大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

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一章 クソみたいな女神とクソみたいな異世界転移

第二十話 殴る魔術師

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 蘭丸さんが今回選んだ依頼はサンサン村と呼ばれる農村に現れた魔物化した三本角イノシシの討伐。依頼人曰く、三本角イノシシは農作物を食べつくすだけでなく、既に村人を殺してしまっているらしく、かなり危険な依頼だと分かる。

 蘭丸さん曰く、三本角イノシシは額に三本の強靭な角が生えているイノシシで、魔物化していなくても十分危険で被害が各地で多発しているらしい。

 今の俺の装備はあまりリーチの長くないブロードソードとナイフ数本と木の盾。近づいて倒すには少々心もとない装備だ。蘭丸さんが弓も使えるらしいが、生憎現在は修理に出しているらしい。

 となると頼りになるのは魔術師であるメアリーのみ!頼んだ!メアリー!遠距離からバンバン魔術を撃って倒してくれ!!











 ・・・・・・そう思っている時期が私にもありました。


「おらおらおらおらぁ!!どうしたクソイノシシ!!アンタの本気はそんなもんかぁ!?」

「「・・・・」」

「ひぃぃぃぃ!!」「あ、悪魔だべ・・・」

 ゴスッゴスッ・・・と骨を肉を血を拳で殴る音が村中に響き渡る。耕された畑に血肉がびちゃりびちゃりと飛び散り、意図せずに栄養が地面へと戻されていく。殴られているのは三本の立派な角を額に生やしたイノシシ・・・今回の討伐対象の三本角イノシシ君である。

「アタシをただの非力な女だと思って舐めたのが運の尽きよ!筋力なんて筋力増加のエンチャントかければいくらでも上げれるし、アンタを押さえつける体重だって、体重増加のエンチャントでどうにでもなるんだよ!!」

 対して、殴っているのは幸助でも蘭丸でもなく小柄な魔術師メアリーである。足りない筋肉を筋力増加の魔術で補い、体重は体重増加の魔術で補っている。更に拳は炎のエンチャントによって燃えており、イノシシの皮膚は既に焼け爛れている。

「成程・・・あの剣士が言っていた『役立たず』というのはこういう意味だったんだ」

 後方支援ではなく、前線で戦士の如く戦うから役立たず・・・という意味だったんだ。あんな戦い方を見せられたら前線職は組みたいとは思わないだろう。だって、自分の活躍の場を奪われるわけだし。

「おらおらぁ!もっと泣けぇ!このクソ豚がぁ!!」

「メアリー・・・メアリーさん」

「ああ!?」

「もう息してないよ、そのイノシシ」

「あ、ホントだ。・・・さてと」

 メアリーはイノシシに跨るのを止め、ゆっくりと立ち上がると、林の方を見る。林の方には木の陰に隠れる完全に怯え切った三本角イノシシが数匹いた。

「まだまだぁ!!」

「B・・・buhiiiiiiiiiiiiiiiiii!!」

 特にラコルト様のご加護とかは無いが、しばらくの間、三本角イノシシが出たサンサン村で取れる野菜はとても栄養価が高くなり、町でバカ売れしたらしい。栄養価が高い理由を知っている俺と蘭丸さんはサンサン村の野菜を見る度に血まみれのメアリーを思い出すようになってしまった。


「本っっっ当に!申し訳ございませんでしたぁ!!!!」

 依頼が終わり、城下町へと向かっている途中、メアリーが突然俺らの前へと立ちはだかり、頭をペコリと下げてきた。角度45度の素晴らしい頭下げである。いきなりの謝罪に驚いたが、恐らく討伐の時の謝罪だろう。

「私・・・昔から拳で戦うのが大好きで・・・そんな自分を変えたいと才能があるって言われた魔術師になったら買われると思ったんですが・・・エンチャントに興味の全てを惹かれて・・・未だにエンチャント系の魔術しか覚えていなくて・・・」

「すげぇ、物騒な生い立ち。戦国時代にこんな人いました?」

「いや、流石にわらべの頃からそんなに血気盛んなヤツはいなかった・・・いや、いたかもしれん」

 まじかよ、戦国時代怖いな・・・。

「もしかして、怪我させたというのもあの戦い方が原因?」

「・・・・・・はい」

 頬を赤らめて恥ずかしそうにうなずくメアリー。挙動はとても女の子らしく、可愛らしいが、理由が男でも引くくらい物騒だ。もしかして、あのコボルトの群れと戦った時、妙に草原が血で汚れていたのも彼女の暴走が原因か?

「物騒ですよね?何度も抑えようとしているんですが、戦いになると血が騒ぎだしちゃって・・・」

「それなら、1人でも依頼出来たんじゃないの?イノシシだってメアリー1人で半分倒してたじゃん」

「誰かに止めて貰わないとずっと暴れてしまうので・・・」

「成程ね・・・ねぇ、メアリー。そのクセは直したいと思ってる?」

「直したいというか・・・自分でちゃんと制御したいというか・・・」

 確かに魔術師としては役立たずかもしれない。しかし、攻撃役としてはかなり役に立つのではないか?幸助は考えた。覚えているエンチャント魔術の数も多いようだし、遠距離からの攻撃手段を持たないという致命的な面に目を瞑れば、このメアリー、かなり有能かもしれない。

 それに人間相手でもあんな事をすると考えたら、このままさよならしてはいけないような気がする。自分の事しか考えない俺だが、流石に目の前に問題の種があるのなら、今のうちに潰しておくべきだろうという考えは持っている。

「じゃあさ、俺のパーティに入って抑えられるように頑張ってみない?」

「ふぇ!?い、良いんですか!?」

「ああ、君のエンチャント魔術凄い優秀だし、ステゴロ癖だって、きっと矯正できる!ね?蘭丸さん!」

「ああ。えんちゃんとがあれば幽霊や刀が効かぬ相手の時にも一太刀喰らわせる事ができるのだろう?それを可能にできるのなら十分ではないか」

「い、良いんですか?本当に本当に良いんですか!?」

「ああ、勿論さ」

「う・・・うううう・・・・や、やったぁ・・・ついに、ついに私も!パーティに入れたぞぉぉぉぉ!!」

 余程嬉しかったのだろう。メアリーは雄たけびを上げて喜んだ。ただ、ちょっと・・・いや、かなり雄たけびが多きいが・・・。

「Guruuuuuuu・・・」

「「「えっ・・・」」」

 道の横にある森から獣の呻き声が聞こえてくる。どうやら雄たけびで呼び寄せてしまったようだ。

「すみません!すみません!早速迷惑かけちゃって!!・・・ですが、安心してください!この獣は私が・・・アタシが!倒してやるからよぉ!!」

 一気に戦闘モードに入ったメアリーは森の獣に向かって、走っていった。筋力を強化して誰よりも速く森の中へと侵入していく。その様を見て、直すのには相当の時間が必要だなと幸助は思うのであった。
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