CoSMoS ∞ MaCHiNa ≠ ReBiRTH

L0K1

文字の大きさ
19 / 97
―邂逅編―

難しい話

しおりを挟む
「まず、事の発端から始めようか。――1999年12月31日、我々は、とある研究の最終段階へと移行していた。この研究は元々、アメリカの物理学者ハワード・クロイツ氏率いる研究チームが行っていたものを、日本政府が一時的に引き継いだ形で行われていた。しかし、我々には時間がなかった。この研究の要である『キューブ』と呼ばれる物体、それはアメリカ政府が月面から掘り起こした、いわゆる『アーティファクト』と呼ばれるもの。そして、キューブは20世紀の間だけ日本で研究が可能であり、21世紀を目途にアメリカ政府に返却しなければならない契約だった――」
 海風博士の表情に少し陰りが見えてきた。
「研究は大詰め、キューブを起動するための代替エネルギーを用意するために発電施設まで用意した。水素に圧縮空気を送り込み、燃焼させ、その爆発的なエネルギーによってタービンを回す。そうして、瞬間的だが起動に必要な電力を確保することができたのだ。その時の私は、キューブのことを何かの電子端末のようなものだと認識していて、異星人の貴重なデータを入手できるチャンスだと考えていたんだ」

 ――海風博士はその後の言葉を詰まらせていたが、しばらくして口を開いた。

「そして、我々は、政府や他の研究チームの反対意見を押し切ってキューブを起動した。それによって、どんな罪に問われることになろうとも、私は、この歴史的瞬間を逃すわけにはいかないと考えてしまった」
 なんということだ――
「そして、起動したキューブは異星人のデータをホログラムのような形で映像を出力していた。私の思った通りだ。そう、その時まではそう思っていたのだ。我々、研究チームは大喜びだったよ。だが、そこまでにしておくべきだった……これだけでも歴史的大発見であり、各国の業界から非常に高い評価も得られる。本来なら、そうするべきだったのだろう、我々は膨れ上がる好奇心に打ち負かされたのだよ」
 僕は息を呑んで次の言葉を待った――
「その視覚的に表現された映像、それを手で思い通りに操作できるさまは、まるで我々が思い描く未来の装置そのもの。心躍り、その日は深夜までキューブの動作確認を行っていたんだ。だが――これから話すことは君たちに理解できないかもしれない。それでも、聞いてほしい……」
 その言葉に、僕は言い知れぬ恐怖からほんの少し身震いした。
「我々は、初めて玩具を与えられた子供のようにキューブを本能的に操作していた。すると、予想外の出来事が起こった――幾多もの光の粒子、それが無限ともいえるほど多くの螺旋構造となって出力され始めた。その直後、キューブがフリーズしたんだ。我々はその状況に青ざめていたが、しばらくしてキューブは自動的に再起動したよ」
 キューブがフリーズして人々が青ざめるとは、まさに”ブルースクリーン”だろうか。

「再起動がかかったキューブのホログラムには、起動した場所から半径数十キロの縮図が映し出されていた。我々もシステムの破損がどれほど恐ろしいものかを心得ているつもりだ……その場で即座に実験を中断しようとした。だが、時すでに遅し、我々は恐ろしいものを目にすることになる。映し出されている縮図に生命体リストのようなものが出力されたのだ。そのリストに出力されていた生命体、おそらくは周辺の人間がリストアップされたのだろう……それが”何か”と結合を始めた。最初は私たちが破損させたデータを修復しているのだと思った――だが、その結果はこの通り、能力者を生み出してしまった。キューブで呼び出していたのは異星人のデータなんかじゃない。光の螺旋はこの宇宙を統括しているデータの束、おそらくは時空連続体のようなものなのだろ。その一部を意図せず改変してしまったのではないかという考えから、暫定的な答えを我々は導き出した」

 つまり、僕たちは宇宙のデータが破損した際、”何か”と結合した結果で想定外に生み出されたミュータントのようなもの、だというのだろうか。

「そして、キューブは結合結果のようなものを出力してから、しばらくして自動的にシャットダウンした。私たちは大きなあやまちを犯した。だが、キューブは恐ろしく危険だ。我々人類に扱えるような代物ではない。だから私は、キューブのコアを抜き取ったのだ――」

「キューブのコアとは?」
 僕は思わず聞いた。

「それは、この次元に存在することのない物質で、おそらく、どのような形をしているのかは定かではない。そもそも、異星人は我々の五感とはまた別の感覚機能を有していて、それを用いてキューブを操作していたのかもしれない。それでも、なぜかコアを我々が観測することで、我々の身近な何かの形として一時的に形成されるようなのだ。それが今、藍里が身に着けているブレスレットに埋め込まれた藍色の宝石――」

「お父さん、どういうこと?」
 藍里が困惑している。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...