84 / 88
崩壊前夜
修羅場×修羅場×修羅場
しおりを挟む
「な……」
目撃証言はあったし、ここにいるとは知っていた。
それでも、実際にあいつの姿を見た瞬間全身が緊張してしまう。
頭の中が真っ白になってしまうのだ。
「ん?」とこちらの気配に気付いたようだ、振り返ったヒズミと思いっきり視線がぶつかった。
瞬間、やつは口を大きく開け嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「……お、キョウ! キョウじゃん!」
「……っ!」
最悪だ。
逃げなければ、と思うのに、足が竦みそうになる。
「お前は……」
駆け寄ってくるヒズミ、なっちゃんも気付いたようだ。
そうだ、なっちゃんにはヒズミとの最悪なところを見られたんだった。
本当に、タイミングが悪い。なんてものではない。
そんななっちゃんが目に入ってないのか、一目散に俺の前までやってきたヒズミはそのまま俺の手をぎゅっと握る。
熱い掌に包み込むように挟まれる右手に、自然と厭な汗が流れた。ドクドクと脈打つ心臓。
喉元まで吐き気がこみ上げる。それなのに、ヒズミから目を逸らすことも忘れていた。
「良かった、ずっと心配してたんだよ。会いに行きたかったけど、由良のやつに止められてさあ」
やつがなにを言っているのか、右から左へと言葉は抜けていく。
「なあ、キョウ」と、するりとその指が絡みつきそうになったときだった。
乾いた音とともに、ヒズミの手が振り払われた。
「……っ」
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
固まる俺の肩を掴んだなっちゃんは、そのままヒズミから引き離すように俺とヒズミの間に割って入るのだ。
「あ……?」
「なっちゃ……」
「ああ……お前、いたのか」
なっちゃんが助けてくれた。
その事実を理解した次の瞬間、やってくるのは嬉しさや喜びや安堵よりも、ヒズミの目がなっちゃんに向けられたことに対する恐怖だった。
「またテメェ絡みかよ、転校生」
うんざりしたような、苛ついた口調で吐き捨てるなっちゃん。
ああ、だめだ。そんな煽るような真似。この単細胞馬鹿には死ぬほど効くのだ。
そして案の定、なっちゃんの言葉を受けてヒズミの目の色が変わるのを見てしまう。
ヒズミの身体の向きが変わるのを見て、咄嗟に俺はヒズミの腕にしがみついた。
「待って、ヒズミ……」
なっちゃんに手を出さないでくれ。
そう声を絞り出すことは敵わなかった。
なんで止めるのだ、という顔をしたなっちゃん。
そしてこちらを見下ろしたヒズミはそのまま俺の顎を掴む。
「ひ……っ、ん……ッ!」
「な……」
一瞬、自分がなにされてるのかもわからなかった。
暗くなった視界の中、重ねられる唇の薄い粘膜越しに伝わってくるヒズミの熱。
ぎょっとするなっちゃんも無視して、そのまま躊躇なく舌を挿れて俺の舌に絡めてくるヒズミに凍りつく。
「ッ、ん゛、う……ッ」
やめろ、と覆いかぶさってくるようにキスしてくるヒズミの胸を叩くが、びくともしない。
それどころか、手首を掴まれ、更に深くヒズミの舌に咥内を荒らされるのだ。
ほんの数秒の間だっただろうが、俺にとっては地獄のような時間だった。
濡れた音が響く咥内。耐えられず、ヒズミの舌に思いっきり歯を立てれば、口の中いっぱいにヒズミの血の味が広がった。
代わりに俺の舌を吸い上げたヒズミは、そのままぢゅぽんと音を立てて唇を離す。
「心配しなくても、俺は大丈夫だからな。京」
「……っ」
自分の血で赤く染まった唇を舌で舐め取り、ヒズミは笑った。
そのときだ、背後のかいちょーの部屋の扉が開く。
そして、かいちょーの部屋から現れた少年には見覚えがあった。
確か、かいちょーの親衛隊の子……花崗だ。確か純が呼ばれたっていうのもこの子だったはずだ。
そして、花崗は部屋の前で揉めていた俺達に驚くわけでもなく、寧ろ呆れたような顔をするのだ。
「……ちょっと。急にいなくなったと思ったら、なに勝手なことしてんの?」
その言葉はそれは明らかにヒズミに向けられたものだった。
かいちょーとヒズミの関係を考えれば、別に知り合いでもおかしくはない。
それでも、この状況でその第一声は俺にでもおかしいって分かった。
目撃証言はあったし、ここにいるとは知っていた。
それでも、実際にあいつの姿を見た瞬間全身が緊張してしまう。
頭の中が真っ白になってしまうのだ。
「ん?」とこちらの気配に気付いたようだ、振り返ったヒズミと思いっきり視線がぶつかった。
瞬間、やつは口を大きく開け嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「……お、キョウ! キョウじゃん!」
「……っ!」
最悪だ。
逃げなければ、と思うのに、足が竦みそうになる。
「お前は……」
駆け寄ってくるヒズミ、なっちゃんも気付いたようだ。
そうだ、なっちゃんにはヒズミとの最悪なところを見られたんだった。
本当に、タイミングが悪い。なんてものではない。
そんななっちゃんが目に入ってないのか、一目散に俺の前までやってきたヒズミはそのまま俺の手をぎゅっと握る。
熱い掌に包み込むように挟まれる右手に、自然と厭な汗が流れた。ドクドクと脈打つ心臓。
喉元まで吐き気がこみ上げる。それなのに、ヒズミから目を逸らすことも忘れていた。
「良かった、ずっと心配してたんだよ。会いに行きたかったけど、由良のやつに止められてさあ」
やつがなにを言っているのか、右から左へと言葉は抜けていく。
「なあ、キョウ」と、するりとその指が絡みつきそうになったときだった。
乾いた音とともに、ヒズミの手が振り払われた。
「……っ」
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
