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二章 濡れ衣の男を救え!!
第三十一話 蘇る記憶
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★
「ここは何処だ?先程までじぇいく殿に記憶を蘇らせてもらう為に酒場にいたはずだが・・・」
目を開けると、そこは未知の場所だった。白の大地と空にポツンと置かれた大量の書物。あまりにも不思議な空間で警戒してしまった拙者は刀を抜こうとするが、腰には刀が無かった。
「無い!?い、一体何処に落としたというのだ!!」
武士の命である刀を無くし、焦っていると、何処からともなく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『ランマルさん、アンタは記憶の神の力によって、記憶の図書館へと辿り着きました』
「記憶の図書館・・・?」
確かに以前、幸助を赴いた図書館という大量の書物が納められた施設に良く似ている。つまりは、この書物1つ1つが拙者の記憶なのか?
『これから先は貴方自身で失った記憶を探して下さい』
「己自身で探せ・・・か」
ずらりと並ぶ書物が納められた棚の数は凡そ二十一個。各々に番号が振られており、一個の棚には数十もの書物が納められている。
「うむ・・・これは探すのは至難の業かもしれぬ」
目の前の困難に頭を悩ませたその時、雷にも良く似た閃きが拙者の頭に落ちてきた。
「棚の数は二十一・・・拙者の歳は今年で二十二(※21歳)・・・も、もしや・・・!!」
棚の数と歳は比例しているのではないか?いや、そうに違いない。試しに一番書物の数が少ない二十一の棚の書物を開いてみる。すると、そこには──────
「こ、これは・・・!拙者が幸助と初めて出会った時の事が書かれている!!やはり、拙者の読みは当たっていたようだ!」
仕組みが分かれば話は早い。拙者は早速、二十と書かれた棚を調べる。二十番の棚に保管された書物は歪な姿をしていた。
一つ一つの書物に薄っぺらい黒い鎖のような物が巻き付いているのだ。
「じぇいく殿!聞こえているだろうか!この、書物に巻き付いた黒い鎖のような物は一体何なのだ?」
『恐らくそれは、何者かによって記憶を封じられている証拠です。契って読んで見て下さい!!』
女神あもーらの仕業だろう。おのれ、あの女・・・!
「あの女への怒りはひとまず置いておこう。今は・・・・フンッ!!」
言われた通りに黒い鎖を引きちぎる。禍々しい見た目だったが、大した強度は無かったようだ。さて──────
「読むとしようか」
白く光る床に胡坐をかきながら書物を読み進めた。
★
「ごほっ・・・!ごほっ・・・!」
隙間風が容赦なく入ってくる小屋の中で男は咳をする。咳と共にどす黒い血が口から吐き出され、男が使う布団を汚す。
男の顔には無数の丘疹ができ、身体中には水ぶくれのある発疹が発生。手足は壊死し、真っ黒になってしまっている。男のかかった病気の名はペスト。日本では黒死病と呼ばれ、恐れられている海外から来た病気である。
男は美丈夫でたくましい武士だったが、最早その姿は跡形もなく、無くなっており、吹けば消えてしまう蝋燭の炎のような存在と化してしまった。
男はとても優しかった。故に部下に己のかかった病にかからないように山奥の小屋に籠り、静かに死を待っていた。しかし、それを許さない者が一人いた。
その人物は乱暴に小屋の引き戸を開けて我が物で小屋の中へと入って来た。
「よお、探したぞ!蘭丸!!」
「の、信奈様・・・」
人物の名は尾田信菜。美しい容姿を持つ信菜は、男が仕える戦国の世では珍しい女武将である。
「こんな紙切れ一枚置いて、私の前からいなくなるとは一体どういう事だ!?」
「も、申し訳ございません・・・ごほっ・・・!ごほっ・・・!!」
信菜は男・・・もとい蘭丸を探していたようだ。口調では、とても怒っているが、今にも泣きそうな顔をしている。
「せ、拙者は・・・もう、長くは生きられません・・・で、ですから信奈様・・・拙者の事は忘れて人生を謳歌して下さいませ」
蘭丸は察していた。自分の死期を。あと数時間もすれば死ぬと。故に忘れてほしいと彼女に言ったのだが、どうやら無理そうだ。
「ば、ばかやろぉ・・・!お前無くして生きれるわけがないだろぉ・・・!お前は、私の伴侶なんだぞ?一生、私の下で仕えなくてはいけないんだぞ?それなのに、何故先に行ってしまうのだ・・・!蘭丸!!」
血みどろの布団に顔を埋め、子供のように泣きわめく信菜。そんな彼女の頭を髪を梳くように撫でる。
「嗚呼、拙者はなんて幸せ者なのでしょう・・・捨て子だった身で武家の者に拾ってもらっただけでなく、仕えた武将にこんなにも愛されるとは・・・」
「そうだ!お前は身の丈に合わない程の幸せを手にした!!だから、返すべきだろう!私に!この、私に・・・!!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で迫る信菜。しかし、それは仏や神に願っても叶わないようだ。
「すみません・・・それは無理のようです。お先に失礼します・・・信菜様・・・」
ゆっくりと目を閉じ、眠りにつく蘭丸。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!蘭丸ーーーーーー!!」
彼の眠りの意味に即座に気付いた信菜は天に向かって泣きわめく。しかし、どんなに叫んでも、叩いても、揺らしても、蘭丸が再び目を覚ます事はない。その身体にはもう蘭丸はいないのだから・・・。
★
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!」
読み終わった瞬間、頭に突き刺すような痛みと走り、同時に全てを思い出す。そうだ、拙者は・・・。
「七の時に小林家に拾われ、信菜様に十七の時から仕えていたんだ!そして、信菜様と歳の近い拙者は信菜様と恋仲にあった・・・!!思い出した!全て思い出したぞ!!」
一つの記憶を思い出したのをきっかけに今まで一年間、もやがかかって中々思い出せなかった記憶が連鎖的に蘇っていく。
「血は繋がっていなかったが、弟もいた!背丈が高く、粗暴だったが、優しい奴だった・・・」
棚の書物たちを縛り付けていた黒い鎖が氷のように音を立てて砕けていく。
「父上、母上。血も繋がっていない拙者を一人前になるまで育ててくれた命の恩人・・・」
あまりの嬉しさに涙が流れてくる。
「葉山!森田!深山!守谷!近藤!深谷!小須田!宮本!拙者についてきてくれた頼もしい仲間達!!」
激しい戦の日々の記憶が色づいていく。
「戻って来た!!戻って来たぞぉぉぉぉぉ!!!」
拙者は白く光る天井に向けて、歓喜の雄叫びを上げた。
「ここは何処だ?先程までじぇいく殿に記憶を蘇らせてもらう為に酒場にいたはずだが・・・」
目を開けると、そこは未知の場所だった。白の大地と空にポツンと置かれた大量の書物。あまりにも不思議な空間で警戒してしまった拙者は刀を抜こうとするが、腰には刀が無かった。
「無い!?い、一体何処に落としたというのだ!!」
武士の命である刀を無くし、焦っていると、何処からともなく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『ランマルさん、アンタは記憶の神の力によって、記憶の図書館へと辿り着きました』
「記憶の図書館・・・?」
確かに以前、幸助を赴いた図書館という大量の書物が納められた施設に良く似ている。つまりは、この書物1つ1つが拙者の記憶なのか?
『これから先は貴方自身で失った記憶を探して下さい』
「己自身で探せ・・・か」
ずらりと並ぶ書物が納められた棚の数は凡そ二十一個。各々に番号が振られており、一個の棚には数十もの書物が納められている。
「うむ・・・これは探すのは至難の業かもしれぬ」
目の前の困難に頭を悩ませたその時、雷にも良く似た閃きが拙者の頭に落ちてきた。
「棚の数は二十一・・・拙者の歳は今年で二十二(※21歳)・・・も、もしや・・・!!」
棚の数と歳は比例しているのではないか?いや、そうに違いない。試しに一番書物の数が少ない二十一の棚の書物を開いてみる。すると、そこには──────
「こ、これは・・・!拙者が幸助と初めて出会った時の事が書かれている!!やはり、拙者の読みは当たっていたようだ!」
仕組みが分かれば話は早い。拙者は早速、二十と書かれた棚を調べる。二十番の棚に保管された書物は歪な姿をしていた。
一つ一つの書物に薄っぺらい黒い鎖のような物が巻き付いているのだ。
「じぇいく殿!聞こえているだろうか!この、書物に巻き付いた黒い鎖のような物は一体何なのだ?」
『恐らくそれは、何者かによって記憶を封じられている証拠です。契って読んで見て下さい!!』
女神あもーらの仕業だろう。おのれ、あの女・・・!
