笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第七章 冒険編 極寒の楽園

深き眠りからの目覚め

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 「さて、行くか」



 真緒達は、ケイと一緒に“アンダータウン”へ戻る為、小屋の外で供に一晩を過ごしていた。



 「そうですね、早くこの王冠をスゥーさんに届けて、安心させないといけませんね」



 「あ、すまん。行く前に妹に声を掛けておきたい」



 眠っているとは言え、唯一の家族に何の言葉も無く出掛けるのは、ケイの良心が許さない。



 「ええ、勿論いいですよ」



 「ありがとう、少し待っててくれ」



 そう言うとケイは、足早に小屋の中へと入って行った。



 「さてと…………えっ?」



 ケイの目の前には、信じられない光景がそこにあった。



 「イ、イウ…………?」



 ずっと眠り続けていた筈のイウが、体を起こし目を覚ましていた。



 「お兄ちゃん?うーん、おはよう」



 大きく背伸びをする妹に、兄であるケイはあまりの嬉しさに身震いさせる。



 「イウ、イウ、イウ!!!」



 ケイはイウに駆け寄ると、思いっきり強く抱き締めた。



 「い、いきなりどうしたのお兄ちゃん!?それに、苦しいよ……」



 「ああ、ごめんごめん。お前が起きてくれた事がうれしくてつい……な」



 強く抱き締めるあまり、息苦しくなってしまった妹に慌てて力を弱める兄。



 「もぉー、お兄ちゃんは大袈裟なんだから……ちゃんと一人で起きられるよ」



 「あ、そっか、寝ていたから記憶は無いのか…………」



 「??」







***







 「ええっ、妹さん目を覚ましたんですか!?」



 「ああ、俺も驚いたよ。今までの苦労が嘘みたいだ」



 現在、ケイは小屋の外で待っていた真緒達に、妹のイウが目を覚ました事を伝えていた。



 「よかったですね、ケイさん!」



 「そうだな。だけど、どうして眠りについてしまったのか、よく覚えていないらしいんだ」



 残念ながら、ピクシーデビルに取り付かれた時の記憶は、覚えてはいなかった。それにより真緒達が真相に辿り着く事は無くなった。



 「結局、何が原因だったんだろうな?」



 「もういいじゃありませんか、結果的に妹さんは助かったんですから……」



 「そうだな……」



 真緒達は深く追求せず、そっとしておく事にした。



 「それで、今妹さんは?」



 「寝むちゃったよ」



 「「「「ええーーー!!?」」」」



 「あ、ああ、違うそうじゃない。今度のは正真正銘普通の眠りだ。イウが言うには、まだ寝たりないらしい……」



 「「「「…………」」」」



 心臓が飛び出るかと思った。折角目覚める事が出来たというのに、二度寝して、再び目覚められなくなってしまったら本末転倒である。



 「そ、それなら一安心です……」



 「それとな、イウが目覚めても俺はお前達について行くからな」



 「駄目ですよ!!何言っているんですか!?やっと妹さんの目が覚めたと言うのに、側にいてやって下さい!!」



 妹のイウが漸く目覚めたと言うのに、何故か真緒達と一緒に“アンダータウン”について行くと公言するケイ。



 「昨日言っただろう?イウが目を覚ました時にこんな汚れた兄を見せたく無いって、イウは目を覚ました。だけどまだ肝心の俺が汚れたままなんだ…………だから、スゥーさんにきちんと謝って綺麗な体になってから、イウと一緒に暮らそうと思う」



 「ケイさん……」



 「……ってイウに説明したら『当たり前でしょ!!いくら私の為だと言っても、他人の大切な物を盗んで来るなんてお兄ちゃん最低だよ!!もう、早くその人に謝って来て!そうじゃないと、二度と家の敷居を跨がせないからね!!』……そう言われてしまってな……」



