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13歳 その4
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あれから約一ヶ月が経って、私とリチャード様は一緒に街に出かけることになっていた。
「お久しぶりです。リチャード様」
「久しぶりだね。エミィ」
にこにこと笑うリチャード様に特に変わった様子はない。
私といえば、久しぶりに会うリチャード様に緊張しっぱなしだ。
前回のアレを「なかったことにする」って決めたのはどこへやら。こうして顔を合わせるとどうしても思い出してどぎまぎとしてしまう。
「エミィはそういう格好もよく似合うね」
今日は街に出るという事もあっていつものドレスとは違い軽装で、私は青色のワンピースを身にまとっていた。
「ありがとうございます」
こういう時にそつなく褒めるところは本当に王子様だなと痛感する。
ちなみにリチャード様もシンプルなシャツに黒のスラックスという服装をしている。
特に飾り気のない服装なのによく似合っていて、新たな魅力にときめいてしまう。
と、そこで気が付いてしまった。
私はリチャード様のこの服装を知っている。こんなラフな服装で会う事はなかったはずなのに、だ。
ならばどうしてなんて、思案する必要もない。ゲーム中に見た事がある。それ以外には考えられなかった。
つまりは今日リチャード様とヒロインの出会いのイベントが起こるという訳だ。確かに学園の入学前に偶然出会っていたというエピソードがあった。
そこでリチャード様はヒロインの事をちょっとだけ気に掛けるのだ。
勿論そのイベントの際にエイミーが一緒に居るなんて事はあり得ない。ならばどこかでリチャード様を一人にする必要がある。
二人で出かけているのに別行動をとるのも何だかおかしいし、うっかりはぐれてしまった体にするのが手っ取り早いだろうか。
正直に言えば、こんなに早くゲームのイベントが起きるのだと思うと気が重い。
少しくらいイベントの事なんて知らないふりをして過ごしたい気持ちだってあった。
けれど、ゲーム通りに事を進めないで、リチャード様の隣にいたとして私は心から笑えるだろうか。他の誰かの居場所を奪ってしまった事に罪悪感を覚えないで済むだろうか。
答えは否だ。
そもそも私が逃げ回ったところで、婚約の時みたいに強制力めいたものが働くかもしれない。
だとしたら、大人しくイベント通りに動くほかないだろう。
「さて、どこから行こうか」
リチャード様に手を取られ、馬車から降りる。
腐っても伯爵令嬢。中々の箱入りに育てられた私は、実は街に出るのはこれか初めての事だ。
街中にはどんなところがあるのかワクワクが止まらない。
「私、カフェに行ってみたいです」
そして何より外せないのはそれだった。美味しい紅茶とケーキを出すと評判の店があると侍女たちから聞いていた。
「そう言うと思って、休憩がてらカフェに寄るつもりだよ。まずは少し散策しようか?」
「はいっ」
さすがリチャード様。私の思惑なんてお見通しらしい。
「はぐれないように、手を放しちゃだめだよ」
きゅっと右手を握りこまれる。
「は、はい」
手を繋ぐ事はあってもこうやって握られるの初めてで、所謂恋人繋ぎという奴に顔が赤くなる。うっかり手汗とかかいたらどうしよう……。
それに、リチャード様を一人にするためにはどこかのタイミングでこの手を離さないといけない。
こんなにしっかり握られてしまっては、無事にできるだろうかと少しだけ心配になった。
「まぁ、素敵」
とある宝飾店の店先での事。私の眼はウィンドウ越しのそれにくぎ付けになっていた。
リチャード様の瞳の色と同じ青い石を使ったシンプルな意匠のネックレス。それがとても魅力的に見えたからだ。
「それが気に入ったの?」
よほどはしゃいだ声を出してしまったのか、リチャード様が横から私の目線の先を見てくる。
「ええ、」
はしゃぎ過ぎてちょっと子供っぽかっただろうか。恥ずかしくなってうつむいていると、手を引かれた。
「今日の記念にプレゼントするよ」
そう言って店の中に入るとリチャード様は手早く会計を済ませてしまっていた。
「付けてあげるからこっちを向いて」
「……はい」
リチャード様と向かい合って首筋に手が回る。こんなに傍に近付くのはこの間のアレ以来で。うっかり思い出してしまいそうな距離感にドキドキと心臓が高鳴る。
勿論こんな場所で何事がある訳でもなく、顔が赤くなってうつむいた私に対し、留め金を止め終えたリチャード様はすっと離れていく。
「うん。よく似合ってる」
「ありがとうございます。嬉しいです」
