18 / 33
第18話
しおりを挟む
「はあ、結構疲れたわね……」
「ああ、そうだな……」
流石にお金の入ったトランクを路地に置きっぱなしは出来ないので、私達は一人一つずつトランクを持って移動していた。
更にアンダーソン家は少し街から離れている為中々に移動に時間がかかった。
私たちがアンダーソンの屋敷に着いた頃には、もう夕方で辺りも暗くなり始めていた。
「でもアポなしで本当に大丈夫なのか?」
「まあ、こんなボロボロになってる女性をすぐ様門前払いは出来ないと思うけど」
私はそう胸を張った。
「いや、そこ自信満々に言うものじゃないだろ」
そうアンドリューが突っ込む。
屋敷に着くと、門番が私たちを見てギョッとする。
「どうも。レイラ・ブラウンです。
こんなみすぼらしい格好で御免なさい。
ウィリアム・アンダーソン様と面会したいのですが……」
私はそう尋ねると、門番はうーんと考え始める。
「あの、前もって事前にお知らせされてませんよね?」
「ええ、御免なさい。ただ、少し緊急事態というか、どうしてもウィリアム様にお願いしたい事がありまして、どうしても駄目でしょうか?」
私はそう柄にもなくうるうると瞳を潤ませる。
門番は困った様な顔をして、確認致します。と中へ入っていった。
「本当にこんなんで大丈夫なのか?」
そう後ろからこっそりアンドリューが尋ねてくる。
「まあ、何とかするしかないわね」
私はそう答えた。
暫くして、門番が再び戻ってきた。
「ウィリアム様からお許しが出ましたので、どうぞこちらへ」
そう門を開かれ、中から案内役の執事がやって来た。
やはり私たちの姿に少し驚く。
「レイラ・ブラウン様、どうぞこちらへ……
それと」
そうチラリと執事はアンドリューの方を見やる。
「彼は私の事を途中で助けてくれた恩人です。一緒ではまずいでしょうか?」
「……いえ、ではこちらへ」
そう執事は怪訝な表情をしつつ案内してくれた。
奥でウィリアムが腰掛けていた。
やはり私たちの姿を見て少しびっくりする。
「是非腰掛けて下さい」
そう執事は椅子に座る様うながす。
「いいえ、勝手に押しかけた身ですし、大丈夫です」
私はそれを断った。
隣でアンドリューも席には座らずに立っている。
「……やあ、レイラお嬢様。
あれから随分と変わられましたね」
そうウィリアムは声をかける。
あれからと言うのはあのパーティーの事だろう。
思い出しただけで恥ずかしい。
「その節は誠に申し訳ございませんでした」
私はそう頭を下げる。
後ろでアンドリューは少し不思議そうに見ていた。
「いや、謝らなくても大丈夫です。実は私も君と話がしたいと思っていたので」
「え?」
ウィリアムの方から話したい事とは何だろうか?
やはりユーリの事か?
「実は、つい先程ユーリお嬢様から婚約を破棄して欲しいと言われまして。
恐らく貴方が家を追放されて代わりにダニエル伯爵と婚約する為かと思ったのですが」
やはり私の読み通り事が進んでいる様だ。
「ええ、恐らくその通りだと思われます。
私もあの後すぐ家を出たのではっきりとは分かりませんが」
「それに、君のあの演説を聞いて、確信しました。
やはりユーリお嬢様が元凶なのでしょう?」
驚いた。ユーリの悪事を見破る人が居るなんて。
「ああ、そうだな……」
流石にお金の入ったトランクを路地に置きっぱなしは出来ないので、私達は一人一つずつトランクを持って移動していた。
更にアンダーソン家は少し街から離れている為中々に移動に時間がかかった。
私たちがアンダーソンの屋敷に着いた頃には、もう夕方で辺りも暗くなり始めていた。
「でもアポなしで本当に大丈夫なのか?」
「まあ、こんなボロボロになってる女性をすぐ様門前払いは出来ないと思うけど」
私はそう胸を張った。
「いや、そこ自信満々に言うものじゃないだろ」
そうアンドリューが突っ込む。
屋敷に着くと、門番が私たちを見てギョッとする。
「どうも。レイラ・ブラウンです。
こんなみすぼらしい格好で御免なさい。
ウィリアム・アンダーソン様と面会したいのですが……」
私はそう尋ねると、門番はうーんと考え始める。
「あの、前もって事前にお知らせされてませんよね?」
「ええ、御免なさい。ただ、少し緊急事態というか、どうしてもウィリアム様にお願いしたい事がありまして、どうしても駄目でしょうか?」
私はそう柄にもなくうるうると瞳を潤ませる。
門番は困った様な顔をして、確認致します。と中へ入っていった。
「本当にこんなんで大丈夫なのか?」
そう後ろからこっそりアンドリューが尋ねてくる。
「まあ、何とかするしかないわね」
私はそう答えた。
暫くして、門番が再び戻ってきた。
「ウィリアム様からお許しが出ましたので、どうぞこちらへ」
そう門を開かれ、中から案内役の執事がやって来た。
やはり私たちの姿に少し驚く。
「レイラ・ブラウン様、どうぞこちらへ……
それと」
そうチラリと執事はアンドリューの方を見やる。
「彼は私の事を途中で助けてくれた恩人です。一緒ではまずいでしょうか?」
「……いえ、ではこちらへ」
そう執事は怪訝な表情をしつつ案内してくれた。
奥でウィリアムが腰掛けていた。
やはり私たちの姿を見て少しびっくりする。
「是非腰掛けて下さい」
そう執事は椅子に座る様うながす。
「いいえ、勝手に押しかけた身ですし、大丈夫です」
私はそれを断った。
隣でアンドリューも席には座らずに立っている。
「……やあ、レイラお嬢様。
あれから随分と変わられましたね」
そうウィリアムは声をかける。
あれからと言うのはあのパーティーの事だろう。
思い出しただけで恥ずかしい。
「その節は誠に申し訳ございませんでした」
私はそう頭を下げる。
後ろでアンドリューは少し不思議そうに見ていた。
「いや、謝らなくても大丈夫です。実は私も君と話がしたいと思っていたので」
「え?」
ウィリアムの方から話したい事とは何だろうか?
やはりユーリの事か?
「実は、つい先程ユーリお嬢様から婚約を破棄して欲しいと言われまして。
恐らく貴方が家を追放されて代わりにダニエル伯爵と婚約する為かと思ったのですが」
やはり私の読み通り事が進んでいる様だ。
「ええ、恐らくその通りだと思われます。
私もあの後すぐ家を出たのではっきりとは分かりませんが」
「それに、君のあの演説を聞いて、確信しました。
やはりユーリお嬢様が元凶なのでしょう?」
驚いた。ユーリの悪事を見破る人が居るなんて。
73
あなたにおすすめの小説
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。
さくら
恋愛
私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。
そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。
王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。
私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。
――でも、それは間違いだった。
辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。
やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。
王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。
無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。
裏切りから始まる癒しの恋。
厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる