8 / 30
8
しおりを挟む招待された当日。
約束の時間よりほんの少し遅れて私は王妃の部屋を訪れた。
本当なら約束通りに行かなければいけないじゃない?
でもこの国ではこうすることが正しいらしくて。
時間通りに物事を運ぶというのは余裕がないとみなされるそう。
何事も時間厳守で予定通りに物事を進めなければ認められなかった母国と違い、王国のこんなのんびりしたところは、意外にも私にとってありがたいものだった。
「……時間通りに来るかと思ったのに」
「少しばかり遅れて行くようにと、習いましたので」
「ああ、そう」
つまらなさそうに王妃様はそう言われた。
敵なのか味方なのかよくわからない。
もし、時間通りに来ていたら、礼儀も知らない無作法者として、王宮のなかで笑いの種にされたのは間違いないだろうと思う。
そんな風にして貶めないと、第一夫人としての格というか。
正妻と愛人との区別、差別を誇示することで、王国は公国を重要視していると周りに見せることができる。
私としてはそんなつまらない事よりもっと仲良くしたいのだけれど。
まあ、それにはしばらく時間がかかるようだった。
「陛下がお戻りになられたのはご存知?」
「あ。いいえ」
「まあ知らなくても無理はないわ。お忍びで出かけておられたから」
「お忍び、ですか」
それはつまり、他に女性がいるということだろうか。
王様なのだから、それは自由にされていいと思うのだけれど。
嫁いで来た身としては、ちゃんと成すことをして欲しいという思いもある。
このままでは、私がやってきた意味がないままに、国に戻されてしまうではないですか。
「女じゃないと思うの。でもなんだかよくわからない」
「はあ」
「私には警戒して話してくれないのよ」
「王妃様は陛下とその――」
「そういった中になることもよくあるけど。訊かなくてもわかるでしょ」
まだ彼女たちの間に子供が出来ていない。
あちらはあちらでそれなりの焦りがあるようで。
本日呼び出された要件。
それは、私に陛下がお忍びでどこに出かけていたのかを、調べろとそういう命令。
もう少し噛み砕いて言うと、数日内には‥‥‥陛下が私の寝所を訪れることを暗に示していた。
「王妃様の御命令を、帝国から来たこの女に命じる、と?」
「どっちでもいいじゃない。王国も、帝国も、公国も。私には関係ないわ」
「は‥‥‥?」
この返事には面食らってしまった。
だって彼女、母国のことをあれだけ意識しているような発言と雰囲気を醸し出していたのに。
突然の発言に、なにごと? と頭のなかが靄に包まれたようになる。
「ここに来て何年も時間が経過したら、愛だって冷めるわよ。あなたも覚悟することね」
「いえ、覚悟って。王妃様?」
こちらとしては敵視されているから用心しようと思っていたのに。
こうもあっさりと警戒を解かれた上に、気にしてないって発現されてもねえ。
それはそれでとても困るのですよ。
あと一年の間に子供が出来なかったら私は、次に選ばれてくる女性に彼女のように冷たく当たるのかと思うと、なんだかとても虚しくなってしまった。
10
あなたにおすすめの小説
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
殿下の御心のままに。
cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。
アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。
「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。
激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。
身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。
その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。
「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」
ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。
※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。
※シリアスな話っぽいですが気のせいです。
※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください
(基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません)
※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました
みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。
ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。
契約婚しますか?
翔王(とわ)
恋愛
クリスタ侯爵家の長女ミリアーヌの幼なじみで婚約者でもある彼、サイファ伯爵家の次男エドランには愛してる人がいるらしく彼女と結ばれて暮らしたいらしい。
ならば婿に来るか子爵だけど貰うか考えて頂こうじゃないか。
どちらを選んでも援助等はしませんけどね。
こっちも好きにさせて頂きます。
初投稿ですので読みにくいかもしれませんが、お手柔らかにお願いします(>人<;)
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
[完]僕の前から、君が消えた
小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』
余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。
残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。
そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて……
*ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる