殿下、貴方が婚約破棄を望まれたのです~指弾令嬢は闇スキル【魔弾】で困難を弾く~

秋津冴

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第一章 

第二十八話 違法行為

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 すると少女は、自分の悪行を棚に上げて、アニスを射殺すような視線で睨みつけて来る。
 それは地獄の悪魔もかくや、というほどに呪いのこもった視線だった。

「魔猟師になれば、うちの村の裏手に住む魔獣退治を引き受けることができたのに! あんたのせいだよ!」
「えー……ちょっと待って。その魔獣は、どれくらいのランクなの?」

 を? とリンシャウッドはえーと、と記憶を探り始める。
 もしそれがSランクとかだったら、はっきり言って、数年先の話になる。

 リンシャウッドが資格を得て、ランクSに成り上がるまで、どれくらいかかるかも分からないのだ。
 取らぬ魔獣の皮算用にもほどがある。

「魔猟師になっても、いきなりハイランクの魔獣には立ち向かえないよ? 違法になる」
「……確か、ランクB」
「それだと良くて二年はかかるね。ランクC以上の魔獣を相手にする場合、個人では危険だ。二人がかりでパーティを組んで、それから挑戦することになる。どちらにしてもえーと」

 と、話の途中に割り込んできた協会のお偉いさんが、眉根に皺を寄せてどうしたものか、と数人がかりで話をしていた。
 どうやら、黒狼の少女の試験結果は悪くないらしい。

 もう一度隠し持っていた銃以外の、正規の銃器を使って、正しい計測をやってみてはどうかと結論づいたようだ。
 ふてぶてしくも、地面にあぐらをかくリンシャウッドに向かい、お偉いさんは威厳をもって優しく声を掛ける。

「総合得点が四百点満点。そのうち実技が三百満点だ。リンシャウッドさん、あなたの場合、初心者には珍しく実技で二百八十を獲得している。もう一度実技テストをやって、これに近い数値かこれ以上の数値を出せれば合格ということにしよう」
「本当に!」

 フードの下でうなだれていた獣耳が、勢いよくちょこんと立ち上がった!
 小さく丸まってしまった尻尾が、大きくふくれブンブンと喜びの大きさを激しく示していた。

「その前にちゃんと聞かせて欲しい。どうしてこんなものを持ち込んだ?」
「あ……う。それは――」
「うん?」
「私、王都にやってくるのは初めてで。その、都会に来ることが初めてで……このホテルにくるために乗ったはずのタクシーに荷物をほとんど持っていかれてしまって……」
「それはかわいそうに。被害届は出したのかね?」
「それは、はい。ホテルのフロントから、警察を通じて被害届を出したので、調べてもらったら分かると思います……。だから最後に本当に大事な、この銃だけは手放したくなくて。服もずっとこれだけだし。お金は別にしてたからまだいいんだけど……」

 そこまで話すと逆に安心をしてしまったのか、彼女はエグっ、エグっ、と年相応? に涙ぐんで泣き出してしまった。
 これで同い年と思われるのは辛いものがある、自分はこんなに泣き虫じゃないし、考え無しでもない。

 リンシャウッドを見て、そう思ったアニスは、同様の視線を送るエリオットに気づいた。
 そういえば、エリオットはアニスたちよりも四歳若い、十六歳だった。
 
「あのね、身の上話とかは後でいいから、さっさとやってもらえないかしら? この後まだ、どうやって仕事をもらいに行ったり、どうやって仕事完了の報告をしたりっていうジムに関する説明がまだあるのよね」
「ひぐっ、ごめんなさい」
「ああ、そう言われればそうですな。では皆さんは一足先にホテルの中の方へどうぞ。部屋の一つを借り切ってありますのでそちらで説明いたします。リンシャウッドさんは、この場所でもう一度試験をやりましょう」

 そう言われたら、特にこちらに文句はない。
 しかし、何か釈然としないものを感じて、アニスは去り際にそれとなく、再試験を受け始めたリンシャウッドを観察していた。

 すると、この魔猟師資格試験の会場で気になった、黒髪の青年が、彼女のことを心配そうにちらちらと横目に気にしながら、最後に説明会場に入ってくる。

 彼の態度や素振りから二人の間になにがしか特別な関係があるのは見て取れた。
 とはいえ、中肉中背のいかにも戦士、といった外見の彼と、辺境から王都へとやってきたあの獣人とどうにもイメージが噛み合わない。
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