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―邂逅編―
難しい話
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「まず、事の発端から始めようか。――1999年12月31日、我々は、とある研究の最終段階へと移行していた。この研究は元々、アメリカの物理学者ハワード・クロイツ氏率いる研究チームが行っていたものを、日本政府が一時的に引き継いだ形で行われていた。しかし、我々には時間がなかった。この研究の要である『キューブ』と呼ばれる物体、それはアメリカ政府が月面から掘り起こした、いわゆる『アーティファクト』と呼ばれるもの。そして、キューブは20世紀の間だけ日本で研究が可能であり、21世紀を目途にアメリカ政府に返却しなければならない契約だった――」
海風博士の表情に少し陰りが見えてきた。
「研究は大詰め、キューブを起動するための代替エネルギーを用意するために発電施設まで用意した。水素に圧縮空気を送り込み、燃焼させ、その爆発的なエネルギーによってタービンを回す。そうして、瞬間的だが起動に必要な電力を確保することができたのだ。その時の私は、キューブのことを何かの電子端末のようなものだと認識していて、異星人の貴重なデータを入手できるチャンスだと考えていたんだ」
――海風博士はその後の言葉を詰まらせていたが、しばらくして口を開いた。
「そして、我々は、政府や他の研究チームの反対意見を押し切ってキューブを起動した。それによって、どんな罪に問われることになろうとも、私は、この歴史的瞬間を逃すわけにはいかないと考えてしまった」
なんということだ――
「そして、起動したキューブは異星人のデータをホログラムのような形で映像を出力していた。私の思った通りだ。そう、その時まではそう思っていたのだ。我々、研究チームは大喜びだったよ。だが、そこまでにしておくべきだった……これだけでも歴史的大発見であり、各国の業界から非常に高い評価も得られる。本来なら、そうするべきだったのだろう、我々は膨れ上がる好奇心に打ち負かされたのだよ」
僕は息を呑んで次の言葉を待った――
「その視覚的に表現された映像、それを手で思い通りに操作できるさまは、まるで我々が思い描く未来の装置そのもの。心躍り、その日は深夜までキューブの動作確認を行っていたんだ。だが――これから話すことは君たちに理解できないかもしれない。それでも、聞いてほしい……」
その言葉に、僕は言い知れぬ恐怖からほんの少し身震いした。
「我々は、初めて玩具を与えられた子供のようにキューブを本能的に操作していた。すると、予想外の出来事が起こった――幾多もの光の粒子、それが無限ともいえるほど多くの螺旋構造となって出力され始めた。その直後、キューブがフリーズしたんだ。我々はその状況に青ざめていたが、しばらくしてキューブは自動的に再起動したよ」
キューブがフリーズして人々が青ざめるとは、まさに”ブルースクリーン”だろうか。
「再起動がかかったキューブのホログラムには、起動した場所から半径数十キロの縮図が映し出されていた。我々もシステムの破損がどれほど恐ろしいものかを心得ているつもりだ……その場で即座に実験を中断しようとした。だが、時すでに遅し、我々は恐ろしいものを目にすることになる。映し出されている縮図に生命体リストのようなものが出力されたのだ。そのリストに出力されていた生命体、おそらくは周辺の人間がリストアップされたのだろう……それが”何か”と結合を始めた。最初は私たちが破損させたデータを修復しているのだと思った――だが、その結果はこの通り、能力者を生み出してしまった。キューブで呼び出していたのは異星人のデータなんかじゃない。光の螺旋はこの宇宙を統括しているデータの束、おそらくは時空連続体のようなものなのだろ。その一部を意図せず改変してしまったのではないかという考えから、暫定的な答えを我々は導き出した」
つまり、僕たちは宇宙のデータが破損した際、”何か”と結合した結果で想定外に生み出されたミュータントのようなもの、だというのだろうか。
「そして、キューブは結合結果のようなものを出力してから、しばらくして自動的にシャットダウンした。私たちは大きなあやまちを犯した。だが、キューブは恐ろしく危険だ。我々人類に扱えるような代物ではない。だから私は、キューブのコアを抜き取ったのだ――」
「キューブのコアとは?」
僕は思わず聞いた。
「それは、この次元に存在することのない物質で、おそらく、どのような形をしているのかは定かではない。そもそも、異星人は我々の五感とはまた別の感覚機能を有していて、それを用いてキューブを操作していたのかもしれない。それでも、なぜかコアを我々が観測することで、我々の身近な何かの形として一時的に形成されるようなのだ。それが今、藍里が身に着けているブレスレットに埋め込まれた藍色の宝石――」
「お父さん、どういうこと?」
藍里が困惑している。
海風博士の表情に少し陰りが見えてきた。
「研究は大詰め、キューブを起動するための代替エネルギーを用意するために発電施設まで用意した。水素に圧縮空気を送り込み、燃焼させ、その爆発的なエネルギーによってタービンを回す。そうして、瞬間的だが起動に必要な電力を確保することができたのだ。その時の私は、キューブのことを何かの電子端末のようなものだと認識していて、異星人の貴重なデータを入手できるチャンスだと考えていたんだ」
――海風博士はその後の言葉を詰まらせていたが、しばらくして口を開いた。
「そして、我々は、政府や他の研究チームの反対意見を押し切ってキューブを起動した。それによって、どんな罪に問われることになろうとも、私は、この歴史的瞬間を逃すわけにはいかないと考えてしまった」
なんということだ――
「そして、起動したキューブは異星人のデータをホログラムのような形で映像を出力していた。私の思った通りだ。そう、その時まではそう思っていたのだ。我々、研究チームは大喜びだったよ。だが、そこまでにしておくべきだった……これだけでも歴史的大発見であり、各国の業界から非常に高い評価も得られる。本来なら、そうするべきだったのだろう、我々は膨れ上がる好奇心に打ち負かされたのだよ」
僕は息を呑んで次の言葉を待った――
「その視覚的に表現された映像、それを手で思い通りに操作できるさまは、まるで我々が思い描く未来の装置そのもの。心躍り、その日は深夜までキューブの動作確認を行っていたんだ。だが――これから話すことは君たちに理解できないかもしれない。それでも、聞いてほしい……」
その言葉に、僕は言い知れぬ恐怖からほんの少し身震いした。
「我々は、初めて玩具を与えられた子供のようにキューブを本能的に操作していた。すると、予想外の出来事が起こった――幾多もの光の粒子、それが無限ともいえるほど多くの螺旋構造となって出力され始めた。その直後、キューブがフリーズしたんだ。我々はその状況に青ざめていたが、しばらくしてキューブは自動的に再起動したよ」
キューブがフリーズして人々が青ざめるとは、まさに”ブルースクリーン”だろうか。
「再起動がかかったキューブのホログラムには、起動した場所から半径数十キロの縮図が映し出されていた。我々もシステムの破損がどれほど恐ろしいものかを心得ているつもりだ……その場で即座に実験を中断しようとした。だが、時すでに遅し、我々は恐ろしいものを目にすることになる。映し出されている縮図に生命体リストのようなものが出力されたのだ。そのリストに出力されていた生命体、おそらくは周辺の人間がリストアップされたのだろう……それが”何か”と結合を始めた。最初は私たちが破損させたデータを修復しているのだと思った――だが、その結果はこの通り、能力者を生み出してしまった。キューブで呼び出していたのは異星人のデータなんかじゃない。光の螺旋はこの宇宙を統括しているデータの束、おそらくは時空連続体のようなものなのだろ。その一部を意図せず改変してしまったのではないかという考えから、暫定的な答えを我々は導き出した」
つまり、僕たちは宇宙のデータが破損した際、”何か”と結合した結果で想定外に生み出されたミュータントのようなもの、だというのだろうか。
「そして、キューブは結合結果のようなものを出力してから、しばらくして自動的にシャットダウンした。私たちは大きなあやまちを犯した。だが、キューブは恐ろしく危険だ。我々人類に扱えるような代物ではない。だから私は、キューブのコアを抜き取ったのだ――」
「キューブのコアとは?」
僕は思わず聞いた。
「それは、この次元に存在することのない物質で、おそらく、どのような形をしているのかは定かではない。そもそも、異星人は我々の五感とはまた別の感覚機能を有していて、それを用いてキューブを操作していたのかもしれない。それでも、なぜかコアを我々が観測することで、我々の身近な何かの形として一時的に形成されるようなのだ。それが今、藍里が身に着けているブレスレットに埋め込まれた藍色の宝石――」
「お父さん、どういうこと?」
藍里が困惑している。
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