ただでさえそのデザインに目を惹かれていたというのに、それをリチャード様からプレゼントされたのだから余計に嬉しい。毎日身に着けて宝物みたいに大切すると決めた。
「お久しぶりです。リチャード様」
「久しぶりだね。エミィ」
にこにこと笑うリチャード様に特に変わった様子はない。
私といえば、久しぶりに会うリチャード様に緊張しっぱなしだ。
前回のアレを「なかったことにする」って決めたのはどこへやら。こうして顔を合わせるとどうしても思い出してどぎまぎとしてしまう。
「エミィはそういう格好もよく似合うね」
今日は街に出るという事もあっていつものドレスとは違い軽装で、私は青色のワンピースを身にまとっていた。
「ありがとうございます」
こういう時にそつなく褒めるところは本当に王子様だなと痛感する。
ちなみにリチャード様もシンプルなシャツに黒のスラックスという服装をしている。
特に飾り気のない服装なのによく似合っていて、新たな魅力にときめいてしまう。
と、そこで気が付いてしまった。
私はリチャード様のこの服装を知っている。こんなラフな服装で会う事はなかったはずなのに、だ。
ならばどうしてなんて、思案する必要もない。ゲーム中に見た事がある。それ以外には考えられなかった。
つまりは今日リチャード様とヒロインの出会いのイベントが起こるという訳だ。確かに学園の入学前に偶然出会っていたというエピソードがあった。
そこでリチャード様はヒロインの事をちょっとだけ気に掛けるのだ。
勿論そのイベントの際にエイミーが一緒に居るなんて事はあり得ない。ならばどこかでリチャード様を一人にする必要がある。
二人で出かけているのに別行動をとるのも何だかおかしいし、うっかりはぐれてしまった体にするのが手っ取り早いだろうか。
正直に言えば、こんなに早くゲームのイベントが起きるのだと思うと気が重い。
少しくらいイベントの事なんて知らないふりをして過ごしたい気持ちだってあった。
けれど、ゲーム通りに事を進めないで、リチャード様の隣にいたとして私は心から笑えるだろうか。他の誰かの居場所を奪ってしまった事に罪悪感を覚えないで済むだろうか。
答えは否だ。
そもそも私が逃げ回ったところで、婚約の時みたいに強制力めいたものが働くかもしれない。
だとしたら、大人しくイベント通りに動くほかないだろう。
「さて、どこから行こうか」
リチャード様に手を取られ、馬車から降りる。
腐っても伯爵令嬢。中々の箱入りに育てられた私は、実は街に出るのはこれか初めての事だ。
街中にはどんなところがあるのかワクワクが止まらない。
「私、カフェに行ってみたいです」
そして何より外せないのはそれだった。美味しい紅茶とケーキを出すと評判の店があると侍女たちから聞いていた。
「そう言うと思って、休憩がてらカフェに寄るつもりだよ。まずは少し散策しようか?」
「はいっ」
さすがリチャード様。私の思惑なんてお見通しらしい。
「はぐれないように、手を放しちゃだめだよ」
きゅっと右手を握りこまれる。
「は、はい」
手を繋ぐ事はあってもこうやって握られるの初めてで、所謂恋人繋ぎという奴に顔が赤くなる。うっかり手汗とかかいたらどうしよう……。
それに、リチャード様を一人にするためにはどこかのタイミングでこの手を離さないといけない。
こんなにしっかり握られてしまっては、無事にできるだろうかと少しだけ心配になった。
「まぁ、素敵」
とある宝飾店の店先での事。私の眼はウィンドウ越しのそれにくぎ付けになっていた。
リチャード様の瞳の色と同じ青い石を使ったシンプルな意匠のネックレス。それがとても魅力的に見えたからだ。
「それが気に入ったの?」
よほどはしゃいだ声を出してしまったのか、リチャード様が横から私の目線の先を見てくる。
「ええ、」
はしゃぎ過ぎてちょっと子供っぽかっただろうか。恥ずかしくなってうつむいていると、手を引かれた。
「今日の記念にプレゼントするよ」
そう言って店の中に入るとリチャード様は手早く会計を済ませてしまっていた。
「付けてあげるからこっちを向いて」
「……はい」
リチャード様と向かい合って首筋に手が回る。こんなに傍に近付くのはこの間のアレ以来で。うっかり思い出してしまいそうな距離感にドキドキと心臓が高鳴る。
勿論こんな場所で何事がある訳でもなく、顔が赤くなってうつむいた私に対し、留め金を止め終えたリチャード様はすっと離れていく。
「うん。よく似合ってる」
「ありがとうございます。嬉しいです」
ただでさえそのデザインに目を惹かれていたというのに、それをリチャード様からプレゼントされたのだから余計に嬉しい。毎日身に着けて宝物みたいに大切すると決めた。
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