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6.部活動
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お昼休みはいつも琴乃と教室で隣同士で食べる。
「実は私ちょっと相談があるんだけどね」
ご飯を食べ始めるなり琴乃がそう切り出した。
「琴乃から相談なんて珍しいね」
「そうかな?」
琴乃は肩にかかった髪の毛を指でくるくるしながら言った。昔からの琴乃の癖だ。ただ、今では茶髪の髪に、アイロンできれいにカールがかけられている。以前は私と同じ黒髪のおさげだった。
「実はね。部活始めようかと思って」
「え!なんで?……あ、いや、反対してるわけじゃないよ。でも、びっくりしたもんだから」
驚いて大きな声を発してしまったことが変な誤解を生まないよう、私は説明を加える。
「特になにかあるってわけじゃないんだけど、せっかくの高校生活だしちょっとは青春的なことしてみようかなって」
琴乃にしては珍しく口を濁すようないい方だった。
「どう思う?」
琴乃が大きな瞳で見つめてくる。
どう思うって聞かれても。本音を言うなら琴乃と放課後に遊びに行けなくなるのは寂しい。帰宅部のままでいてほしいと思わないでもない。
でも、私には何となくわかる。琴乃がもう自分の中で答えを出してしまっていることが。彼女が求めているのは、それを一押ししてくれる激励の言葉なのだ。
「琴乃が頑張りたいって思うんなら、挑戦してみてもいいんじゃないかな。大丈夫、琴乃ならできるよ」
私の返事を聞いた瞬間、琴乃の顔が一気に明るくなった。
「そう、ありがとう!」
「うん」
私も笑顔で答える。琴乃ならできる、これは本音だ。
琴乃は私と違って器用だから新しいことを始めてもきっとすぐにものにしてしまう。だからきっと大丈夫。後ろめたいのは、琴乃のことを心の底から応援できない自分がいるということ。
私、親友失格かな。
「じゃあ、私今から顧問の先生に相談してくる!」
琴乃は食べかけのお弁当を片づけ始める。
「え、今から?」
「うん。だって放課後は練習あるだろうし、昼休みくらいしかゆっくり時間とってもらえないでしょ?」
「明日の朝とかは?」
「善は急げって言うでしょ。こういうのは先延ばしにしない方がいいの」
この思い切りのよさ、いかにも琴乃らしい。
「五時間目までには戻ると思うけど、もし戻らなかったら私の教科書持って情報室行ってて」
両手を合わせてお願いしてくる琴乃に、頷き返す。
私は教室を出ていく琴乃の背中を見送った。その後ろ姿を見て、私はかつて自分が琴乃より数センチだけ大きかっ
たことを思い出す。琴乃は背が伸びてスタイルがよくなったよな。私はそんなに伸びなかったけど。
仕方ないので一人で弁当をつまむ。
「ねぇ、ちょっといい?」
黙々と弁当を食べていると光咲が声をかけてきた。
普段めったに声をかけてこないのに、どういう風の吹き回しだろう。この間たまたまカフェで話したことが影響しているんだろうか。あの時も私は琴乃と光咲たちの会話を聞いて頷いているだけだったが。
「桜、お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「うちね、美化委員会に入ってたんだけど、学校祭の運営委員会もやることになったの。それで、最近集まりの日程が被ることが多くなっちゃってさー。学校祭が終わるまでの期間だけでもいいから変わってくれない?」
委員会か。私はこれと言って委員会に入っているわけでもないし、琴乃が部活で忙しくなるなら放課後に暇になることも増えるだろう。
「うん、いいよ」
「よかった。桜ならそう言ってくれると思った」
「この間の……」
「ごめん。それじゃあ」
「あ、うん」
この間琴乃や彩夏たちと話してた雑誌について詳しく教えてほしい、と言おうと思ったのだが、光咲は私の言葉を最後まで聞かずに行ってしまった。
教室の前の方の席で彩夏や笑美たちと楽しそうにおしゃべりを始める。
「……」
私はまた無言で弁当箱をつつき始めた。
琴乃、なかなか帰ってこないな。
