それぞれの愛のカタチ

ひとみん

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色とりどりのステンドグラスから光が降り注ぎ、荘厳な大聖堂の空気が神聖なものへと変化していく。
粛々と進んでいく儀式の中、ユスティアは中央に飾られている女神像を見つめながら、祖母の事を思い浮かべていた。
物心ついた時から母だと思っていた人は、祖母だった。
それでも落胆はしなかったし、実際の両親に愛されていなくても絶望はしなかった。
今思っても不思議なくらい、その時から祖父母の許に居られて幸せだとしか感じなかったのだ。
実は生まれてくる年代を間違えてしまったのではと、真剣に考えた事も。
祖父母の子として生まれてくるはずが、その子供の子として生まれたのだから。
たとえ間違っても、やはり育ててくれたのは祖父母。
どんな運命でも、きっと二人に出会っていたのかもしれない。
そして彼等は、愛する人との縁まで繋いでくれていた。

ユスティアはそっと隣の夫の美しい顔を見上げる。
いつも素敵だが、今日は一段とかっこよくて凛々しい。
国は違えど彼は数多の女性を虜にする。
この国に来てからも、ユスティアに挨拶する体を装い、女性達はエドワルドへと秋波を送っていた。

きっとこれからも、こんな風に心配しないといけないのでしょうね。

ユスティアの視線に気づき、エドワルドは嬉しそうに表情を緩めた。

あぁ・・・私だけに見せるこの顔が好き。抱きしめてくれる、温かい腕が好き。
愛情を煮詰めたような甘い口づけが好き。
―――・・・だから、絶対にルドは誰にも渡さない。

そんな事を思っているなど知る由もないエドワルドは、ユスティアの微笑みに目を奪われる。
そして、ユスティアと全く同じ事、いや、それ以上の事をエドワルドが思っていたなど、彼女もまた知ることは無い。

そんな二人に、厄介な問題が降りかかる。
戴冠式が終わり次第帰国するはずだったのに、王太子や王女達に引き留められ帰国予定を三日も過ぎてしまったのだ。
彼等の目的は、あからさまにユスティアとエドワルド。
二人を引き裂く様な日程を組み込み、それぞれがエスコート。
これにはエドワルドが切れる前にユスティアが切れた。
そして、前国王である大叔父に殴り込みをかけたのだ。

「大叔父様!いったいこれはどういう事!?この国には私を不幸にするために、呼んだの!?」
「ユスティア・・・どうしたんだい?綺麗な顔が台無しだよ」
国王を引退しても、まだ何かと忙しい大叔父を捕まえ、憤懣やるかたない様子で食って掛かっていった。
「王太子と王女よ!私とエドワルドを別れさせたい訳?これは立派な外交問題よ!」
「あぁ・・・あいつらまだ諦めてなかったのか・・・・困ったものだ」
「困っているのはこちらよ!すぐに帰るから、私の国の従者を返して!」
「従者?」
「そうよ、どこかに監禁しているのよ!もし彼等に何かあったら、ただじゃすまないから・・・・」
「・・・・戦争でも起こす気かい?」
「まさか。そんな愚かな事はしないわ。武力だけが戦いじゃないもの。経済戦争よ。おばあ様の助言でね」
「・・・・姉上が?」
「えぇ。一つの国だけに頼るのは危ないと。この国は大きくて戦いを挑んでも負けがみえている。ならば、経済で対抗しなさいと。
他国と同盟を組み、技術協力という形で互いの特産の技術交換しているのよ。我々同盟国はこれまでこの国からの輸入に頼っていたけれど、今ではいつでもそれを止める事は可能だから。
この国で土地柄、麦がなかなか育たないわよね。我が国と同盟国は良質な麦を輸出しているわ。お得意様は確か・・・この国だったかしら」
「・・・・わしを、この国を脅す気か?」
「そうね、必要ならば。なんせ私の夫はお義父様と一緒に外交を担っているのだから」
引退したとはいえ、国王の威厳は健在で、他者が見ればきっと竦み上がってしまうほどの眼力。
だが、ユスティアも負けてはいない。
フレデリカ直伝の笑みを張り付け、迎え撃つ。

睨み合いは長く感じたが、実はそれほどでもない。
先に白旗を上げたのは、大叔父だった。
「負けた。負けたよ」
そう言って傍にいた執事に、何やら指示を出した。
「彼等はすぐに解放されるだろう。すまなかったね」
「まったくだわ。明日の朝にはここを出るから。見送りは結構よ」
「わかった、わかった。全く、姉上にそっくりだ」
「まぁ、最高の誉め言葉だわ。祖父母は私の両親ですもの」
そう言って、ドレスをつまみ綺麗なお辞儀をした。
そしてそのまま部屋を後にしたのだった。
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