あざとさを捨てた令嬢は、若き公爵に溺愛される

古紫汐桜

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禁断の魅了魔法、発覚す。~あの女、やっぱりヤバかった~

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「レミリア様、今のは?」

 驚いて尋ねた私に、レミリア様は顔色一つ変えずに答えた。

「記憶操作ですわ。お兄様は、魅了で記憶操作ができますの」

「何の因果かね。魅了なんて、本来は要らない力なのに」

 苦々しく呟くユリエル様。
 その表情を見た瞬間、私は無意識に──彼の手を握っていた。

「ん?」
「あれ……?」

 ユリエル様が私を見て、私も自分の行動に驚く。

「うわぁ! ご、ご、ご……ごめんなさい!」

 慌てて手を放すと、レミリア様が微笑みながら言った。

「あら! やっぱり、私はお邪魔でしたかしら?」

「と、とんでもないです! ぜひ、いらして下さい!」

「あら、そう? 先程から、私、壁になった気分ですのよ」

 わざとらしく頬杖をつくレミリア様に、私は苦笑いで返すしかなかった。


****



「さて……そろそろ本題に入りましょうか」

 お茶を一口含んだレミリア様が、穏やかに切り出す。

 私が背筋を伸ばすと、隣からクスクスと笑う気配。
 無視、無視……!

「まず、あなたは“前ソフィア”とは、どういう関係ですの?」

「ん~……会社の同僚、ですかね?」

「なぜ疑問形ですの?」

「彼女に婚約者を寝取られたと思ってショックを受けて、車道に飛び出して……車に轢かれて、此処に来たので……」

 ざっくり説明すると、レミリア様は眉間に皺を寄せた。

「あの女、異世界に行っても変わらないのですわね。相変わらずの尻軽ですこと!」

 嫌悪感を隠さないレミリア様を横目に、ユリエル様は黙り込んだまま、やがて重い口を開く。

「……よく考えたら、元ソフィアって、クソバカ王子とも関係を持ってたんだよな……」

「ひっ……」

 背筋がぞわりと粟立つ。
 その一言で、ソフィアの記憶が鮮明に蘇った。

 性に奔放で、この身体を使って男を誘い、快楽を貪る元ソフィアの痴態。
 吐き気を催しそうになっていると──

「クソバカ王子だけなら、まだマシですけど」

 レミリア様の言葉に、私は涙目になった。

 記憶の中だけでも、二桁はいる。
 どれもソフィアから誘い、娼婦のように自ら身体を差し出し、腰を振り、快楽を貪る姿。
 男たちが、あっという間に溺れていく光景。

『私が欲しいなら……分かるわよね?』

 甘く囁き、欲しいものを手に入れてきたソフィア。

 ……そして、ふと気付いた。

 前のソフィアの魔力の根源は──
 快楽そのものだったのではないだろうか。

 顔色がみるみる青くなる私を見て、

「……やばくないか?」
「……まずいですわね」

 二人は顔を見合わせ、同時に言った。

「ソフィアさん、とりあえず一人になるのは禁止です。よろしいですわね?」
「勝手に動き回るなよ」

 私がコクコクと頷くと、レミリア様は小さくため息をついた。

「困りましたわね……まさか、あの女が禁呪の魅了魔法を使っていたなんて……」

 そう呟きながら、ユリエル様に視線を向ける。

 私が疑問の表情を浮かべていると、ユリエル様は「あぁ……」と低く呟き、
 長く整った指を二本、静かに立てた。

(……イケメンって、指まで綺麗なのね)

 思わず場違いな感想が浮かぶ。

「魅了魔法には、二種類ある」

 淡々と、ユリエル様は続けた。

「一つは、俺のように“目を合わせた相手の記憶を操作する力”。
 そして──禁呪の魅了魔法は、身体の関係を持った相手を、自分の駒にする力だ」

「それって……」

「そう。相手の意思を奪い、自分の思うままに操る」

 低い声が、冷たく響く。

「恐らくだが……前の世界で、やたら相手の身体に触っていなかったか?」

 ハッとした。
 飲み会の時、確かにあの女は──異様なほど、ベタベタしていた。

「接触が濃ければ濃いほど、その力は強くなる」

 その言葉に、私は完全にムンクの叫び顔になる。

「な、な、な……なんですってぇ~~!?」
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