大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

文字の大きさ
187 / 212
最終章 今こそ復讐の時

第六話 何か面倒くさい奴がやってきた

しおりを挟む
 標高3000mのブラックスミスの山。幸助の元居た世界の富士山には少々劣る標高だが、地上で暮らす人間にとっては、酸素も薄い上に気温が低く、厳しい環境だ。

 普通に暮らすなら不便しかない場所だが、トレーニングにはもってこいの場所だった。普段よりも厳しい環境での訓練やトレーニングは身体能力の向上に繋がる。アダム鉱石の剣が完成するまで暇で仕方ない幸助と蘭丸は木剣と木刀を用いて模擬試合を行っていた。

「はぁっ!!」

「甘いわ!!」

 幸助の背中に木刀の殺傷力は無いが、非常に重い一撃が入る。幸助は背中をさすりながら立ち上がり、蘭丸の方を見た。

「イテテ・・・流石、蘭丸さん。対人戦においては右に並ぶ者はいませんね」

「褒めても何も出ないぞ。それに褒めている暇があるなら構えろ。続けるぞ」

「・・・はいっ!」

 普段は無口で優しい蘭丸だが、幸助を鍛えるとなると、態度が一変してスパルタ師範へと変貌する。戦国という厳しい時代に生まれた名残だろうか。しかし、そのお陰で幸助の実力はメキメキと竹のように成長していっている。幸助という戦士が完成するのも間もなくだろう。

 しかし、ずっとトレーニングを続けられるわけはない。人間には動く為のエネルギー、食事が必要だ。ブラックスミスの殺風景な鍛冶場から出てきた銀髪の少女メアリーは両手にサンドイッチを持って幸助達の方へと走ってきていた。

「おぉぉぉい!お二人ともぉぉ!!そろそろランチの時間ですよぉぉ!!」

「む・・・もうそんな時間か。幸助、稽古を続ける前に食事を取るとしよう」

「そうですね」

 腹は減っては戦は出来ぬ。それどころかありとあらゆる作業のクオリティがグレートダウンしてしまう。鍛冶職人もアダム鉱石を叩くのを止め、サンドイッチをほおばり始めた。

「悪いな。まだ、ロクに剣の形も形成できていないのに食い物を貰って」

「いえ、気にしないで下さい」

 2m級の大きな金床の上を見ると、少し細長くなったエメラルド色に輝くアダム鉱石がポツンと置かれている。エメラルド色なだけで透けてもいないし、宝石でもない。剣になっていない中途半端な状態だが、ついこの手で握ってしまいたくなるほどに魅力を持つ鉱石だ。

 メアリーを膝の上に座らせ、サンドイッチを頬張り終えると、ほぼ同時に蘭丸さんも完食し終えていた。リスのように頬張らず、顔の形が崩れないようにゆっくりと食べていたはずなのに、どうしてこんなにも食べるのが早いのだろうか。

「それでは、午後は鎧を纏った状態でやる事にしよう。身を守る鎧を身に着けているだけで動きは大きく変わってくるからな」

「分かりました。お願いします」

「ねぇねぇ、コウスケ君とランマルさん。そのトレーニング、ワタシも参加して良いですかね?ずっと、鍛冶場でぼーっと本読んでいるのも少し飽きてきたんで」

 そういうボニーさんの手には『SMの境地』という本が握られている。信憑性は微妙だが、神が使っていたという鍛冶場で何て言うものを見ているのだろうかこの変態は。

「私も!私も!勿論準備体操はコウスケさんと!・・・そして!ウォーミングアップの殴り合いは勿論コウスケと!!」

 日に日にスキンシップが激しくなっているメアリーも参加するようだ。スキンシップは良いのだが、発情した時に戦闘モードになるのは心臓に悪いからやめて欲しい。

「さぁて!始めますか!!」

 準備体操を終えて、木剣を手に取る。しかし、目の前に持ってきた木剣には刃の部分は残っておらず握っている持ち手の部分しか残っていなかった。短くなってしまった木剣の先についた黒い焦げ、火事の時のような匂いに地面に落ちた折れた木刀の刃。木剣の刃が落ちている地面の少し先には黄色の光だけで構成された矢が深々と地面に刺さっており、刺さっている矢の角度からして天から撃たれた矢だった。

 確認の為に太陽が眩しい青い空を見上げると、雲一つない快晴の空には純白の翼を背中から生やした思わず生唾を飲んでしまうような美少女が俺を獲物として目で捉えていた。美少女の手には弓のような湾曲した光が握られており、片方の手には木剣を破壊した矢と同じものが握られている。

 天を鳥以上に自由に飛ぶ、人型の生物を人間はこう呼ぶ。天使と。神の使いの天使が俺を狙っている。一瞬何故かと思ったが、一方的にアモーラに敵意を向けているのではない事を思い出す。あの天使はアモーラの使いだ。ついに自分の信仰者ではなく、直属の部下を使い始めたのか!

 天使は矢を弓に番え、同じく光で出来た弦を力いっぱい後ろへ引く。狙いを定めているのは俺の脳天。俺は下手に走らず、その場で立ち止まる。

「・・・コウスケさん」「コウスケ君」「幸助」

 仲間も俺の視線で天使の存在に気付いていたうようだ。幸いにも天使の数は1人。しかも俺だけを狙っている。

「メアリー。皆の武器を持ってきてくれ。出来れば俺の反撃の盾も」

「分かりました」

「ありがとう・・・さてと」

 反射神経は良い方だが、天使の矢を避ける事は出来るのだろうか?さっき、木剣を破壊された時は不意打ちだったとは言え、まるで見えなかった。果たして盾が届くまで脳か心臓を貫かれずに済むだろうか・・・。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...