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異世界へ
0001話
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空高く……青い空や白い雲よりもさらに高い場所から、それは姿を現した。
石……いや、違う。岩……それも違う。隕石。
そう、空から降り注ぐのは、まさに隕石としか表現出来ないような代物。
その隕石の大きさが、具体的にどのくらいのものなのかは、見ている者にも分からない。
遠くに存在しているので、その大きさを理解しろというのは難しい。
それは、実際にこの現象を起こした人物もまた同様だった。
「は、ははは……流星魔法って本当に文字通りの意味なのかよ……」
その一撃を放った人物は、崖の上から遠くに存在する無数の敵……ファンタジー小説としてはお馴染みで、その人物も日本にいたときにゲームや漫画を楽しんでいたので、分かる。
何よりも自分がこの世界にやって来たとき、何も知らない山の中で散々追いかけ回されたのだから、その姿を忘れるなどといったような真似が出来るはずもない。
その人物が半ば現実逃避をしている中、数百、数千……あるいは数万に届くのではないかと思えるようなゴブリンの軍勢に対し、天空から降ってきた隕石が真っ直ぐに落下してき……そして、着弾する。
轟っ!
そんな音が聞こえたような気がした男だったが、それはあくまでも気のせいではあるのかもしれない。
それでもかなり先の平原を進んでいたゴブリンの軍勢に隕石は落ちて……
「あれ?」
隕石が落ちたのに気が付いた人物は、何故か衝撃波が全く感じられないことに気が付き、首を傾げる。
そんな男の視線の先では、しかし隕石が落ちたのは間違いなく、ゴブリンの軍勢は致命的なまでの被害を受けていた。
だが、男の放った隕石の規模を思えば、かなり離れているとはいえ男のいる場所まで衝撃波や爆風がやってきてもおかしくはない。
だからこそ、男は何かあったら即座に山の中に逃げようとしていたのだが……そのようなものがやって来ることは一切なかった。
「これって、もしかして流星魔法だからか?」
男が知ってる限り、恐竜が絶滅したときに地球に降ってきた隕石の大きさは、十キロほどの大きさだったという。
それだけの大きさの隕石であっても、地球環境を激変させ、多くの……それこそ数え切れない生き物を絶滅させるだけの威力を持っていたのだ。
男が今回流星魔法で降らせた隕石の大きさはそこまで巨大ではないが、それでも周辺に大きな衝撃波や爆風はあってもいいはずだった。
しかし、一切その手のものがないのは男にとって幸運だった。
……ただし、幸運なのはあくまでも男にとってだけだ。
無数のゴブリンの軍勢に落下した隕石は、その周辺一帯には間違いなく強烈な衝撃波や爆風を巻き起こしていたのだから。
その範囲が具体的にどうやって決まっているのかは分からないものの、男は何故このようなことになったのだろうかと……半ば現実逃避気味に考えるのだった。
日本にある東北の田舎。
そこでは最近高校生が何人か続けて死ぬといったような事件があり、TV局や新聞、雑誌といったメディア関係の人間がやってきては色々と取材が行われていた。
遠藤井尾――某国民的RPGにおいて爆発魔法の名前は本人としてはあまり気にしていなかったが――は、そんな周囲の様子に面白くないものを感じつつも、特に何か行動をする訳でもない。
井尾本人は最近死んだ者たちとの付き合いはそこまでない。
同じ高校出身ではあったもののクラスは違い、オタク趣味をそれなりにオープンにしていた者たち……佐伯玲二たちとは違い、その趣味は隠していた。