「あの女への怒りはひとまず置いておこう。今は・・・・フンッ!!」
言われた通りに黒い鎖を引きちぎる。禍々しい見た目だったが、大した強度は無かったようだ。さて──────
「読むとしようか」
白く光る床に胡坐をかきながら書物を読み進めた。
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「ごほっ・・・!ごほっ・・・!」
隙間風が容赦なく入ってくる小屋の中で男は咳をする。咳と共にどす黒い血が口から吐き出され、男が使う布団を汚す。
男の顔には無数の丘疹ができ、身体中には水ぶくれのある発疹が発生。手足は壊死し、真っ黒になってしまっている。男のかかった病気の名はペスト。日本では黒死病と呼ばれ、恐れられている海外から来た病気である。
男は美丈夫でたくましい武士だったが、最早その姿は跡形もなく、無くなっており、吹けば消えてしまう蝋燭の炎のような存在と化してしまった。
男はとても優しかった。故に部下に己のかかった病にかからないように山奥の小屋に籠り、静かに死を待っていた。しかし、それを許さない者が一人いた。
その人物は乱暴に小屋の引き戸を開けて我が物で小屋の中へと入って来た。
「よお、探したぞ!蘭丸!!」
「の、信奈様・・・」
人物の名は尾田信菜。美しい容姿を持つ信菜は、男が仕える戦国の世では珍しい女武将である。
「こんな紙切れ一枚置いて、私の前からいなくなるとは一体どういう事だ!?」
「も、申し訳ございません・・・ごほっ・・・!ごほっ・・・!!」
信菜は男・・・もとい蘭丸を探していたようだ。口調では、とても怒っているが、今にも泣きそうな顔をしている。
「せ、拙者は・・・もう、長くは生きられません・・・で、ですから信奈様・・・拙者の事は忘れて人生を謳歌して下さいませ」
蘭丸は察していた。自分の死期を。あと数時間もすれば死ぬと。故に忘れてほしいと彼女に言ったのだが、どうやら無理そうだ。
「ば、ばかやろぉ・・・!お前無くして生きれるわけがないだろぉ・・・!お前は、私の伴侶なんだぞ?一生、私の下で仕えなくてはいけないんだぞ?それなのに、何故先に行ってしまうのだ・・・!蘭丸!!」
血みどろの布団に顔を埋め、子供のように泣きわめく信菜。そんな彼女の頭を髪を梳くように撫でる。
「嗚呼、拙者はなんて幸せ者なのでしょう・・・捨て子だった身で武家の者に拾ってもらっただけでなく、仕えた武将にこんなにも愛されるとは・・・」
「そうだ!お前は身の丈に合わない程の幸せを手にした!!だから、返すべきだろう!私に!この、私に・・・!!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で迫る信菜。しかし、それは仏や神に願っても叶わないようだ。
「すみません・・・それは無理のようです。お先に失礼します・・・信菜様・・・」
ゆっくりと目を閉じ、眠りにつく蘭丸。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!蘭丸ーーーーーー!!」
彼の眠りの意味に即座に気付いた信菜は天に向かって泣きわめく。しかし、どんなに叫んでも、叩いても、揺らしても、蘭丸が再び目を覚ます事はない。その身体にはもう蘭丸はいないのだから・・・。
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「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!」
読み終わった瞬間、頭に突き刺すような痛みと走り、同時に全てを思い出す。そうだ、拙者は・・・。
「七の時に小林家に拾われ、信菜様に十七の時から仕えていたんだ!そして、信菜様と歳の近い拙者は信菜様と恋仲にあった・・・!!思い出した!全て思い出したぞ!!」
一つの記憶を思い出したのをきっかけに今まで一年間、もやがかかって中々思い出せなかった記憶が連鎖的に蘇っていく。
「血は繋がっていなかったが、弟もいた!背丈が高く、粗暴だったが、優しい奴だった・・・」
棚の書物たちを縛り付けていた黒い鎖が氷のように音を立てて砕けていく。
「父上、母上。血も繋がっていない拙者を一人前になるまで育ててくれた命の恩人・・・」
あまりの嬉しさに涙が流れてくる。
「葉山!森田!深山!守谷!近藤!深谷!小須田!宮本!拙者についてきてくれた頼もしい仲間達!!」
激しい戦の日々の記憶が色づいていく。
「戻って来た!!戻って来たぞぉぉぉぉぉ!!!」
拙者は白く光る天井に向けて、歓喜の雄叫びを上げた。
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