 「…………つまり、妹さんと一緒にいたいけど本人が謝罪して来るまで家には入れないと、言われてしまったという訳ですか?」



 「ああ、その通りだ」



 「「「「…………」」」」



 真緒達は呆れていた。あんなカッコいい事を公言しておいて、結局は妹に説得されただけであった事に……そして、それを自慢げに語る男に対しても呆れていた。



 「……それじゃあ、出発しましょうか……」



 「おう、出発進行!!」



 一人だけテンションが激しい中、真緒達はスゥーが待つ“アンダータウン”に戻るのであった。その道中、林にてエジタスと合流した。



 「師匠!!」



 「おや~、マオさ~ん。戻って来たのですね~」



 「あの、実はですね……ケイさんの妹さんが目を覚ましました!」



 「何と!?……どうやら、私の考えは間違っていた様ですね~。マオさんの両方助けたいという考えこそが、正しい答えだったのですね」



 「し、師匠の考えは間違っていません!私のは、只のお人好しです……」



 自身の考えを否定するエジタスに対して、間違っていないと主張する真緒。



 「……では、そのお人好しを大切にして下さい」



 「えっ?」



 「人間、誰にでも個性があります。ですが人はその個性を殺して、周りの人達と同じになろうしてしまいます。同調圧力というやつですね。だからマオさん、あなたはそんな人達と同じにならない様に、皆を助けたいというその考えを、個性を、大切に育てて下さい」



 「師匠……分かりました!私、この個性を大事にしていきます!そしていつか、周りの人達が幸せになれる様にして見せます!!」



 「良いですね~、夢は小さくてはいけません。夢は、大きく持つ物ですよ~」



 エジタスと合流を果たした真緒達は、真緒の大きな夢と共に“アンダータウン”に歩みを進めるのであった。







***







 「戻って来ましたね」



 「本当に雪が積もっている……前に来た時は、野花が咲き乱れる良い場所だったのに……」



 真緒達は、ケイと供に歩き続け洞窟の入口までやって来た。



 「なぁ、マオ……」



 「どうしましたか?」



 「何か、前よりも雪の量が増えていないか?」



 足踏みをしながら、フォルスが問い掛ける。



 「気のせいじゃないですか?」



 「……そうなのか?」



 「ほらほら、そんな事より早く行きましょう!」



 「あ、ああ…………」



 疑問に感じながらも、フォルスと真緒達は洞窟の中へと入って行った。



 「…………マオぢゃん」



 「ん、どうしたのハナちゃん?」



 真緒達が、滑る例の地面を転ばない様にゆっくり歩いていると、ハナコが真緒に話し掛けて来た。



 「何だが、前よりも寒ぐ感じねぇだがぁ?」



 「うーん、そう?前もこんな感じじゃ無かった?」



 「ぞうがなぁ……オラ、熊人の筈なのに寒ぐ感じるだよぉ」



 「あははは、それはハナちゃんがそんな服装だからだよ」



 真緒は、ハナコのへそ出しタンクトップを指摘する。



 「ぞうなのがなぁ……?」



 フォルスと同じく、疑問が拭えないまま一行は先に進んで行く。



 「着きましたよ。“アンダータウン”です」



 「こ、これは…………」



 ケイは目を疑った。前に来た時は、町の人々の笑い声が絶え間無く聞こえ、活気に満ち溢れていた。しかし、今はその全てが凍り付き静寂が町を支配していた。



 「俺は、とんでも無い事をしでかしてしまったんだな……」



 「大丈夫ですよ!この王冠をスゥーさんに返してあげれば、きっとこの町も元に戻る筈です!」



 「……そう言って貰えると、少し気が楽になるよ」



 「さぁ、行きましょう!」



 「ああ…………」



 真緒達はスゥーを捜す為、町の中に足を踏み入れた。



 「いったい何処にいるんだろう…………あ、いた!!」



 町中を捜索していた真緒達は、噴水広場にて見覚えのある後ろ姿の女性を発見した。



 「スゥーさん、炎の王冠を見つけましたよー!」



 真っ白な着物を着た真っ白な女性は、ゆっくりと真緒達の方を振り返った。



 「あら、これはまた氷付けのしがいがありそうな人間だわ」



 「えっ…………?」



 真緒達を見つめるその目は、恐ろしく冷酷な物だった。
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