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自分の性癖を見破られ、あまつさえユスティアに心を奪われてしまったユージンは、王子然とした仮面をあっさり外し、砕けた口調で問いかけた。
「で、俺にどうしろと?」
突然態度が変わったにもかかわらず、ユスティアもエドワルドも驚く事はなかった。
エドワルドは変わらず無表情だが、ユスティアの浮かべる笑みも張り付けたようなものではなく、先程見せた柔らかなものでお互い壁が取り払われた事を確信する。
ユージン的には、自分とユスティアが結婚し、ユスティアがエドワルドをずっと恋い慕う様を傍で眺めているのがベストなのだが、それはまず無理だとわかる。
どう見てもエドワルドはユスティアを溺愛しているから。
妹と結婚し、自分を見ていろというわけじゃないよな?
多少、お互いの認識の違いはあるものの、あの色ボケで有名な妹との結婚は、流石に考えてしまう。
そんなユージンの考えている事など気付きもしない様子で、ユスティアは提案をした。
「ユージン様には妹と結婚していただいて、この侯爵家の舵取りをしていただきたいのです」
つまりはフライアン侯爵家の事実上の権力者になれという事。当主という名は与えられないが、所謂、陰の当主のようなものだ。
「伯爵家の次男である俺にすれば、侯爵家に婿入りなんてありがたい話ではあるが・・・こう言っては何だけど、ライラ嬢を御せる自信はないな」
「ふふふ・・・そうね。多分、誰にもできないと思うわ。でもね、ユージン様には楽しむ事はできると思うの」
「楽しむ?」
「えぇ。妹のライラは他人の物を奪うのが大好きなの。奪ってしまえば興味もうせて、すぐに捨てちゃうんだけど」
物でも人でも同じ扱いで、とにかく問題を起こしまくり、頭の痛い事に学園では重大な問題を起こした生徒が入ると言われている、独房部屋の常連だったらしい。
「彼女、私の持っている物に対し、異常なまでの執着を見せてくるの」
それは幼い頃から変わらず、今なお健在だ。
「それでね、ライラってばエドワルドに一目惚れしちゃったのよ。でも、彼とは絶対に結ばれる事は無いわ」
口外はしない事を約束させ、フライアン侯爵家とライト公爵家の関係を話した。
二人の婚約の事も公にはされていない為、互いの家には釣書きが沢山送られてくる。
だが、ライラを片付けるまでは公表はできない。未来の公爵夫人の安全を考えて。
「・・・つまりは、ライラ嬢は俺と結婚はするものの、小公爵に執着し続けると?」
そして俺は、俺以外の男を想い焦がれ嫉妬する彼女に満足し、手の届かぬユスティア嬢に恋焦がれると・・・・
自分に気がある事など全く知らないユスティアは、大きく頷いた。
「ユージン様は令嬢たちの憧れの王子様だから、きっとすぐに靡くと思うわ。私と親しくしていれば、奪おうと躍起になってくるはず」
「でも、そう上手くいくか・・・」
「ふふふ・・・、間もなくライラがここに突撃してくるから、彼女をよく見ていて」
そう言い終わると同時に、何やら屋敷の方が騒がしくなってきた。
侍女が慌てたようにやってきて「ライラ様が・・・!」と要件も言い終わる前に「お姉さま!」と甲高い耳障りな声がしたのだった。
今日のお茶会は最低だったわ!
馬車に揺られながら、先程まで参加していたお茶会を思い浮かべ、醜く顔を歪ませるライラ。
学園から帰ってきた当初は、その手のお誘いが結構あった。
ユスティアには沢山の招待状が送られてくるが、ライラにも彼女と同じくらい招待状が送られてきていたのだ。
ライラはほぼ、全てのお茶会に参加しているのにも関わらず、ユスティアは厳選し数件の茶会にしか参加していない。
にもかかわらず、山の様に招待状が送られてくるのに、ライラに対しては目に見えて減ってきている。
というのも、学園で仕出かしてきた事をそのままお茶会でもやってしまうのだから、誰も誘わなくなるのは当たり前。
学園から戻ってきてさほど時間は経っていないはずなのに、今では珍獣枠での招待状しか届かない。
だがライラには、そんな意図にすらも気づかず出かけていくのだから、楽しいわけがないのだ。
「あー!頭にくるっ!ちょっと男の手を握っただけなのに、あそこまで怒るかしら?
あぁ・・・そういえば、招待した家の令嬢の婚約者だったっけ?キーキー怒ってばかりだから婚約者も鬱陶しいがるのよ。
それを私の所為にして・・・本当に失礼しちゃうわ!」
屋敷に着くまで延々と文句を垂れていたが、未だに言い足りないような顔をし馬車を降りると何やら使用人達が浮足立っているのが目に留まる。
「ちょっと、何かあったの?」
イラつくように近くに居た使用人に声を掛けると、姉に客が来ているのだという。
誰なのか聞けば、あの微笑みの貴公子とも呼ばれているユージン・コックスと、一目見たあの時から心奪われ焦がれてやまないエドワルド・ライトだというのだから黙っていられない。
彼等の美しさは有名で、、ユージンを太陽、エドワルドを月に巷では例えられていた。
そう、中身はどうであれ二人は容姿にとても恵まれているのだ。
ユージンは伯爵家次男の為、継ぐ家はないがその優秀さは長兄以上と言われており、婿入りを求める貴族令嬢達の優良物件としても大人気。
エドワルドに関しては次期公爵。不愛想な事を差し引いてもお釣りがくるくらいの、美貌と地位を持っている。
ライラは、先程までの不機嫌さなどどこ吹く風。
なにがなんでもお近づきにならないといけないと、意気揚々と「お姉さま!」と叫びながらドレスの裾をたくし上げ走ったのだった。
「で、俺にどうしろと?」
突然態度が変わったにもかかわらず、ユスティアもエドワルドも驚く事はなかった。
エドワルドは変わらず無表情だが、ユスティアの浮かべる笑みも張り付けたようなものではなく、先程見せた柔らかなものでお互い壁が取り払われた事を確信する。
ユージン的には、自分とユスティアが結婚し、ユスティアがエドワルドをずっと恋い慕う様を傍で眺めているのがベストなのだが、それはまず無理だとわかる。
どう見てもエドワルドはユスティアを溺愛しているから。
妹と結婚し、自分を見ていろというわけじゃないよな?
多少、お互いの認識の違いはあるものの、あの色ボケで有名な妹との結婚は、流石に考えてしまう。
そんなユージンの考えている事など気付きもしない様子で、ユスティアは提案をした。
「ユージン様には妹と結婚していただいて、この侯爵家の舵取りをしていただきたいのです」
つまりはフライアン侯爵家の事実上の権力者になれという事。当主という名は与えられないが、所謂、陰の当主のようなものだ。
「伯爵家の次男である俺にすれば、侯爵家に婿入りなんてありがたい話ではあるが・・・こう言っては何だけど、ライラ嬢を御せる自信はないな」
「ふふふ・・・そうね。多分、誰にもできないと思うわ。でもね、ユージン様には楽しむ事はできると思うの」
「楽しむ?」
「えぇ。妹のライラは他人の物を奪うのが大好きなの。奪ってしまえば興味もうせて、すぐに捨てちゃうんだけど」
物でも人でも同じ扱いで、とにかく問題を起こしまくり、頭の痛い事に学園では重大な問題を起こした生徒が入ると言われている、独房部屋の常連だったらしい。
「彼女、私の持っている物に対し、異常なまでの執着を見せてくるの」
それは幼い頃から変わらず、今なお健在だ。
「それでね、ライラってばエドワルドに一目惚れしちゃったのよ。でも、彼とは絶対に結ばれる事は無いわ」
口外はしない事を約束させ、フライアン侯爵家とライト公爵家の関係を話した。
二人の婚約の事も公にはされていない為、互いの家には釣書きが沢山送られてくる。
だが、ライラを片付けるまでは公表はできない。未来の公爵夫人の安全を考えて。
「・・・つまりは、ライラ嬢は俺と結婚はするものの、小公爵に執着し続けると?」
そして俺は、俺以外の男を想い焦がれ嫉妬する彼女に満足し、手の届かぬユスティア嬢に恋焦がれると・・・・
自分に気がある事など全く知らないユスティアは、大きく頷いた。
「ユージン様は令嬢たちの憧れの王子様だから、きっとすぐに靡くと思うわ。私と親しくしていれば、奪おうと躍起になってくるはず」
「でも、そう上手くいくか・・・」
「ふふふ・・・、間もなくライラがここに突撃してくるから、彼女をよく見ていて」
そう言い終わると同時に、何やら屋敷の方が騒がしくなってきた。
侍女が慌てたようにやってきて「ライラ様が・・・!」と要件も言い終わる前に「お姉さま!」と甲高い耳障りな声がしたのだった。
今日のお茶会は最低だったわ!
馬車に揺られながら、先程まで参加していたお茶会を思い浮かべ、醜く顔を歪ませるライラ。
学園から帰ってきた当初は、その手のお誘いが結構あった。
ユスティアには沢山の招待状が送られてくるが、ライラにも彼女と同じくらい招待状が送られてきていたのだ。
ライラはほぼ、全てのお茶会に参加しているのにも関わらず、ユスティアは厳選し数件の茶会にしか参加していない。
にもかかわらず、山の様に招待状が送られてくるのに、ライラに対しては目に見えて減ってきている。
というのも、学園で仕出かしてきた事をそのままお茶会でもやってしまうのだから、誰も誘わなくなるのは当たり前。
学園から戻ってきてさほど時間は経っていないはずなのに、今では珍獣枠での招待状しか届かない。
だがライラには、そんな意図にすらも気づかず出かけていくのだから、楽しいわけがないのだ。
「あー!頭にくるっ!ちょっと男の手を握っただけなのに、あそこまで怒るかしら?
あぁ・・・そういえば、招待した家の令嬢の婚約者だったっけ?キーキー怒ってばかりだから婚約者も鬱陶しいがるのよ。
それを私の所為にして・・・本当に失礼しちゃうわ!」
屋敷に着くまで延々と文句を垂れていたが、未だに言い足りないような顔をし馬車を降りると何やら使用人達が浮足立っているのが目に留まる。
「ちょっと、何かあったの?」
イラつくように近くに居た使用人に声を掛けると、姉に客が来ているのだという。
誰なのか聞けば、あの微笑みの貴公子とも呼ばれているユージン・コックスと、一目見たあの時から心奪われ焦がれてやまないエドワルド・ライトだというのだから黙っていられない。
彼等の美しさは有名で、、ユージンを太陽、エドワルドを月に巷では例えられていた。
そう、中身はどうであれ二人は容姿にとても恵まれているのだ。
ユージンは伯爵家次男の為、継ぐ家はないがその優秀さは長兄以上と言われており、婿入りを求める貴族令嬢達の優良物件としても大人気。
エドワルドに関しては次期公爵。不愛想な事を差し引いてもお釣りがくるくらいの、美貌と地位を持っている。
ライラは、先程までの不機嫌さなどどこ吹く風。
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