28 / 29
Ⅵ章――――海と夏と君と
28 残暑お見舞い申し上げられる二学期
しおりを挟む
小さな島全体で行われたお祭りの余韻が残る日々————。
すでに夏休みは終わってしまったが、夏休み前とは大きく変わった学校生活が始まっていた。
朝昼に眠たくなるような先生の話を聞きながら、眉間に皺が寄ってしまう教科書に目を通し。時々先生の無茶ぶりに笑ってごまかしながら答え。座りすぎて硬くなった体をおもいっきり炎天の下ではしゃぎ倒す。
友達とどうでもいいような会話で盛り上がり、放課後を迎える。
なんてことない、愛すべき普遍たる学校生活よ。何も変わらないように感じるかもしれないが、俺の気分はこの夏よりも熱くなっているようだ。
席で伸びをして、カバンを持って立ち上がる。
「キオ、今日でんでんに寄ってこーぜ」
朝川は学生カバンを頭上に上げて呼んでいる。
「悪い。今日も予定があってだな……」
「えぇ、またかよー。今週イベントだから協力プレイしようって思ってたのに」
村島は心底残念そうに肩を落とす。
「イベントはまだ始まったばっかだろ? 次回は俺も参加できるし、またの機会にな」
何も悪いことは言ってないはずだ。なのになんだ、こいつらの反応。三人揃って腐った思慮を纏う熱視線を照射してくる。
「な、なんだよ……」
ドミノ倒しみたく続けざまにため息が流れた。偶然なのか、それとも意図的なのか。どちらにせよ腹立つ。
「変わったな。キオよ」
「いやわかる。わかるぞ。胸いっぱいの夏の思い出を経験したんだ……」
ヤブがいっちょまえにしみじみと語っている。
「何をワケのわかんねえこと言ってんだよ。夏バテで脳みそが溶けちまったのか?」
「おやおや? とぼけちゃいますかぁあ?」
朝川はニヤニヤした顔で鬱陶しい口調を投げかける。なんだってんだ。誘いを断った腹いせか?
不審に思っていると、思わぬ横やりが入った。
「そこらへんにしときなよ三人とも」
佐士島さんがやれやれといった感じで朝川たちをたしなめた。
「嫉妬とかダサい」
烏丸さんはくだらないと言いたげに辛辣に意見する。
「そういうんじゃねえって」
「ちょっとからかっただけだよ」
「この暑さに加えてアツアツの空気。そりゃめまいもするってなもんよ」
決して悪い雰囲気ではないが、なんというか、これもお決まりみたいな。言うなれば、猫のじゃれ合いという感じか。
どうなっているのか戸惑っていると、俺と同じく困惑した様子で教室に入ってきた女子を視界に捉えた。
「なにしてんの?」
折谷は少し伸びた前髪を邪魔くさそうに指で横に流し、声をかける。
「ああ、菜音歌。終わったの?」
佐士島さんは柔らかな笑顔で尋ねる。
「うん」
「今日も海美でしょ?」
烏丸さんも意味ありげに微笑ましい眼差しで聞く。
「そうだけど、どうかしたの?」
「ううん、ほら行ってあげな。彼氏が待ってるよ」
佐士島さんは嬉しそうに言う。
「お熱いねご両人っ!」
「うちのクラスのベストカップル!」
教室がどっと沸いた。異様な雰囲気に圧倒される。
はっきり言って、暑苦しいのはお前らだ!
もどかしく思いながら視線を移すと、折谷は苦々しく顔を紅潮させていたが、俺と視線が交わった瞬間、ふわりと笑った。
「早く行こ」
折谷は居心地悪そうに足を速めて学生カバンを持ち、俺の腕を引っ張っていく。
まだ記憶に新しいお祭りよりも賑やか、というか騒がしい声に背中を押されて廊下へ出た。
すでに夏休みは終わってしまったが、夏休み前とは大きく変わった学校生活が始まっていた。
朝昼に眠たくなるような先生の話を聞きながら、眉間に皺が寄ってしまう教科書に目を通し。時々先生の無茶ぶりに笑ってごまかしながら答え。座りすぎて硬くなった体をおもいっきり炎天の下ではしゃぎ倒す。
友達とどうでもいいような会話で盛り上がり、放課後を迎える。
なんてことない、愛すべき普遍たる学校生活よ。何も変わらないように感じるかもしれないが、俺の気分はこの夏よりも熱くなっているようだ。
席で伸びをして、カバンを持って立ち上がる。
「キオ、今日でんでんに寄ってこーぜ」
朝川は学生カバンを頭上に上げて呼んでいる。
「悪い。今日も予定があってだな……」
「えぇ、またかよー。今週イベントだから協力プレイしようって思ってたのに」
村島は心底残念そうに肩を落とす。
「イベントはまだ始まったばっかだろ? 次回は俺も参加できるし、またの機会にな」
何も悪いことは言ってないはずだ。なのになんだ、こいつらの反応。三人揃って腐った思慮を纏う熱視線を照射してくる。
「な、なんだよ……」
ドミノ倒しみたく続けざまにため息が流れた。偶然なのか、それとも意図的なのか。どちらにせよ腹立つ。
「変わったな。キオよ」
「いやわかる。わかるぞ。胸いっぱいの夏の思い出を経験したんだ……」
ヤブがいっちょまえにしみじみと語っている。
「何をワケのわかんねえこと言ってんだよ。夏バテで脳みそが溶けちまったのか?」
「おやおや? とぼけちゃいますかぁあ?」
朝川はニヤニヤした顔で鬱陶しい口調を投げかける。なんだってんだ。誘いを断った腹いせか?
不審に思っていると、思わぬ横やりが入った。
「そこらへんにしときなよ三人とも」
佐士島さんがやれやれといった感じで朝川たちをたしなめた。
「嫉妬とかダサい」
烏丸さんはくだらないと言いたげに辛辣に意見する。
「そういうんじゃねえって」
「ちょっとからかっただけだよ」
「この暑さに加えてアツアツの空気。そりゃめまいもするってなもんよ」
決して悪い雰囲気ではないが、なんというか、これもお決まりみたいな。言うなれば、猫のじゃれ合いという感じか。
どうなっているのか戸惑っていると、俺と同じく困惑した様子で教室に入ってきた女子を視界に捉えた。
「なにしてんの?」
折谷は少し伸びた前髪を邪魔くさそうに指で横に流し、声をかける。
「ああ、菜音歌。終わったの?」
佐士島さんは柔らかな笑顔で尋ねる。
「うん」
「今日も海美でしょ?」
烏丸さんも意味ありげに微笑ましい眼差しで聞く。
「そうだけど、どうかしたの?」
「ううん、ほら行ってあげな。彼氏が待ってるよ」
佐士島さんは嬉しそうに言う。
「お熱いねご両人っ!」
「うちのクラスのベストカップル!」
教室がどっと沸いた。異様な雰囲気に圧倒される。
はっきり言って、暑苦しいのはお前らだ!
もどかしく思いながら視線を移すと、折谷は苦々しく顔を紅潮させていたが、俺と視線が交わった瞬間、ふわりと笑った。
「早く行こ」
折谷は居心地悪そうに足を速めて学生カバンを持ち、俺の腕を引っ張っていく。
まだ記憶に新しいお祭りよりも賑やか、というか騒がしい声に背中を押されて廊下へ出た。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる