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第四章
第六十話 アニスの報復
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「左様でございます。どちらにせよ、炎の巨人とやらを魔石に封じ込めるためには、聖女様のお力が必要です。そのために、大陸の東からこんな南の果てにまで来られたのですから、お力添えを願っても悪くないと思います」
「それはそうですけど……えええ?」
「そこで私が提案いたしますのは、帝国の誇ります魔導具のかずかずを、このエリオット殿下にすでに渡しております。それらを使いまして、まずは炎の巨人を足止めしている辺境伯の部下どもを、黒狼を含めて……捕縛し魔石を奪還しましょう。
さらに、炎の巨人を聖女様の手によって魔石に封印していただきます。最後に、アニス様の【魔弾】により、ローズ・ローズの本体がある魔石を打ち砕く。これで全ては、問題なく滞りなく進むはずです」
「そんなにうまくことが進かしら?」
とアニスは及び腰だ。帝国の思惑に付き合わされるというのが、面白くないのかもしれない。
ボブはどうかお願いしますよ、と腰を腰をかがめて、依頼する。
「補足として、このホテルに炎の巨人を封印した魔石をお持ち帰りください。聖女様ご自身の手で。そうすれば、我々として手出しはできません。聖女様にはそのまま、一度帝国本土にある、女神リシェスの分神殿にでも転送魔法によって移動していただきます。その後、魔石がどうなろうが、私どもは何も知りません。一切関知いたしません」
「……私はそれでも良いですよ」
「聖女様! それじゃ利用されるままじゃないですか! 面白くないわ」
「では、アニス様。あなたはどうなれば、納得するというの?」
聖女にたしなめるように言われ、エリオットと自分の顔を交互に見比べられて、アニスは赤味が薄くなっていた顔を、更に赤く染めていく。
かつての元婚約者からもあれほど情熱的な一言を言われたことがない、恋愛貧乏のアニスは「彼の誠実さが足りないから嫌!」と首をそっぽ向けた。
「待ってくださいアニス。これは俺の帝国臣民としてしなければならないことで……」
「それは好きにすればいいじゃない。そうじゃなくて! 仲間のなんでしょう? それなら仲間らしくちゃんと頼んでよ」
「……アニス。お願いだ、どうか君の力を貸して欲しい。今だけでなく、俺のために対して力を貸してくれないか」
「なんか一言余計なのよね……?」
告白か? 告白なのか? それとも、無自覚にやっているのか? もしかして、たくさんの女性をこうやって手玉に取ってきたんだろうか……。ついでにさっきからずっと気になっていたけど、殿下って何? 私はそんな彼の隠れた身分を知ったからといって、なびくほど安い女じゃないんだけど!
なんだか無性に腹が立つなあ……と、弄ばれているようで、面白くない。
だからからかうように言い返してやった。もし後から違うと否定されても、それならそれできっちりと慰謝料を請求してやるつもりで。
「いーいわよ? そこまで言うなら、そこまで言ってくださるならお手伝いしないこともありませんわよ、殿下。でもあなたのために力を貸すのですから、私の人生もきちんと助けていただかないと困ります。今だけでなくこれからずっと」
「アニス様、それはちょっと」
「聖女様、いいから黙っててください。これは私たちの問題なので」
「でも、だけど。それはちょっと」
売り言葉に買い言葉。
いやいやそれだけじゃない、片方が告白をしたら片方は喧嘩を売る勢いで告白しかえしている。
もしかしたらそれぞれに気づいていないかもしれないし、アニスの場合はエリオットが気づいていなかったと後から言い訳しても、今更遅い、と謝罪とそれ以上の何かを彼に要求するだろう。
女性って怖いな。同性ながら、聖女シオンライナはそう感じていた。
アニスの思惑を察知したのは、シオンライナだけではなく、ボブも同様だった。
エリオットがわかりましたと言ってしまえば、下手をすれば彼女の実家の問題に、帝国が巻き込まれる可能性がある。
そうなるとエリオットの帝国本土への帰還すら――と、泡を喰っていたら、アニスが機先を制した。
「伯爵家との縁は切れておりますからご心配なく!」
「それでしたら……このボブに言うべきことは」
「あるでしょ? たくさんありますよね? 散々私を騙して来て、今から言うことが何もないなんて言わせませんからね? 後からちゃんと謝っていただきますから!」
「はい、それはもう」
「それと、エリオット!」
「なっ、なに……かな? 隠しておいたことについてはもちろん、謝罪もするよ。これは……すまなかった」
「そんな謝罪とかどうでもいいの!」
「はっ、はい。アニス……様」
それまで怒り心頭だった殿下が、今度は騙していたことをアニスに叱られて顔色を失うさまは、どこか滑稽だ。
まるで熟年夫婦の喧嘩を見ているようで面白くなり、聖女はクスクスと顔を手で覆って笑ってしまった。
「あの魔石の所有者は辺境伯家だから、私にはもう関係ないわ。好きにすればいいじゃない。だから、あなたがどこの誰とあれを使ってしようと、私は知りません!」
「じゃあ、もう関係したくない、と?」
「そうじゃないの。私には私なりのケジメの付け方があるって言ってるの。その邪魔しないで欲しいだけ」
「つまりどうすればいい?」
アニスは不敵に微笑んで言った。
辺境伯家の鼻を明かすのよ、と。
「それはそうですけど……えええ?」
「そこで私が提案いたしますのは、帝国の誇ります魔導具のかずかずを、このエリオット殿下にすでに渡しております。それらを使いまして、まずは炎の巨人を足止めしている辺境伯の部下どもを、黒狼を含めて……捕縛し魔石を奪還しましょう。
さらに、炎の巨人を聖女様の手によって魔石に封印していただきます。最後に、アニス様の【魔弾】により、ローズ・ローズの本体がある魔石を打ち砕く。これで全ては、問題なく滞りなく進むはずです」
「そんなにうまくことが進かしら?」
とアニスは及び腰だ。帝国の思惑に付き合わされるというのが、面白くないのかもしれない。
ボブはどうかお願いしますよ、と腰を腰をかがめて、依頼する。
「補足として、このホテルに炎の巨人を封印した魔石をお持ち帰りください。聖女様ご自身の手で。そうすれば、我々として手出しはできません。聖女様にはそのまま、一度帝国本土にある、女神リシェスの分神殿にでも転送魔法によって移動していただきます。その後、魔石がどうなろうが、私どもは何も知りません。一切関知いたしません」
「……私はそれでも良いですよ」
「聖女様! それじゃ利用されるままじゃないですか! 面白くないわ」
「では、アニス様。あなたはどうなれば、納得するというの?」
聖女にたしなめるように言われ、エリオットと自分の顔を交互に見比べられて、アニスは赤味が薄くなっていた顔を、更に赤く染めていく。
かつての元婚約者からもあれほど情熱的な一言を言われたことがない、恋愛貧乏のアニスは「彼の誠実さが足りないから嫌!」と首をそっぽ向けた。
「待ってくださいアニス。これは俺の帝国臣民としてしなければならないことで……」
「それは好きにすればいいじゃない。そうじゃなくて! 仲間のなんでしょう? それなら仲間らしくちゃんと頼んでよ」
「……アニス。お願いだ、どうか君の力を貸して欲しい。今だけでなく、俺のために対して力を貸してくれないか」
「なんか一言余計なのよね……?」
告白か? 告白なのか? それとも、無自覚にやっているのか? もしかして、たくさんの女性をこうやって手玉に取ってきたんだろうか……。ついでにさっきからずっと気になっていたけど、殿下って何? 私はそんな彼の隠れた身分を知ったからといって、なびくほど安い女じゃないんだけど!
なんだか無性に腹が立つなあ……と、弄ばれているようで、面白くない。
だからからかうように言い返してやった。もし後から違うと否定されても、それならそれできっちりと慰謝料を請求してやるつもりで。
「いーいわよ? そこまで言うなら、そこまで言ってくださるならお手伝いしないこともありませんわよ、殿下。でもあなたのために力を貸すのですから、私の人生もきちんと助けていただかないと困ります。今だけでなくこれからずっと」
「アニス様、それはちょっと」
「聖女様、いいから黙っててください。これは私たちの問題なので」
「でも、だけど。それはちょっと」
売り言葉に買い言葉。
いやいやそれだけじゃない、片方が告白をしたら片方は喧嘩を売る勢いで告白しかえしている。
もしかしたらそれぞれに気づいていないかもしれないし、アニスの場合はエリオットが気づいていなかったと後から言い訳しても、今更遅い、と謝罪とそれ以上の何かを彼に要求するだろう。
女性って怖いな。同性ながら、聖女シオンライナはそう感じていた。
アニスの思惑を察知したのは、シオンライナだけではなく、ボブも同様だった。
エリオットがわかりましたと言ってしまえば、下手をすれば彼女の実家の問題に、帝国が巻き込まれる可能性がある。
そうなるとエリオットの帝国本土への帰還すら――と、泡を喰っていたら、アニスが機先を制した。
「伯爵家との縁は切れておりますからご心配なく!」
「それでしたら……このボブに言うべきことは」
「あるでしょ? たくさんありますよね? 散々私を騙して来て、今から言うことが何もないなんて言わせませんからね? 後からちゃんと謝っていただきますから!」
「はい、それはもう」
「それと、エリオット!」
「なっ、なに……かな? 隠しておいたことについてはもちろん、謝罪もするよ。これは……すまなかった」
「そんな謝罪とかどうでもいいの!」
「はっ、はい。アニス……様」
それまで怒り心頭だった殿下が、今度は騙していたことをアニスに叱られて顔色を失うさまは、どこか滑稽だ。
まるで熟年夫婦の喧嘩を見ているようで面白くなり、聖女はクスクスと顔を手で覆って笑ってしまった。
「あの魔石の所有者は辺境伯家だから、私にはもう関係ないわ。好きにすればいいじゃない。だから、あなたがどこの誰とあれを使ってしようと、私は知りません!」
「じゃあ、もう関係したくない、と?」
「そうじゃないの。私には私なりのケジメの付け方があるって言ってるの。その邪魔しないで欲しいだけ」
「つまりどうすればいい?」
アニスは不敵に微笑んで言った。
辺境伯家の鼻を明かすのよ、と。
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