固まる俺の肩を掴んだなっちゃんは、そのままヒズミから引き離すように俺とヒズミの間に割って入るのだ。
「あ……?」
「なっちゃ……」
「ああ……お前、いたのか」
なっちゃんが助けてくれた。
その事実を理解した次の瞬間、やってくるのは嬉しさや喜びや安堵よりも、ヒズミの目がなっちゃんに向けられたことに対する恐怖だった。
「またテメェ絡みかよ、転校生」
うんざりしたような、苛ついた口調で吐き捨てるなっちゃん。
ああ、だめだ。そんな煽るような真似。この単細胞馬鹿には死ぬほど効くのだ。
そして案の定、なっちゃんの言葉を受けてヒズミの目の色が変わるのを見てしまう。
ヒズミの身体の向きが変わるのを見て、咄嗟に俺はヒズミの腕にしがみついた。
「待って、ヒズミ……」
なっちゃんに手を出さないでくれ。
そう声を絞り出すことは敵わなかった。
なんで止めるのだ、という顔をしたなっちゃん。
そしてこちらを見下ろしたヒズミはそのまま俺の顎を掴む。
「ひ……っ、ん……ッ!」
「な……」
一瞬、自分がなにされてるのかもわからなかった。
暗くなった視界の中、重ねられる唇の薄い粘膜越しに伝わってくるヒズミの熱。
ぎょっとするなっちゃんも無視して、そのまま躊躇なく舌を挿れて俺の舌に絡めてくるヒズミに凍りつく。
「ッ、ん゛、う……ッ」
やめろ、と覆いかぶさってくるようにキスしてくるヒズミの胸を叩くが、びくともしない。
それどころか、手首を掴まれ、更に深くヒズミの舌に咥内を荒らされるのだ。
ほんの数秒の間だっただろうが、俺にとっては地獄のような時間だった。
濡れた音が響く咥内。耐えられず、ヒズミの舌に思いっきり歯を立てれば、口の中いっぱいにヒズミの血の味が広がった。
代わりに俺の舌を吸い上げたヒズミは、そのままぢゅぽんと音を立てて唇を離す。
「心配しなくても、俺は大丈夫だからな。京」
「……っ」
自分の血で赤く染まった唇を舌で舐め取り、ヒズミは笑った。
そのときだ、背後のかいちょーの部屋の扉が開く。
そして、かいちょーの部屋から現れた少年には見覚えがあった。
確か、かいちょーの親衛隊の子……花崗だ。確か純が呼ばれたっていうのもこの子だったはずだ。
そして、花崗は部屋の前で揉めていた俺達に驚くわけでもなく、寧ろ呆れたような顔をするのだ。
「……ちょっと。急にいなくなったと思ったら、なに勝手なことしてんの?」
その言葉はそれは明らかにヒズミに向けられたものだった。
かいちょーとヒズミの関係を考えれば、別に知り合いでもおかしくはない。
それでも、この状況でその第一声は俺にでもおかしいって分かった。
72
あなたにおすすめの小説
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
世話焼き風紀委員長は自分に無頓着
二藤ぽっきぃ
BL
非王道学園BL/美形受け/攻めは1人
都心から離れた山中にある御曹司や権力者の子息が通う全寮制の中高一貫校『都塚学園』
高等部から入学した仲神蛍(なかがみ けい)は高校最後の年に風紀委員長を務める。
生徒会長の京本誠一郎(きょうもと せいいちろう)とは、業務連絡の合間に嫌味を言う仲。
5月の連休明けに怪しい転入生が現れた。
問題ばかりの転入生に関わりたくないと思っていたが、慕ってくれる後輩、風紀書記の蜂須賀流星(はちすか りゅうせい)が巻き込まれる______
「学園で終わる恋愛なんて、してたまるか。どうせ政略結婚が待っているのに……」
______________
「俺は1年の頃にお前に一目惚れした、長期戦のつもりが邪魔が入ったからな。結婚を前提に恋人になれ。」
「俺がするんで、蛍様は身を任せてくれたらいいんすよ。これからもずっと一緒っすよ♡」
♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢
初投稿作品です。
誤字脱字の報告や、アドバイス、感想などお待ちしております。
毎日20時と23時に投稿予定です。
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
あの夏の日を忘れない ~風紀委員長×過去あり総長~
猫村やなぎ
BL
椎名由は、似てるという言葉が嫌いだった。
髪を金にして、ピアスを付けて。精一杯の虚勢を張る。
そんな彼は双子の兄の通う桜楠学園に編入する。
「なぁ由、お前の怖いものはなんなんだ?」
全寮制の学園で頑張り屋の主人公が救われるまでの話。
【完結】僕らの関係─好きな人がいるのに、学園の問題児に目をつけられて─
亜依流.@.@
BL
【あらすじ】
全寮制の男子校私立掟聖学園には、学力向上を目的とした特殊なペア制度が存在した。
─────────────────
2年の入谷優介は、生徒会長であり学園のカリスマ、3年・中篠翔へ密かに思いを寄せていた。
翔とペアになる事を夢見る優介は、ある事件をきっかけに、同じく3年の超絶問題児、本郷司とペアを組む事になってしまう。傲慢な司に振り回される優介に手を差し伸べたのは、初恋の相手である翔だった。
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
ひみつのモデルくん
おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。
高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎
主人公総受け、総愛され予定です。
思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。
後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる