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第一章
第十九話 傭兵稼業?
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「この売買を仲介した場合、あなたにはどれくらいのバックマージンが入るの?」
「は? いえ、それは……」
「ボブにはそれと同じくらい、何か見返りがあるのかしら」
ニコルソンは青い顔をしていた。
ゲストアテンダントには、大してバックマージンが入らないという返事も明確ではないが、帰ってきた。
言い渋るニコルソンを尻目に、アニスはここで何をやりたいのかを告げてやる。
「私、富裕層専門の傭兵稼業をやろうかと思うの。ここをオフィスにして」
「は? 傭兵……でございます、か」
「そうね。要人のボディーガードでもいいかもしれない。支度金は多い方が助かるの。……でもあなたの懐を潤してあげたいとは思わない」
「……」
この男と商売をするのは賢くない気がする。
やり手ではあるだろうがどこかで都合よく、利益だけを掠めていきそうだ。
そんな輩は信頼できない。
「もういいわ」
「は、しかし」
「あなたには頼まないって言ってるの。紹介してくれたボブの顔を立てただけ。売れるかどうかわからないなんて返事は私は望んでないの。売りますっていう返事ができないなら出て行って」
「それは――」
ニコルソンは顔をしかめると、困ったように首を左右に振った。
そして自分には荷が重いと感じたのだろう。
他に売買の要望があれば連絡して欲しいと、名刺だけを残して部屋を去っていった。
やっぱり傭兵稼業をやりたい、なんて突飛な案だったかもしれない。
ホテルには要人の警護を担当するセキュリティもあるし、ボディーガードを派遣するサービスだってある。
さっき口にした提案を、やっぱり間違いだったと早いうちに訂正しようと思った。
それにしても自分が他人に対して、サービスを提供できるものがこんなに少ないなんて。
困ったなあ、とぼやいていると、扉のノックとともに、ボブが若い少年を連れてやってくる。
アニスと同年代に見える彼は、多分、ボブの言っていた彼の孫だろう。
「いかがでしたか?」
そうお伺いと立てるゲストアテンダントは、こういう結果になるとわかっていたような顔をして、訊いてきた。
「ダメね。小遣いが欲しいだけのとこなんて何の魅力も感じない。商売を負かしてもどこかで失敗する気がする」
「やはりそうでしたか。ところでここで傭兵は……」
「それは嘘だから。そんなことしたらホテルのセキュリティが困るでしょ」
「お察しいただき痛み入ります。そうなるとどうなさるおつもりですか」
「この魔石を銀行に預けて融資を受けたらいいって言われたけど、もし価格が落ちた場合私が負債を抱えるのは嫌なの。そんな提案しかできないんだったら用がないわ。とりあえずまとまった現金が欲しい」
「そう言われると思って、連れて参りました」
その一言を受けて、後ろに立っていた、少年が一歩前に歩み出る。
灰色の髪と青い瞳がよく似ていて、一目で彼の血縁だと分かる
涼やかな目元には緊張が浮かんでいるが物怖じはしなさそうな印象だ。
実直そうな雰囲気は、平凡ではあるものの、どこか好感が持てた。
ニコルソンとはまったく違う部類の人間だと思えた。
祖父の紹介で、孫は一礼する。
「フランメル辺境伯令嬢アニス様。ボブの孫の、エリオットと申します。魔石の件につきまして伺いました」
「エリオット? よろしくね。それで、あなたはどんな提案をしてくれるのかしら?」
緊張した面持ちの彼に問うと、少年は強い意志をもって答えた。
「ウィリネス商会。自分の所属している工房を運営している会社ですが。我が社の店長が、祖父から話を聞き、是非、売却に仲介させていただきたいと申しております」
「それは別に構わないけれど。あなた達は困ったことにならないの?」
「ホテルの中では、まず外商部を通すことになっておりまして。そこが無理と判断すれば、直営店舗や関係している部署が、お客様のご要望を叶えるために引き継ぎをさせていただく形になっております」
ボブが孫の言葉を補足するように言った。
それならばまあ……彼らが後から支配人から怒られたりしないのであれば。
今このホテルの中で最大限の信頼を受けるのは、ボブしかアニスにはいない。
