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とうとう三月が来て・・・
81話 なにか将来の夢が決まってる?
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「塔子さん。あの日、僕とずっと一緒にいたいって言ってくれたの覚えてる?」
先輩が言ってるのは、多分私が三谷先輩の話を聞いて逃げ出そうとしちゃった時のことだろう。
改めて尋ねられ、私は素直にうなずいた。
「はい」
「今更だけど、あの気持に変わりはない?」
「はいっ」
二度目の返事は力がこもってしまった。
変わりない、だけじゃなく。
多分今のほうがその気持は強いと思う。
先輩が卒業して、色々これから変わるであろうことは分かってる。
それでも、これまでみたいに、裕也先輩と当たり前に過ごせる時間を私は失いたくないのだ。
すると先輩が嬉しそうな笑顔を浮かべ、とんでもないことを言い出した。
「僕も塔子さんともっとずっと一緒にいたい。だから同じ大学に来て欲しい」
「無理ですよね?」
思わず即答してしまった。
だって先輩が行く大学は、私でもすぐに分かるほどレベルの高い有名校で。
そんな学校に、私なんかが入れるはずがない。
そう思ってきっぱり答えたのに、笑顔の先輩が私を見返して言い切る。
「塔子さんが目指してくれるなら問題ない」
力いっぱい、自信たっぷりに断言する先輩に、私のほうが面食らった。
「先輩、私の成績分かってますか? 本当に中の上なんですよ?」
「この前の中間試験、結果どうだった?」
私の疑問に先輩が質問で返してきた。
そう、先月はまたも中間試験に向けて先輩に色々教わってた。結果の順位は前回よりは上。だけど。
「確かに成績は上がってましたけど……でもまだクラスで上のほうっていう程度ですよ?」
「やっぱりね。それなら大丈夫。塔子さんは試験を受ける勉強をしてこなかっただけだから。まだ時間はたっぷりあるし、成績はまだまだ上がるよ」
またも当然というように先輩は言うけど、とても私には信じられない。先輩の買いかぶりが過ぎてる気がするんだけど。
「一体なにを根拠にそんなこと言えちゃうんですか?」
とは言え相手は頭のいい先輩だ。ワンチャン、もしかして、私とは全く違う根拠があるのかも?
そう思って聞いてみたのだが。
「最初に塔子さんのノート見せてもらった時にすぐ分かったよ。塔子さんは真面目なうえに理解力も充分あるんだって。図書委員の仕事もそうだけど、塔子さんに足りてなかったのは要領の良さかな。この半年、僕がノートの取り方と要点の掴み方をちょっと教えただけでそれだけ成績が上がるんだったら地力は充分ある」
全く思ってもいなかった方向に論理的な説明をされてしまい、困惑しちゃう。
自分にそんな地力があるなんて、普通ならとても過信出来ないのに、先輩に言われるともしかしたらってちょっと思ってしまう自分が怖い。
戸惑う私を楽しげに観察してた先輩が、口元を笑ませて付けたした。
「大体僕が君の家庭教師してるのに無理なんてあると思う?」
「?」
「塔子さんはもうかなり前からK大受験向きの参考書も使ってるから」
「え? えええ!?」
確かに、年末あたりから渡される参考書が増えてるなーとは思ってた。
見たこともない問題も増えてきてる気はしてたけど。
あれが、まさかの受験勉強だったとは。
一体いつからこんなこと計画してたんだろう……先輩が家庭教師を始めたのって結構前だったよね?
先輩の用意周到さに言葉が出てこない。
そんな私の様子に、先輩が今度は少し心配そうに尋ねてきた。
「それとも塔子さん、なにか将来の夢が決まってる?」
「まだ全然……」
大学は、なんとなく行きたいって思ってた。両親も姉同様、私にも好きな勉強を続けていいって言ってくれてたし。
ただ、「好きな勉強」といわれてもこれもわからない。
この一年、図書委員っていう肩書以外なにもないような私には「将来の夢」なんて全くなにもまだ思いつかないのだ。
「私、まだ夢って言えるようなものはなにもなくて。姉にも言われてたんですけど、大学に行けばやりたいことも見つかるかなって思ってます。理系よりは文系の授業のほうが楽しいから多分文系の大学でしょうか」
考えをまとめながら私が答えると、先輩が口元に悪戯な笑顔を浮かべて私を見る。
「本当に? 僕は塔子さんが書いてるお話結構すきなんだけど」
「へ?」
「ほら、あの獣人のお姫様が王子様に恋して獣化の呪いを探して旅するお話とか」
「!!」
「火星人と幽霊が労働組合作って同居してるボロアパートのお話とか」
「!!!!」
なんで、なんで知ってるのー!!!
誰にも見せたことのない、門外不出、絶対極秘の私が創り上げたお話の内容を、当たり前のようにつらつらと話す先輩に目が点になる。
いや、待って、確かに書いたけど!
書いてきたけど!
物書きノートは確かに他の教科書とかと一緒においてはあった。だけど!
「せ、せ、先輩いつの間に!」
「家庭教師をしに来てる時に君の机まわりの物はあらかた目を通したから」
思わず問いただした私に先輩がしれっとした顔で答えてきた!
そう言えば先輩、初めて部屋に来たときも色々見てたのを思い出す。だけど、
「そ、それは、」
「教える相手がどれくらいの実力があるか知りたかったから」
言い募ろうとする私に、まるで伝家の宝刀とばかりに言い切った。
「それにしたって」
普通、見るからに勉強と関係ない時点でそっと閉じてくれるべきものじゃないだろうか?
そこでふと気になった。
「まさか他にも見たりは……?」
「いくら付き合ってても、許可もなく勝手に女の子の部屋を捜索して回ったりはしてないよ」
そう言ってる割に、先輩の顔から悪戯っぽい目の輝きがぜんぜん消えてない。
「それは……許可があればするって聞こえます」
「その通りです」
真顔できっぱり返事した先輩に目が点になる。
「僕、塔子さん限定でもしかしたらストーカーの気もあるのかな」
すぐにとぼけた様子でそう付け足した先輩に、思わず笑いがこぼれ出た。
先輩がちょっと変態だ。
あ、でもよく考えたら先輩、最初っからSだって自己申告してたもんね。
でも困った。
私にはそんな先輩のことが、今までよりも可愛く見えてしまう。
どうやら私は、先輩のそんなおかしなところまで好きらしい。
わざとらしく真面目な顔を作ってこちらを見る先輩に、私の笑いは止まらなくなった。
先輩が言ってるのは、多分私が三谷先輩の話を聞いて逃げ出そうとしちゃった時のことだろう。
改めて尋ねられ、私は素直にうなずいた。
「はい」
「今更だけど、あの気持に変わりはない?」
「はいっ」
二度目の返事は力がこもってしまった。
変わりない、だけじゃなく。
多分今のほうがその気持は強いと思う。
先輩が卒業して、色々これから変わるであろうことは分かってる。
それでも、これまでみたいに、裕也先輩と当たり前に過ごせる時間を私は失いたくないのだ。
すると先輩が嬉しそうな笑顔を浮かべ、とんでもないことを言い出した。
「僕も塔子さんともっとずっと一緒にいたい。だから同じ大学に来て欲しい」
「無理ですよね?」
思わず即答してしまった。
だって先輩が行く大学は、私でもすぐに分かるほどレベルの高い有名校で。
そんな学校に、私なんかが入れるはずがない。
そう思ってきっぱり答えたのに、笑顔の先輩が私を見返して言い切る。
「塔子さんが目指してくれるなら問題ない」
力いっぱい、自信たっぷりに断言する先輩に、私のほうが面食らった。
「先輩、私の成績分かってますか? 本当に中の上なんですよ?」
「この前の中間試験、結果どうだった?」
私の疑問に先輩が質問で返してきた。
そう、先月はまたも中間試験に向けて先輩に色々教わってた。結果の順位は前回よりは上。だけど。
「確かに成績は上がってましたけど……でもまだクラスで上のほうっていう程度ですよ?」
「やっぱりね。それなら大丈夫。塔子さんは試験を受ける勉強をしてこなかっただけだから。まだ時間はたっぷりあるし、成績はまだまだ上がるよ」
またも当然というように先輩は言うけど、とても私には信じられない。先輩の買いかぶりが過ぎてる気がするんだけど。
「一体なにを根拠にそんなこと言えちゃうんですか?」
とは言え相手は頭のいい先輩だ。ワンチャン、もしかして、私とは全く違う根拠があるのかも?
そう思って聞いてみたのだが。
「最初に塔子さんのノート見せてもらった時にすぐ分かったよ。塔子さんは真面目なうえに理解力も充分あるんだって。図書委員の仕事もそうだけど、塔子さんに足りてなかったのは要領の良さかな。この半年、僕がノートの取り方と要点の掴み方をちょっと教えただけでそれだけ成績が上がるんだったら地力は充分ある」
全く思ってもいなかった方向に論理的な説明をされてしまい、困惑しちゃう。
自分にそんな地力があるなんて、普通ならとても過信出来ないのに、先輩に言われるともしかしたらってちょっと思ってしまう自分が怖い。
戸惑う私を楽しげに観察してた先輩が、口元を笑ませて付けたした。
「大体僕が君の家庭教師してるのに無理なんてあると思う?」
「?」
「塔子さんはもうかなり前からK大受験向きの参考書も使ってるから」
「え? えええ!?」
確かに、年末あたりから渡される参考書が増えてるなーとは思ってた。
見たこともない問題も増えてきてる気はしてたけど。
あれが、まさかの受験勉強だったとは。
一体いつからこんなこと計画してたんだろう……先輩が家庭教師を始めたのって結構前だったよね?
先輩の用意周到さに言葉が出てこない。
そんな私の様子に、先輩が今度は少し心配そうに尋ねてきた。
「それとも塔子さん、なにか将来の夢が決まってる?」
「まだ全然……」
大学は、なんとなく行きたいって思ってた。両親も姉同様、私にも好きな勉強を続けていいって言ってくれてたし。
ただ、「好きな勉強」といわれてもこれもわからない。
この一年、図書委員っていう肩書以外なにもないような私には「将来の夢」なんて全くなにもまだ思いつかないのだ。
「私、まだ夢って言えるようなものはなにもなくて。姉にも言われてたんですけど、大学に行けばやりたいことも見つかるかなって思ってます。理系よりは文系の授業のほうが楽しいから多分文系の大学でしょうか」
考えをまとめながら私が答えると、先輩が口元に悪戯な笑顔を浮かべて私を見る。
「本当に? 僕は塔子さんが書いてるお話結構すきなんだけど」
「へ?」
「ほら、あの獣人のお姫様が王子様に恋して獣化の呪いを探して旅するお話とか」
「!!」
「火星人と幽霊が労働組合作って同居してるボロアパートのお話とか」
「!!!!」
なんで、なんで知ってるのー!!!
誰にも見せたことのない、門外不出、絶対極秘の私が創り上げたお話の内容を、当たり前のようにつらつらと話す先輩に目が点になる。
いや、待って、確かに書いたけど!
書いてきたけど!
物書きノートは確かに他の教科書とかと一緒においてはあった。だけど!
「せ、せ、先輩いつの間に!」
「家庭教師をしに来てる時に君の机まわりの物はあらかた目を通したから」
思わず問いただした私に先輩がしれっとした顔で答えてきた!
そう言えば先輩、初めて部屋に来たときも色々見てたのを思い出す。だけど、
「そ、それは、」
「教える相手がどれくらいの実力があるか知りたかったから」
言い募ろうとする私に、まるで伝家の宝刀とばかりに言い切った。
「それにしたって」
普通、見るからに勉強と関係ない時点でそっと閉じてくれるべきものじゃないだろうか?
そこでふと気になった。
「まさか他にも見たりは……?」
「いくら付き合ってても、許可もなく勝手に女の子の部屋を捜索して回ったりはしてないよ」
そう言ってる割に、先輩の顔から悪戯っぽい目の輝きがぜんぜん消えてない。
「それは……許可があればするって聞こえます」
「その通りです」
真顔できっぱり返事した先輩に目が点になる。
「僕、塔子さん限定でもしかしたらストーカーの気もあるのかな」
すぐにとぼけた様子でそう付け足した先輩に、思わず笑いがこぼれ出た。
先輩がちょっと変態だ。
あ、でもよく考えたら先輩、最初っからSだって自己申告してたもんね。
でも困った。
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