そのため、何度か会話をしたことはあるが結局はその程度のことでしかなく、同期の者が死んだと言われてもそこまで悲しみの類は感じていなかった。
(今日は通販で本が届く予定だったな。ああ、そう言えば裁断機もそろそろ買い換える必要があるか。スキャナの方は……まだ問題ないだろ)
オタクであるというのを隠している以上、当然ながら漫画や小説を自分の部屋に大量に置いておく訳にはいかない。
結果として、井尾が辿り着いたのは電子書籍だった。
それも最初から電子書籍で購入するのではなく、本を買ってそれを自分で裁断機で裁断し、スキャナでスキャンするといったような方法を好む。
今日届く本でも電子書籍の製造を頑張ろうと思って自転車で進んでいたのだが……
「ちょっと待って下さい! 取材をさせて貰えますか!?」
そんな井尾の前に、不意にいきなり誰かが飛び出してくる。
いきなりのその行為に井尾は半ば反射的に自転車のブレーキをかけ……相手を回避するために自転車を動かし、次の瞬間には強い衝撃を受けて悲鳴を聞きながら意識が途切れるのだった。
「ん……えっと……? あれ? 俺、一体何をしてたんだっけ? 一体何がどうなって……っていうか、ここはどこだ?」
白い空間としか言いようがない、そんな空間。
どこまでも、どこまでも……それこそ永遠に続いてるのではないかと思えるような、そんな空間に井尾の姿はあった。
そして白い空間の一ヶ所には、巨大な水晶の姿がある。
井尾は自分が何故このような場所にいるのかは分からない。分からないが、自分から遠く離れた場所にある水晶に向かって歩き出す。
歩き、歩き、歩き、歩き、歩き……一体どれくらい歩き続けたのか分からないが、水晶との距離が縮まった様子はない。
「どうなってるんだ? 全く水晶に届かない。その割に体力が消耗したりもしないのは助かるけど」
井尾の体感時間にして数時間近くは歩き続けていたにもかかわらず、全く水晶のある場所に到着しない。
それこそ井尾が歩けば歩いた分だけ水晶が遠くに離れていってるような、そんな感じすらしている。
それでも何故か、本当に何故か井尾は歩みを止めることもなく、ただひたすらに延々と歩き続け……その上で、さらに数時間が経過したところでようやく井尾の前に水晶が存在していた。
「でかいな」
数時間……あるいは十時間以上歩き続けたにもかからわず、全く疲れも空腹も喉の渇きも感じないまま、井尾は水晶の前に立つ。
そんな井尾の前にある水晶は、とにかく巨大だった。
普通、水晶と言われて思い浮かべるのは、占い師が使うような丸い水晶だろう。
そういう意味ではこの水晶も丸いのは間違っていなかったものの、ただその大きさが違う。
それこそ一軒家くらいの大きさがある、巨大な丸い水晶だ。
自然の水晶でこんな物が出来るのか? と疑問に思った井尾だったが、そもそも現在の状況がとてもではないが普通の出来事ではない以上、普通や一般的、常識といったようなことを考えても意味はないだろうと判断する。
「これだけ大きかったから、いくら歩いてもなかなかここまで到着しなかったのか?」
そんな疑問を抱きつつも井尾はそっと手を伸ばして水晶に触れる。
「っ!?」
水晶に触れた瞬間、井尾の頭の中に様々な情報が入ってくる。
それは具体的にはここがどこなのか、そしてこれから自分がどうなるのかといったようなもので、同時に井尾の中にある根源や本質とも表現すべき存在を才能として目覚めさせる……と、そういうものだった。
「うおおおおおおっ!」
そのような行動をするのだから、当然のように井尾にとっても普通に受けいれられるようなものではない。
頭の中身を強引に掻き回されるような、偏頭痛が数十倍、数百倍の痛みで襲ってくるかのような……そんな激しい衝撃と激痛に、井尾は我知らず口から悲鳴が上がる。
悲鳴を上げ続け、一体どれくらいの時間が経ったのか、それは井尾本人にも分からない。
数秒ではないだろう。数十秒でもないだろう。数分という可能性はあるが、数十分という可能性もある。しかし、数時間はさすがにないだろうと思われ……そんな一種の拷問に近い時間が経過すると、不意に頭の中の激痛が消えた。
「うおおおお……え?」
唐突に、本当に唐突に消えた激痛に、井尾の口からは間の抜けた声が出る。
数秒前まで感じていた激痛は、間違いなく本物だった。
だが、その激痛が消えた瞬間、本当に綺麗さっぱりと激痛は消えてしまったのだ。
まるでTVのスイッチをON、OFFするかのように。
数秒前まで激痛に悲鳴を上げていただけに、井尾は呆気にとられた様子で周囲を見る。
もしかして、本当にもしかしての話だが、自分は夢でも見ていたのではないか、と。
だが、井尾の周囲に広がるのは相変わらずの白い空間のみ。
そして目の前にあるのは、巨大な……本当に巨大な水晶。
そんな状況を見て、少し荒れた息を整えた井尾は、今の自分に何が起きたのかを考え、すぐに理解する。
「なるほど。異世界に行っても問題ないように精神を強化されたのか」
正確には改変と呼ぶべきものなのだが、井尾にしてみれば改変ではなく強化であると自分で思い込む。
どうせなら自分が変えられたのではなく強くなったと、そう思いたかったのは当然の話だろう。
精神の強化……具体的には、敵を殺すのに躊躇ったりしないように。
それ自体は、正直なところ井尾にとって悪い話ではなかった。
漫画やゲームを楽しむ井尾だったが、異世界転移や異世界転生した主人公が、初めて人やモンスターを殺したとこでウジウジとする光景は見飽きたものだったから。
また、自分がこれから異世界に飛ばされるといったことは分かったが、その転移先についての情報の類は何もない。
言葉や文字に関しては問題がないというのは分かったのだが。
そして……何よりも重要な、自分の才能。
流星魔法。
それはいわゆる隕石の類を使った攻撃魔法というのは分かったし、それこそゲームや漫画にもその手の魔法は出て来ることが多いので、何となく効果は分かる。分かるのだが……
「使いにくくないか、これ?」
それが井尾の正直な感想だった。
流星魔法が使えるというのは分かるが、それが具体的にはどんな魔法か分からず、頼りになるのは自分のオタク知識だけというのは、正直なところかなり心細い。
心細いが……それでも今はそうするしかないと考えれば、不思議と混乱することはなかった。……困っているのは間違いないが。
恐らくこれも先程の水晶の触った効果なのだろうと思っていると、不意に井尾は水晶から放たれる光に包まれ、次の瞬間には白い空間からその姿を消すのだった。
石……いや、違う。岩……それも違う。隕石。
そう、空から降り注ぐのは、まさに隕石としか表現出来ないような代物。
その隕石の大きさが、具体的にどのくらいのものなのかは、見ている者にも分からない。
遠くに存在しているので、その大きさを理解しろというのは難しい。
それは、実際にこの現象を起こした人物もまた同様だった。
「は、ははは……流星魔法って本当に文字通りの意味なのかよ……」
その一撃を放った人物は、崖の上から遠くに存在する無数の敵……ファンタジー小説としてはお馴染みで、その人物も日本にいたときにゲームや漫画を楽しんでいたので、分かる。
何よりも自分がこの世界にやって来たとき、何も知らない山の中で散々追いかけ回されたのだから、その姿を忘れるなどといったような真似が出来るはずもない。
その人物が半ば現実逃避をしている中、数百、数千……あるいは数万に届くのではないかと思えるようなゴブリンの軍勢に対し、天空から降ってきた隕石が真っ直ぐに落下してき……そして、着弾する。
轟っ!
そんな音が聞こえたような気がした男だったが、それはあくまでも気のせいではあるのかもしれない。
それでもかなり先の平原を進んでいたゴブリンの軍勢に隕石は落ちて……
「あれ?」
隕石が落ちたのに気が付いた人物は、何故か衝撃波が全く感じられないことに気が付き、首を傾げる。
そんな男の視線の先では、しかし隕石が落ちたのは間違いなく、ゴブリンの軍勢は致命的なまでの被害を受けていた。
だが、男の放った隕石の規模を思えば、かなり離れているとはいえ男のいる場所まで衝撃波や爆風がやってきてもおかしくはない。
だからこそ、男は何かあったら即座に山の中に逃げようとしていたのだが……そのようなものがやって来ることは一切なかった。
「これって、もしかして流星魔法だからか?」
男が知ってる限り、恐竜が絶滅したときに地球に降ってきた隕石の大きさは、十キロほどの大きさだったという。
それだけの大きさの隕石であっても、地球環境を激変させ、多くの……それこそ数え切れない生き物を絶滅させるだけの威力を持っていたのだ。
男が今回流星魔法で降らせた隕石の大きさはそこまで巨大ではないが、それでも周辺に大きな衝撃波や爆風はあってもいいはずだった。
しかし、一切その手のものがないのは男にとって幸運だった。
……ただし、幸運なのはあくまでも男にとってだけだ。
無数のゴブリンの軍勢に落下した隕石は、その周辺一帯には間違いなく強烈な衝撃波や爆風を巻き起こしていたのだから。
その範囲が具体的にどうやって決まっているのかは分からないものの、男は何故このようなことになったのだろうかと……半ば現実逃避気味に考えるのだった。
日本にある東北の田舎。
そこでは最近高校生が何人か続けて死ぬといったような事件があり、TV局や新聞、雑誌といったメディア関係の人間がやってきては色々と取材が行われていた。
遠藤井尾――某国民的RPGにおいて爆発魔法の名前は本人としてはあまり気にしていなかったが――は、そんな周囲の様子に面白くないものを感じつつも、特に何か行動をする訳でもない。
井尾本人は最近死んだ者たちとの付き合いはそこまでない。
同じ高校出身ではあったもののクラスは違い、オタク趣味をそれなりにオープンにしていた者たち……佐伯玲二たちとは違い、その趣味は隠していた。
そのため、何度か会話をしたことはあるが結局はその程度のことでしかなく、同期の者が死んだと言われてもそこまで悲しみの類は感じていなかった。
(今日は通販で本が届く予定だったな。ああ、そう言えば裁断機もそろそろ買い換える必要があるか。スキャナの方は……まだ問題ないだろ)
オタクであるというのを隠している以上、当然ながら漫画や小説を自分の部屋に大量に置いておく訳にはいかない。
結果として、井尾が辿り着いたのは電子書籍だった。
それも最初から電子書籍で購入するのではなく、本を買ってそれを自分で裁断機で裁断し、スキャナでスキャンするといったような方法を好む。
今日届く本でも電子書籍の製造を頑張ろうと思って自転車で進んでいたのだが……
「ちょっと待って下さい! 取材をさせて貰えますか!?」
そんな井尾の前に、不意にいきなり誰かが飛び出してくる。
いきなりのその行為に井尾は半ば反射的に自転車のブレーキをかけ……相手を回避するために自転車を動かし、次の瞬間には強い衝撃を受けて悲鳴を聞きながら意識が途切れるのだった。
「ん……えっと……? あれ? 俺、一体何をしてたんだっけ? 一体何がどうなって……っていうか、ここはどこだ?」
白い空間としか言いようがない、そんな空間。
どこまでも、どこまでも……それこそ永遠に続いてるのではないかと思えるような、そんな空間に井尾の姿はあった。
そして白い空間の一ヶ所には、巨大な水晶の姿がある。
井尾は自分が何故このような場所にいるのかは分からない。分からないが、自分から遠く離れた場所にある水晶に向かって歩き出す。
歩き、歩き、歩き、歩き、歩き……一体どれくらい歩き続けたのか分からないが、水晶との距離が縮まった様子はない。
「どうなってるんだ? 全く水晶に届かない。その割に体力が消耗したりもしないのは助かるけど」
井尾の体感時間にして数時間近くは歩き続けていたにもかかわらず、全く水晶のある場所に到着しない。
それこそ井尾が歩けば歩いた分だけ水晶が遠くに離れていってるような、そんな感じすらしている。
