかけ、寝室を覗き込む。
 ルリがすやすやと眠っている。

――よし、さっさと行ってさっさと済ませるか!!――

 グリースはケースを持って急いでヴァイスの城に向かった。

「おらぁ!! 睡眠中邪魔するぞ!!」
 アルジェントの部屋に結界術等をぶち破って侵入する。
 破られたのを察知したのか、ベッドで眠っていたアルジェントが飛び起きた。
「なんだ、お前寝る時普通かよ、つまんねぇ」
「……貴様、人の部屋に不法侵入した上、睡眠妨害までして……」
「うるせぇ、とりあえず腕だせ、お前の意見聞くのはその後だ」
 グリースはケースから注射器を取り出し、アルジェントの腕をまくると、針を刺して液体を注入した。
「……なんだこれは?」
「ルリちゃんのフェロモンに当てられても脳みそおかしくならなくて済むようになる薬、一回注入すれば体が勝手にそうなるから」
「……」
「言っとくがまだルリちゃんは帰せねぇぞ」
 アルジェントが何かを言おうとする前にグリースが先に答えを言う。
 アルジェントは忌々しそうにグリースを睨みつけるが、グリースは気にせずそのままヴァイスの部屋へと転移で移動した。

「おらぁ! 今一人か?!」
「……何の用だ」
 玉座の間にはおらず、自身の部屋にいたヴァイスに近寄るとケースから注射器を取り出す。
「御託はいい、腕だせ腕」
「……」
 ヴァイスはすっと腕を出した、グリースは服をまくり注射器の針を刺して液体を投与する。
「……ルリのフェロモンに作用されなくなるための薬か」
「作るのマジ苦労したんだぞ、感謝しろ」
「礼を言う」
 グリースはヴァイスの服の袖を戻すと、空の注射器をケースの中に仕舞った。
「……ルリはどうしている?」
「相変わらずさ」
 グリースはそう言って伸びをする。
「まぁ、即効性はそこまでない、薬の効果が出る様になるのは一週間かかる」
「……そうか」
 ヴァイスは椅子に腰をかけたまま、深いため息をついていた。
「ため息つきたいのはこっちだ!! ルリちゃんの精神ガッタガタにしたのはお前らじゃねぇか!!」
 グリースが怒鳴ると、ヴァイスは口を閉じた。
 グリースは額を抑えながら、息を吐く。
「……ルリには会えぬのか?」
「だからその薬の効果でるのは一週間かかるって言ってんだろ!! そもそも、ルリちゃんの傷トラウマレベルで深いんだから簡単に会わせられるかボケ!!」
「……それでも会いたいのだ……」
「ああ、クソ、ルリちゃんは面倒な奴に愛されたな本当に!!」
 グリースはヴァイスの言葉に悪態をつく。
「俺はもう帰る、お前はマジ隠れ家くんなよ!! いいな!!」
 グリースはそう言ってヴァイスの部屋から姿を消した。

 グリースは隠れ家の前に転移すると、隠れ家の扉を開けて中に入る。
 足音を立てないように寝室に戻ると、ルリは静かに眠っていた。
 それに安堵の息を吐き出し、グリースはルリを起こさぬように隣に寝て、ブランケットを被り、そのまま眠りについた。


 グリースがヴァイスとアルジェントの二人に薬を投薬して二週間が経過した。
 一週間経過した時に、試しに悪さをする要素のあるフェロモンを二人に吹きかけたが何も起きなかった。
 吹きかけられた二人はそんなことは良いからルリをさっさと返せと言わんばかりの顔をしていたが、グリースはそれを無視した。

 無視した結果、この一週間毎日のようにヴァイスが隠れ家の前に来るようになった。
 入れなくしておいて本当に良かったと来る度に実感していた。
 来る度に、ルリに気づかれない様にしてさっさと追い返しているが、「二度と来るな」と言ってるのに毎回のように来るあのヴァイスをどうするべきかグリースは頭を悩ませていた。

 その上、この二週間ルリがやたらと性行為を求めてくるのがグリースを混乱させていた。
 何か不安があるようだが、口には出さない。
 どうやら、城に戻されることへの不安が日に日に酷くなっているようだ。
 まだ城に戻すなど一言もいっていないのに。
 ヴァイスが来ているのに気づいているわけでもない。
 それでも城に戻されることを怯えるかのように性行為――基体を求めてくる。