その彼が、孫を信じてくれというのなら。任せてみるのも一つの方法かとアニスは思った。
「は? いえ、それは……」
「ボブにはそれと同じくらい、何か見返りがあるのかしら」
ニコルソンは青い顔をしていた。
ゲストアテンダントには、大してバックマージンが入らないという返事も明確ではないが、帰ってきた。
言い渋るニコルソンを尻目に、アニスはここで何をやりたいのかを告げてやる。
「私、富裕層専門の傭兵稼業をやろうかと思うの。ここをオフィスにして」
「は? 傭兵……でございます、か」
「そうね。要人のボディーガードでもいいかもしれない。支度金は多い方が助かるの。……でもあなたの懐を潤してあげたいとは思わない」
「……」
この男と商売をするのは賢くない気がする。
やり手ではあるだろうがどこかで都合よく、利益だけを掠めていきそうだ。
そんな輩は信頼できない。
「もういいわ」
「は、しかし」
「あなたには頼まないって言ってるの。紹介してくれたボブの顔を立てただけ。売れるかどうかわからないなんて返事は私は望んでないの。売りますっていう返事ができないなら出て行って」
「それは――」
ニコルソンは顔をしかめると、困ったように首を左右に振った。
そして自分には荷が重いと感じたのだろう。
他に売買の要望があれば連絡して欲しいと、名刺だけを残して部屋を去っていった。
やっぱり傭兵稼業をやりたい、なんて突飛な案だったかもしれない。
ホテルには要人の警護を担当するセキュリティもあるし、ボディーガードを派遣するサービスだってある。
さっき口にした提案を、やっぱり間違いだったと早いうちに訂正しようと思った。
それにしても自分が他人に対して、サービスを提供できるものがこんなに少ないなんて。
困ったなあ、とぼやいていると、扉のノックとともに、ボブが若い少年を連れてやってくる。
アニスと同年代に見える彼は、多分、ボブの言っていた彼の孫だろう。
「いかがでしたか?」
そうお伺いと立てるゲストアテンダントは、こういう結果になるとわかっていたような顔をして、訊いてきた。
「ダメね。小遣いが欲しいだけのとこなんて何の魅力も感じない。商売を負かしてもどこかで失敗する気がする」
「やはりそうでしたか。ところでここで傭兵は……」
「それは嘘だから。そんなことしたらホテルのセキュリティが困るでしょ」
「お察しいただき痛み入ります。そうなるとどうなさるおつもりですか」
「この魔石を銀行に預けて融資を受けたらいいって言われたけど、もし価格が落ちた場合私が負債を抱えるのは嫌なの。そんな提案しかできないんだったら用がないわ。とりあえずまとまった現金が欲しい」
「そう言われると思って、連れて参りました」
その一言を受けて、後ろに立っていた、少年が一歩前に歩み出る。
灰色の髪と青い瞳がよく似ていて、一目で彼の血縁だと分かる
涼やかな目元には緊張が浮かんでいるが物怖じはしなさそうな印象だ。
実直そうな雰囲気は、平凡ではあるものの、どこか好感が持てた。
ニコルソンとはまったく違う部類の人間だと思えた。
祖父の紹介で、孫は一礼する。
「フランメル辺境伯令嬢アニス様。ボブの孫の、エリオットと申します。魔石の件につきまして伺いました」
「エリオット? よろしくね。それで、あなたはどんな提案をしてくれるのかしら?」
緊張した面持ちの彼に問うと、少年は強い意志をもって答えた。
「ウィリネス商会。自分の所属している工房を運営している会社ですが。我が社の店長が、祖父から話を聞き、是非、売却に仲介させていただきたいと申しております」
「それは別に構わないけれど。あなた達は困ったことにならないの?」
「ホテルの中では、まず外商部を通すことになっておりまして。そこが無理と判断すれば、直営店舗や関係している部署が、お客様のご要望を叶えるために引き継ぎをさせていただく形になっております」
ボブが孫の言葉を補足するように言った。
それならばまあ……彼らが後から支配人から怒られたりしないのであれば。
今このホテルの中で最大限の信頼を受けるのは、ボブしかアニスにはいない。
その彼が、孫を信じてくれというのなら。任せてみるのも一つの方法かとアニスは思った。
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