それでも何故か、本当に何故か井尾は歩みを止めることもなく、ただひたすらに延々と歩き続け……その上で、さらに数時間が経過したところでようやく井尾の前に水晶が存在していた。
「でかいな」
数時間……あるいは十時間以上歩き続けたにもかからわず、全く疲れも空腹も喉の渇きも感じないまま、井尾は水晶の前に立つ。
そんな井尾の前にある水晶は、とにかく巨大だった。
普通、水晶と言われて思い浮かべるのは、占い師が使うような丸い水晶だろう。
そういう意味ではこの水晶も丸いのは間違っていなかったものの、ただその大きさが違う。
それこそ一軒家くらいの大きさがある、巨大な丸い水晶だ。
自然の水晶でこんな物が出来るのか? と疑問に思った井尾だったが、そもそも現在の状況がとてもではないが普通の出来事ではない以上、普通や一般的、常識といったようなことを考えても意味はないだろうと判断する。
「これだけ大きかったから、いくら歩いてもなかなかここまで到着しなかったのか?」
そんな疑問を抱きつつも井尾はそっと手を伸ばして水晶に触れる。
「っ!?」
水晶に触れた瞬間、井尾の頭の中に様々な情報が入ってくる。
それは具体的にはここがどこなのか、そしてこれから自分がどうなるのかといったようなもので、同時に井尾の中にある根源や本質とも表現すべき存在を才能として目覚めさせる……と、そういうものだった。
「うおおおおおおっ!」
そのような行動をするのだから、当然のように井尾にとっても普通に受けいれられるようなものではない。
頭の中身を強引に掻き回されるような、偏頭痛が数十倍、数百倍の痛みで襲ってくるかのような……そんな激しい衝撃と激痛に、井尾は我知らず口から悲鳴が上がる。
悲鳴を上げ続け、一体どれくらいの時間が経ったのか、それは井尾本人にも分からない。
数秒ではないだろう。数十秒でもないだろう。数分という可能性はあるが、数十分という可能性もある。しかし、数時間はさすがにないだろうと思われ……そんな一種の拷問に近い時間が経過すると、不意に頭の中の激痛が消えた。
「うおおおお……え?」
唐突に、本当に唐突に消えた激痛に、井尾の口からは間の抜けた声が出る。
数秒前まで感じていた激痛は、間違いなく本物だった。
だが、その激痛が消えた瞬間、本当に綺麗さっぱりと激痛は消えてしまったのだ。
まるでTVのスイッチをON、OFFするかのように。
数秒前まで激痛に悲鳴を上げていただけに、井尾は呆気にとられた様子で周囲を見る。
もしかして、本当にもしかしての話だが、自分は夢でも見ていたのではないか、と。
だが、井尾の周囲に広がるのは相変わらずの白い空間のみ。
そして目の前にあるのは、巨大な……本当に巨大な水晶。
そんな状況を見て、少し荒れた息を整えた井尾は、今の自分に何が起きたのかを考え、すぐに理解する。
「なるほど。異世界に行っても問題ないように精神を強化されたのか」
正確には改変と呼ぶべきものなのだが、井尾にしてみれば改変ではなく強化であると自分で思い込む。
どうせなら自分が変えられたのではなく強くなったと、そう思いたかったのは当然の話だろう。
精神の強化……具体的には、敵を殺すのに躊躇ったりしないように。
それ自体は、正直なところ井尾にとって悪い話ではなかった。
漫画やゲームを楽しむ井尾だったが、異世界転移や異世界転生した主人公が、初めて人やモンスターを殺したとこでウジウジとする光景は見飽きたものだったから。
また、自分がこれから異世界に飛ばされるといったことは分かったが、その転移先についての情報の類は何もない。
言葉や文字に関しては問題がないというのは分かったのだが。
そして……何よりも重要な、自分の才能。
流星魔法。
それはいわゆる隕石の類を使った攻撃魔法というのは分かったし、それこそゲームや漫画にもその手の魔法は出て来ることが多いので、何となく効果は分かる。分かるのだが……
「使いにくくないか、これ?」
それが井尾の正直な感想だった。
流星魔法が使えるというのは分かるが、それが具体的にはどんな魔法か分からず、頼りになるのは自分のオタク知識だけというのは、正直なところかなり心細い。
心細いが……それでも今はそうするしかないと考えれば、不思議と混乱することはなかった。……困っているのは間違いないが。
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