 今宵もそうだ。
 避妊用の薬を飲ませ、華奢な体を優しく抱く。
 裸になって触れあう。
 あの薬を飲む必要がなくなったので、飲ませなくなったら胸の張り等はなくなったが、胸への愛撫を求めるのは無くならなかった。
 胸の先端を甘く噛み、吸うと体を震えさせて絶頂する。
 とろとろと秘部から愛液を溢れさせる、陰核を触り、指でいじってやれば、潮を吹いた。
 シーツがぐっしょりと濡れる。
 愛撫が必要がないほど濡れているが、グリースはちゃんと愛撫をする。
 爪をちゃんと切った指を膣内にいれ、よい箇所に刺激を与える。
 甘い声を上げて、体にしがみついて、のけ反り、何度も絶頂する。
 指を抜き、雄を膣内に挿れると、締め付けと絡みついてくる感触が心地よい。
 何度も抱いてると、ゆるくなるとか聞いたことがあるが、不死人はそうではないのかとふと思った。
 口づけをして、口の中を堪能し、首筋を甘く噛み、深く抱き合いながら、膣内に精液を吐き出す。
 グリースの背中に回されたルリの手が、背中を軽く叩く。
「うん、わかった。今日はここまでね」
 グリースはルリを寝かせ、ずるりっと雄を抜いた。
「温泉に入る? それとももう寝ちゃう?」
「……おんせん……」
 ルリが手を伸ばすので、グリースはルリを抱きかかえて温泉へと向かった。

 体の汚れを落とし、温泉に浸かる。
 ルリはぴっとりとグリースにくっついていた。
 ルリはグリースが居ないとひどく不安になるのは変わらなかった、だからこそルリは度々言うのだ「何故自分はグリースを愛せない?」と。
 グリースを愛していたら、城に帰らねばならないと義務は消える可能性が高い。
 だが、それでもルリは未だに誰も「愛せない」ことに悩んでいた。
 グリースへの感情は「依存」だ。
 グリースだけはルリに恐怖感情を与えるような事はしなかった。
 どんな時であってもだ。
 その為信頼や、安心感が、悪い方に傾き、依存に変わってしまった。
 ルリの精神は安定化している一方でゆっくりと病んでいるのがグリースには分った。

 これは良くない、このままでは不味い。
 そう思いながらも現状を変える良い方法が思いつかない。
 心を鬼にする勇気もない、それをやったらルリの精神が追いつめられた時に自分が逃げ場になれなくなってしまうからだ。

 グリースは温泉に浸かりながら額を抑えて、息を吐く。

 どう考えても解決方法が思いつかない、どうすればよいのかと悩み、頭が痛くなった。

「……グリース」
「ん? ああ、どうしたんだいルリちゃん」
 ルリがグリースの腕を掴んでいる、手が震えている。
「……私、城に……戻ろうと……思う……」
 ルリは声を絞り出すようにそう言った。
 グリースはルリの言葉に耳を疑った。
 此処にいて自分が居てやっと安定するルリが、自分から恐怖対象になっている場所に戻ると言い出すとはグリースは予想していなかったのだ。
 ルリの今の状態も見ても、恐怖を押し殺すのがうまくできていないそんな状態だ。
「……ルリちゃん、無理してない?」
 グリースは不安になってルリの肩を優しく掴んで彼女の目を見る。
 目には怯えと恐怖の色がはっきりと残されていた。
「……」
 かなり無理をしてるのが分かった、何がルリをそう急かしてるのか謎だった。
「ルリちゃん、俺はルリちゃんが無理してまた精神的に追い詰められるのは嫌なんだよ、どうしたんだい、急に」
「……ちょっと思ったの、ここにいると安心するし、怖い思いすることない、けど……」
「けど?」
「……私が、城に戻らないと、いろんな事が起きる……」
「どうして?」
「……SNS」

 グリースはここで自分がすっかり忘れていたものの存在に気づく、ルリのスマートフォン、これに何も手を付けていなかったのだ。
 だから、グリースがテレビでは知られないように細工をしていた情報が全てSNSを通して分かってしまったのだろう。
 一部で噂になっている、「真祖の妻」が病気療養しているという情報で、側室をよこそうとしている連中や、真祖に取り入ろうとしている連中が動いていると。
 ルリの目を盗んで色々対応してきたし、ヴァイスにも対応させたつもりだったが情報はやはり漏れてしまうようだった。
 他にもいろいろなことが起きているが、上げればきりがない。

「……だから、戻る……」
「そっか……わかった……ただ約束してくれないと戻さない」
「何……?」
 ルリは不安そうにグリースを見てる
「無理をしないこと、困ったりしたら俺を呼ぶこと、いい? 我慢しすぎないで、無理なら俺を頼って、ここで俺を頼ってくれてたように」
「――うん!」
 ルリは明るい表情で頷いた。
「ただ、いきなり帰るのもあれだから、明後日にしないか? 向こうも色々あるだろうし」
「うん」
 ルリはグリースの提案に大人しく従った。

 温泉から上がり、体を拭いて着替えると、グリースはルリをベッドに寝かしつけ、彼女が眠りに落ちたのを見計らって城へと向かった。
 ルリを戻すことを伝えるためである。

 不安がないわけではない、嫌な予感ばかりが頭に浮かぶ。
 それでも、ルリが勇気を出して、言ったのだ、彼女の事は尊重したかった。
 それに、今まで同様城には顔を出すつもりだし、ルリが呼べば反応するようにしていた。 何かあったら、必ず助ける、そう決めていた。




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