仕方がないから私は自分と琴乃の分の教科書を持って情報室に向かった。
「実は私ちょっと相談があるんだけどね」
ご飯を食べ始めるなり琴乃がそう切り出した。
「琴乃から相談なんて珍しいね」
「そうかな?」
琴乃は肩にかかった髪の毛を指でくるくるしながら言った。昔からの琴乃の癖だ。ただ、今では茶髪の髪に、アイロンできれいにカールがかけられている。以前は私と同じ黒髪のおさげだった。
「実はね。部活始めようかと思って」
「え!なんで?……あ、いや、反対してるわけじゃないよ。でも、びっくりしたもんだから」
驚いて大きな声を発してしまったことが変な誤解を生まないよう、私は説明を加える。
「特になにかあるってわけじゃないんだけど、せっかくの高校生活だしちょっとは青春的なことしてみようかなって」
琴乃にしては珍しく口を濁すようないい方だった。
「どう思う?」
琴乃が大きな瞳で見つめてくる。
どう思うって聞かれても。本音を言うなら琴乃と放課後に遊びに行けなくなるのは寂しい。帰宅部のままでいてほしいと思わないでもない。
でも、私には何となくわかる。琴乃がもう自分の中で答えを出してしまっていることが。彼女が求めているのは、それを一押ししてくれる激励の言葉なのだ。
「琴乃が頑張りたいって思うんなら、挑戦してみてもいいんじゃないかな。大丈夫、琴乃ならできるよ」
私の返事を聞いた瞬間、琴乃の顔が一気に明るくなった。
「そう、ありがとう!」
「うん」
私も笑顔で答える。琴乃ならできる、これは本音だ。
琴乃は私と違って器用だから新しいことを始めてもきっとすぐにものにしてしまう。だからきっと大丈夫。後ろめたいのは、琴乃のことを心の底から応援できない自分がいるということ。
私、親友失格かな。
「じゃあ、私今から顧問の先生に相談してくる!」
琴乃は食べかけのお弁当を片づけ始める。
「え、今から?」
「うん。だって放課後は練習あるだろうし、昼休みくらいしかゆっくり時間とってもらえないでしょ?」
「明日の朝とかは?」
「善は急げって言うでしょ。こういうのは先延ばしにしない方がいいの」
この思い切りのよさ、いかにも琴乃らしい。
「五時間目までには戻ると思うけど、もし戻らなかったら私の教科書持って情報室行ってて」
両手を合わせてお願いしてくる琴乃に、頷き返す。
私は教室を出ていく琴乃の背中を見送った。その後ろ姿を見て、私はかつて自分が琴乃より数センチだけ大きかっ
たことを思い出す。琴乃は背が伸びてスタイルがよくなったよな。私はそんなに伸びなかったけど。
仕方ないので一人で弁当をつまむ。
「ねぇ、ちょっといい?」
黙々と弁当を食べていると光咲が声をかけてきた。
普段めったに声をかけてこないのに、どういう風の吹き回しだろう。この間たまたまカフェで話したことが影響しているんだろうか。あの時も私は琴乃と光咲たちの会話を聞いて頷いているだけだったが。
「桜、お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「うちね、美化委員会に入ってたんだけど、学校祭の運営委員会もやることになったの。それで、最近集まりの日程が被ることが多くなっちゃってさー。学校祭が終わるまでの期間だけでもいいから変わってくれない?」
委員会か。私はこれと言って委員会に入っているわけでもないし、琴乃が部活で忙しくなるなら放課後に暇になることも増えるだろう。
「うん、いいよ」
「よかった。桜ならそう言ってくれると思った」
「この間の……」
「ごめん。それじゃあ」
「あ、うん」
この間琴乃や彩夏たちと話してた雑誌について詳しく教えてほしい、と言おうと思ったのだが、光咲は私の言葉を最後まで聞かずに行ってしまった。
教室の前の方の席で彩夏や笑美たちと楽しそうにおしゃべりを始める。
「……」
私はまた無言で弁当箱をつつき始めた。
琴乃、なかなか帰ってこないな。
仕方がないから私は自分と琴乃の分の教科書を持って情報室に向かった。
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