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15歳 その9
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「エミィ?」
「ああ……ごめんなさい。リチャード様」
帰りの馬車の中。リチャード様に声をかけられるまで、私の意識は遠いところにあった。
先程のマリアの言葉がぐるぐると頭の中を渦巻いて離れなかったからだ。
「マリア嬢と何かあったのかな?」
「ええ……少し。でも、大したことじゃありませんの」
先程までの自分の様子を考えると、流石に何もなかったと誤魔化すことはできないだろう。
苦笑しながら告げると、リチャード様は伺うような表情でこちらを見てくる。
「何があったか聞いても?」
「それは女同士の秘密ですわ」
その発言はあながち嘘とも言い切れない。マリアがリチャード様のこと好きだなんてこと、張本人に告げる事なんてできる訳もない。
「……そう」
そう呟くとリチャード様は苦笑しながらこちらに向きなおる。
「でも、折角二人でいるんだ。今は目の前の私に集中してくれると嬉しいのだけれどね」
「申し訳ありません。つい……」
目の前のリチャード様を放置してマリアのことを考える。確かにずいぶん失礼な対応だった。
だけれど、リチャード様に向き直ったところで考えるのは同じことだ。
マリアはリチャード様を好きになった。リチャード様はどうなんだろうか。
もうマリアに恋心を抱いているのではないだろうか。そんな事が浮かんできて、唇を噛んだ。
「エミィ」
だけど、リチャード様はいつも通りに優しかった。
何も言えなくなった私の手を取って自分の胸元に引き寄せる。
「私は、ここにいるよ」
「リチャード、さま……」
そうだ、今目の前にはまぎれもなくリチャード様がいる。
いつもと変わらない笑顔で私に笑いかけてくれる。
ゲームの展開を知っているとはいえ、そんなリチャード様を疑うなんて、なんて失礼なんだろう。
けれど、抜けない棘のようなものがチクリと心を刺していた。
家に帰って一人になると、思わずため息が零れた。
「マリアがリチャード様を想ってる……」
本人から聞かされたその事実に私は動揺していた。
その内容から考えるに明らかにゲームのシナリオは後半まで進んでいる。
ここまで来たら、後はリチャード様は私との関係を清算してマリアに想いを告げるだけ。
そして二人が結ばれてハッピーエンド。めでたしめでたし。
エイミー・シュタットフェルトという当て馬は舞台を去るのみである。
ゲームであればそれでおしまい。だけれど、今の私にとってこれは現実だ。エイミーの人生はその後も続いていく。
リチャード様との婚約を解消して、その後の私はどうしたらいいんだろう。
フィル兄様は辺りはずっと家に居ればいいと言ってくれそうな気もするけれど、それに甘えるわけにもいかない。
新しい婚約者を見つけて結婚して……だめだ。まるで想像ができない。
前世の記憶が戻ってから、私はずっとリチャード様の婚約者だった。
いずれ別れの日が来るとは知っていたけれども、私はその立場に甘えていた。
リチャード様は優しかったし、隣に居ることができる日々は幸せだった。
でも、それもそろそろおしまい。
これからはリチャード様の隣にはマリアがいることになるんだろう。
辛いけれど、苦しいけれど……それでも、リチャード様の幸せの邪魔はしたくない。
前世からずっと大好きな人。だからこそ誰よりも幸せを祈っている。
それでもまだ、リチャード様から直接別れを告げられたわけじゃない。
それだけが私の中でぎりぎりの感情を保たせていた。
「ああ……ごめんなさい。リチャード様」
帰りの馬車の中。リチャード様に声をかけられるまで、私の意識は遠いところにあった。
先程のマリアの言葉がぐるぐると頭の中を渦巻いて離れなかったからだ。
「マリア嬢と何かあったのかな?」
「ええ……少し。でも、大したことじゃありませんの」
先程までの自分の様子を考えると、流石に何もなかったと誤魔化すことはできないだろう。
苦笑しながら告げると、リチャード様は伺うような表情でこちらを見てくる。
「何があったか聞いても?」
「それは女同士の秘密ですわ」
その発言はあながち嘘とも言い切れない。マリアがリチャード様のこと好きだなんてこと、張本人に告げる事なんてできる訳もない。
「……そう」
そう呟くとリチャード様は苦笑しながらこちらに向きなおる。
「でも、折角二人でいるんだ。今は目の前の私に集中してくれると嬉しいのだけれどね」
「申し訳ありません。つい……」
目の前のリチャード様を放置してマリアのことを考える。確かにずいぶん失礼な対応だった。
だけれど、リチャード様に向き直ったところで考えるのは同じことだ。
マリアはリチャード様を好きになった。リチャード様はどうなんだろうか。
もうマリアに恋心を抱いているのではないだろうか。そんな事が浮かんできて、唇を噛んだ。
「エミィ」
だけど、リチャード様はいつも通りに優しかった。
何も言えなくなった私の手を取って自分の胸元に引き寄せる。
「私は、ここにいるよ」
「リチャード、さま……」
そうだ、今目の前にはまぎれもなくリチャード様がいる。
いつもと変わらない笑顔で私に笑いかけてくれる。
ゲームの展開を知っているとはいえ、そんなリチャード様を疑うなんて、なんて失礼なんだろう。
けれど、抜けない棘のようなものがチクリと心を刺していた。
家に帰って一人になると、思わずため息が零れた。
「マリアがリチャード様を想ってる……」
本人から聞かされたその事実に私は動揺していた。
その内容から考えるに明らかにゲームのシナリオは後半まで進んでいる。
ここまで来たら、後はリチャード様は私との関係を清算してマリアに想いを告げるだけ。
そして二人が結ばれてハッピーエンド。めでたしめでたし。
エイミー・シュタットフェルトという当て馬は舞台を去るのみである。
ゲームであればそれでおしまい。だけれど、今の私にとってこれは現実だ。エイミーの人生はその後も続いていく。
リチャード様との婚約を解消して、その後の私はどうしたらいいんだろう。
フィル兄様は辺りはずっと家に居ればいいと言ってくれそうな気もするけれど、それに甘えるわけにもいかない。
新しい婚約者を見つけて結婚して……だめだ。まるで想像ができない。
前世の記憶が戻ってから、私はずっとリチャード様の婚約者だった。
いずれ別れの日が来るとは知っていたけれども、私はその立場に甘えていた。
リチャード様は優しかったし、隣に居ることができる日々は幸せだった。
でも、それもそろそろおしまい。
これからはリチャード様の隣にはマリアがいることになるんだろう。
辛いけれど、苦しいけれど……それでも、リチャード様の幸せの邪魔はしたくない。
前世からずっと大好きな人。だからこそ誰よりも幸せを祈っている。
それでもまだ、リチャード様から直接別れを告げられたわけじゃない。
それだけが私の中でぎりぎりの感情を保たせていた。
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