笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
231 / 300
最終章 笑顔の絶えない世界

望まぬ結果

しおりを挟む
 「…………ん……んん……」



 いつの間にか気を失っていたらしく、ハナコが目を覚ますと、部屋全体は炎に包まれていた影響で焦げ臭かった。



 「あれ……オラ……確が……アルシアざん!?アルシアざんは!?」



 気を失う直前の記憶を思い出したハナコは、側で倒れているアルシアの安否を確かめる。



 「ア、アルシアざん…………」



 アルシアの体は重症だった。仰向けに倒れており、体全体が黒く変色して、白かった骨の面影が全く無かった。そして何よりも、右足が炎に耐えきれず灰になっていた。



 「アルシアざん!!アルシアざん!!起ぎでぐれだぁ!!お願いだぁ!!起ぎで、元気な姿を見ぜで欲じいだよぉ!!」



 見ての通り、アルシアはスケルトンであり、骨以外の臓器は存在しない。また、他の生物の様に脈を取るなどの生死を確める方法が無い。ハナコは生きている筈だと信じて、アルシアの倒れている体を揺らした。



 「…………」



 「アルシアざん…………」



 必死にアルシアの体を動かして、意識を取り戻させようとするハナコだが、全く反応しないのを見て、一抹の不安を抱くその時だった。



 「……もう……そんな耳元で大声を出されたら、休めるものも休めなくなってしまうじゃないの…………」



 「!!……アルシアざん!!!」



 アルシアは、死んでいなかった。ハナコより先に目覚めていたが、全身を負傷して右腕と右足を失っていた為、全く動けない状態だった。



 「良がっだぁ……良がっだぁ……!!!」



 「ハナコちゃん…………どうやらこの勝負、あたし達の勝ちみたいね……」



 「えっ?」



 ハナコがアルシアの見つめる先に顔を向けると、そこにいた“実験体M-001”の姿は無く、何かが焼け焦げた後だけが残っていた。現状から察するに、“実験体M-001”を倒せたのは明白だった。



 「オラ達……勝っだんだがぁ……?」



 「えぇ、そうよ……」



 「や、やっだぁあああああああああああああああ!!!」



 心の底からの叫び。ハナコとアルシアの二人は、見事最悪最恐とも言える“実験体M-001”を倒す事が出来たのだ。



 「ちょ、ちょっとハナコちゃん、苦しいわ…………」



 「あっ、ご、ごめんなざい……嬉じぐでづい……」



 あまりの嬉しさから、ハナコはアルシアの事を強く抱き締めたが、重症を負っているアルシアにとって、この抱き締めるという行為でも骨に強く響く。



 「……でも今回勝てたのはハナコちゃん、あなたのお陰よ……」



 「えっ、オラ!?ぞんな、オラなんが何の役にも立だながっだよぉ!!」



 「そんな事無いわ……ハナコちゃんがあたしの体から“実験体”を引き抜か無かったら、確実にあたしは死んでいたもの……ありがとうね……」



 「アルシアざん……」



 こうして面と向かってお礼を言われると、何だかとても照れ臭く感じて、思わずにやけてしまうハナコ。







         パチパチパチパチ







 「「!!!」」



 その時、何処からともなく部屋全体に拍手が鳴り響いた。ハナコとアルシアの二人は、音のした方向に顔を向ける。



 「いや~、お見事でした~。まさか倒してしまうだなんて、さすがはハナコさんとアルシアさんですね~」



 「エジタスざん………」



 「エジタスちゃん…………」



 するとそこには、こちらを見つめながら拍手をするエジタスが立っていた。



 「勝ったお二人には、お約束の鍵をプレゼントしましょう~」



 そう言うとエジタスは、持っていた鍵を二人に向けて放り投げた。



 「おどど……!!」



 突然放り投げられた鍵に、ハナコは慌ててキャッチした。



 「あなた達二人のお陰で、中々良いデータが取れました。今後の作りに参考にさせて頂きます。それではハナコさん、アルシアさん、玉座の間で来るのをお待ちしていますからね~」



 するとエジタスは、指をパチンと鳴らして、その場から姿を消した。



 「エ、エジタスざん!!まだ話は…………!!」



 「行ってしまったわね……まるで、言いたい事は玉座の間に来てから言え、そんな風に思えたわ……」



 エジタスの淡白な対応。言いたい事だけを言うと、こちらが何か言う前に行ってしまった。



 「ぞう言う事なら……絶対……絶対辿り着いで見せるだぁ!!!」



 「その意気よハナコちゃん!!!」



 改めて決意を固めたハナコ。その勇姿にアルシアは、嬉しそうに後押しするのであった。



 「さてと……鍵も手に入った事だし、あたし達もこの部屋を脱出しないとね…………」



 「ぞうだげど……アルシアざん……その体で大丈夫だがぁ?」



 何度も言うが、アルシアは満身創痍で右腕と右足が無くなっている。とても歩ける体とは言えなかった。



 「その点に関しては大丈夫よ……ハナコちゃん、悪いけどそこに落ちているあたしの刀を拾って渡してくれないかしら?」



 「えっ……わ、分がっだだぁ!!」



 アルシアの指示の元、ハナコは側に落ちていた二本の刀をアルシアに渡した。



 「よいしょっと……ハナコちゃん、あたしは今から自身の体を回復させるけど、“何が起こっても決してパニックにならないでね”……」



 「ぞ、ぞれっでどう言う……「いいから」……わ、分がっだだぁ」



 パニックになるな。アルシアがそう言うと、受け取った二本の刀を自身の体に深く突き刺した。



 「!!?」



 「うぐっ…………!!」



 「ア、アルシアざん!!?何をやっでいるんだぁ!!!早ぐ抜いでぐれぇ!!!」



 「ハナコちゃん!!言ったでしょ!!“何が起こっても決してパニックにならないでね”って!!」



 「で、でも…………」



 自身の刀を自身の体に突き刺すという突然の奇行、パニックにならない方が難しい。



 「これからあたしは、自身の体を回復させるのよ…………スキル“大叫喚地獄”!!!」



 その瞬間、アルシアが自身に突き刺した二本の刀が黒く光始め、それに合わせてアルシアの体も黒く光始める。



 「うっ……うぅ……ああああああああああああああ!!!」



 「ア、アルシアざん!!?」



 それと同時にアルシアはとてつもない叫び声を上げた。



 「アルシアざん!!今助げるだぁ!!」



 「触らないで!!!」



 「えっ!!?」



 アルシアの悲鳴に、ハナコが急いで突き刺さった二本の刀を抜こうとするが、アルシア本人に止められてしまった。



 「こ、これで良いのよ……あああああああああ!!!」



 「何処が良いんだぁ!!!余計に苦じぐなっで…………!?」



 その時、ハナコは信じられない光景を目の当たりにした。アルシアの失った筈の右足が再生し始めていたのだ。



 「ご、ごれはどう言う事だぁ……!?」



 「……はぁ……はぁ……“大叫喚地獄”……対象者を超人的な早さで回復させる事が出来る……例え腕の一本や二本無くなったとしても、再生させる事が出来る…………だけど超人的な早さで回復させる反面……それ相応の苦痛を味わう事となる……その苦痛は回復させる時の度合いによって変化する……うっ……あああああああああああああ!!!」



 右腕と右足を再生させるとなると、いったいどれだけの苦痛を味わう事になるのか、ハナコには想像もつかなかった。



 「アルシアざん…………アルシアざん!!頑張るだぁ!!!」



 「ああああああああああ!!!」



 瞬く間に右足は再生し終わり、続けて右腕の再生が始まった。そのあまりの苦痛に叫び声を上げるアルシアを見かねて、ハナコは無我夢中で応援した。







 「…………はぁ……はぁ……はぁ…………」



 それから五分。地獄の苦しみを耐え抜いたアルシアは右腕、右足共に再生する事が出来た。



 「アルシアざん……」



 「待たせたわねハナコちゃん、完全復活よ!!!」



 「良がっだだぁ!!!」



 ハナコは、嬉し涙で顔がぐちゃぐちゃになりながらも、アルシアを強く抱き締めた。



 「あらあら……ハナコちゃんったら、本当に涙脆いのね……」



 「アルシアざん……アルシアざん…………!!!」



 「ちょ、ちょっと……強く抱き締め過ぎじゃないかしら……?こ、このままじゃ、あっ、ちょっ、あーーー!!!」



 こうして、アルシアは完全復活を遂げて、二人は部屋から脱出する事が出来たのであった













































 新魔王城玉座の間。“実験体M-001”に勝利を収めたハナコとアルシアの二人に、部屋の鍵を渡したエジタスは“転移”を使って戻って来た。



 「お帰りなさい我が神よ」



 「…………」



 戻って来たエジタスに、ジョッカーは丁寧に頭を下げるも、エジタス本人は返事を返さず横切った。



 「我が神……どうしたのです……ひぃ!!?」



 「…………」



 返事を返さないのを不思議に思ったジョッカーは、横切ったエジタスに声を掛けようとした瞬間、チラリと見た横顔に思わず悲鳴を上げてしまった。何故なら、その横顔から今まで感じた事の無い程のとてつもない殺意を感じたのだ。そんな悲鳴を上げたジョッカーに、ラクウンが歩み寄る。



 「ジョッカーさん、あなたは我が王の元に仕えてから、まだ日が浅いから分からないと思いますが、あの雰囲気を漂わせている時の我が王には話掛けない方が身の為ですよ…………」



 「そ、そうなのか……」



 「…………」



 エジタスは指をパチンと鳴らして、右手に黒い塊を出した。それは以前エジタスが出した“魔食”の体の一部だった。



 「…………つまらねぇな……」



 “魔食”の体の一部を強く握り締めながら、望まぬ結果になった事にエジタスは苛立ちを感じた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

処理中です...