CoSMoS ∞ MaCHiNa ≠ ReBiRTH

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―煽動編―

黄泉比良坂

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 ――そうして、皆が僕の目覚めを歓迎してくれた後、先ほどと同じように、テーブル席の元いた場所へと、みんなまとまって戻っていった。藍里と、布津さんがその場に残る。
「貴方がさとりくん、ですね。三ケ田から話は聞いています。今回の一件、我々の不手際のせいでもあるので、深くお詫びします。カルト教団『黄泉比良坂』とラグナアスターに繋がりがあるという誤情報により、我々はラグナアスターを制圧し、そこにいたメンバーのほとんどを拘束していたのです。その波紋がここまで及んでしまったとは、本当に申し訳なく思います。ただ、黄泉比良坂に関しては、本当にスピード感が重要なのです、なぜなら――元日から7日目の夜に、世界は黄泉比良坂の手によって、ループする、という可能性が高いからです」
 布津さんが言い終えた時、僕と藍里は顔を見合わせた。藍里は、真実を告げるのだろうか?
「父から――海風 凪から、そう聞かされているのでしょうか?」
 藍里が布津さんに質問する。
「うん? そう、ですね。藍里さん、貴女のお父上、海風博士から、そう聞かされています」
 布津さんは答えた。ということは、海風博士も本当のことを知らない? いや、彼はきっと、それを知っていたとしても、誰かに真実を伝えようとはしないのだろう。藍里と同じように……。
「そうですか――」
 藍里は何かを言おうとして、そのまま口をつぐんだ。おそらく藍里も、海風博士が何かを隠しているのだと考えているのだろう。
「さて、本題です。我々、異能超人対策課は、明日、黄泉比良坂施設への潜入作戦を決行します。そこで、貴方たちにも、その作戦に協力していただきたいのです。これは任意であり、強制ではないのですが……万が一、貴方たちが協力を断った場合は、無暗に能力を行使したことに対する、それ相応の処罰をさせていただきます」
 布津さんは任意だというが、これはもう、ほぼ強制のようなものだろう。断れば何をされるか分かったものじゃない。
「わかりました、協力します」
 僕は答える。
「そうですか、良い返事を聞けて安心しました。潜入メンバーは、アンリ&マユから数名、ラグナアスターから数名、それと、さとりくん、藍里さん。危険を伴う作戦ではありますが、実績のある異能超人であれば、たとえ窮地に陥っても切り抜けられると考えています。それでは、作戦会議の続きとまいりましょう」
 そう言って、布津さんはテーブル席へと戻り、銀太、ヴァイス、ミィコの座っている席に、一緒に座った。
 
 作戦はこうだ――
 アンリ&マユ側は集会に紛れ込み、信者たちを一網打尽にする。その間に、ラグナアスター側が幹部と教祖を確保し、黄泉比良坂を壊滅に追い込む。もちろん、黄泉比良坂の拠点の出入り口は、異能超人対策課の特殊部隊と、アンリ&マユのメンバー数名、ラグナアスターのメンバー数名が、そこを封鎖するように配置される。
 施設の構造は、塔のようになっており、エントランスの広間で集会が行われ、選ばれし信者のみが、上層へと行くことができ、各階で幹部との謁見を経て、最上階の教祖に初めて御目通りすることができるというシステムだ。
 僕らが広間で信者たちを一網打尽にしている間に、ダンテとヴァイス率いるラグナアスター勢が幹部のいる各階を制圧し、最上階で教祖を確保するのだ。もし、教団メンバーが施設から逃げ出そうとしても、周りに配置されている特殊部隊と能力者のダブルバリケードによって、阻止されることだろう。
 アンリ&マユ側の潜入メンバーは、愛唯、白夜、イオ、そして、僕と藍里。
 愛唯は、先ほどの僕と銀太の戦闘に感化され、その能力が覚醒したらしい。今はまだ、右眼に漆黒と深紫が混ざり合ったような光が浮かび上がるのだとか。藍里的に言うなら、“キラメ”っている状態なのだろうか……? いや、その色的に、“キラ滅”っている? ――そういうわけで、愛唯が潜入メンバーに抜擢……ではなく、布津さんに無理を言って同行することになったようだ。愛唯も、みんなの力になりたいのだろう。彼女の気持ちはよく分かる。人懐っこくて、誰にでも分け隔てなく接する愛唯。
 だけど、そんな愛唯の素顔を知っているのは、僕だけ――

 ――喫茶アンリ&マユでの作戦会議が終わるころには、日が暮れて周囲は暗くなり始めていた。
「――以上です。先ほどお話しした通り、集会は明日の午前10時からです。遅くとも、午前9時頃には、この喫茶アンリ&マユに集合していてください。他に質問があればどうぞ」
 布津さんは、そう言って作戦会議を締めくくった。特に、他の人から質問などはなく、そのまま解散の流れになりそうだ。
「特に、なさそうですね」
 雪音さんがそう言うと――
「では、三ケ田、私たちは本部に戻りますよ」
「は、はい……」
 布津さんの言葉に、三ケ田さんはげんなりしていた。きっと、報告や、作戦の練り上げを遅くまでするのだろう。三ケ田さん、お疲れ様です……。
「では、我々はこれで失礼します」
 布津さんは軽く一礼した。
「さとりくん、藍ちゃん、明日は、よろしくお願いします。なんだか、君たちまで巻き込んでしまってすまない」
 三ケ田さんは少し申し訳なさそうにしていた。
「いえ、そんなことないです! それに、私たちの戦いでもあるのですから」
 藍里の言うとおりだ……これは、僕たちの戦いでもある。
「三ケ田さん、藍里の言うとおりです。これは、僕たちの戦いでもあるんです」
 僕は、三ケ田さんに伝えた。
「ふふ、さとりくん、みんな君が別人になってしまったんじゃないかって心配していたが、そんなことは全然ないようだな――さとりくん、よろしく頼む」
 そう言って、三ケ田さんはみんなに挨拶をしてから、布津さんと一緒に店の外へと出て行った。
「さ、お子様たちはそろそろお帰りなさい!」
 アンリさんは僕たちにそう言った。
「俺を子ども扱いするんじゃねえ!」
 銀太は反抗的だ。
「ダンテ! そういう態度は良くないよ! さ、私たちも帰りましょう」
 白羽 ミュウは銀太にそう言ってから、店のドアの方へと向かった。
「お、おう――クソッ、ヴァイスのやつ……。 さとり、また明日な! 頼りにしてるぜ」
 銀太は白羽 ミュウに弱いらしい。まあ、彼女、アイドルだしな……。銀太が手玉に取られていたとしても、なんら不思議ではない。
「皆さん、明日の作戦、よろしくお願いしますね。ミコちゃん、またね!」
 白羽 ミュウはみんなに挨拶をして、最後にミィコの手を握って別れの挨拶をしていた。
「ミュウちゃん、また明日!」
 ミィコは白羽 ミュウの虜だ。まあ、彼女、アイドルだしな……。

 そうして、みんな続々と自分たちの帰路についていった――
「あのね、キミのこと、“レプリカ“だって言ったけど、キミは紛れもなく、その”魂”は本物。だから……安心して。だって、キミは……私とは――違うもの」
 イオは、そう僕に呟いて、白夜とともに店を後にした。ほんの僅か、彼女が呟くとき、狐のお面をずらした彼女の素顔は――『舞岡 伊織』。透き通るような白い肌と、どこか儚げな表情……大晦日の夜から行方不明になっている、舞岡 伊織、その人だった。イオの発した意味深な言葉、僕の“魂”は本物――“レプリカ”である僕と、“オリジナル”であるもう一人の僕、その“魂“を二人で共有しているということだろう。イオの『私とは違う』という言葉の意味も気になった……。舞岡 伊織が二人いる? もしそうだとして、彼女の”魂“の在り方が僕とは違うのだろうか? 偶然――その言葉だけでは、到底片付けられない出来事ばかりだ。

 偶然も、重なり続ければ、それはもう必然である――めぐる因果は幾重にも折り重なり、それは、絶対的な運命へと繋がっていくのだろう。
 ――僕らの運命は、僕らで切り開く。
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