11 / 16
11
しおりを挟む
それにしても、相変わらず胡散臭い奴。
マルクルは柔らかく滑らかな耳に心地よい声をしていた。
その声で、愛を語れれば一夜の間違いであっても喜び身を捧げる者は多く、多くの侍女達が餌食になった。 レーネ様を思えば腹立たしいけれど、レーネ様に手を出されるよりは良いと割り切り考えている。
腹を立てつつもレーネは戸惑いを覚えていた。
マルクルの語る言葉の大半は視点を変えて見える真実として許容できるものだと言うのが……昔から厄介なのだと思い出す。
昔から、傲慢で尊大で、周囲に対して命令的だった。
今は……まともに見せている所が、周囲の支持を集め問題になっているのですよね。 以前はもっと簡単だったのに……。
支配的で暴力的、独善的で傲慢、周囲を下僕扱いし暴力をふるう。 ソレに反論しようなら国王陛下に嘘の報告をし制裁を与えていた。 ソレを止めていたのは王妃とフェルザーだった。
今はそんな分かりやすい事はしていませんからねぇ……まさか文官に仕事を振っていたなんて……他にも色々と裏がありそうですよね。 見せては、くれませんが……。
レーネに対する抑圧的な言葉を周囲に聞かれるような失態だけは、気を付けているマルクルなだけにノーラは何処か安易に考えていた。
殿下は子供のころから問題が多かった。
ノーラは思い出す。
殿下の価値観に危機意識を覚えた王妃様は、もし殿下の傲慢が国を亡ぼす事になった時のために、殿下と同等の地位を与える者が必要だと進言した。
その時も、国王様と王妃様は大きな喧嘩を行い、長引かせ周囲を不安にさせたものだった。間に入ったのはバルテン公爵家に婿入りした国王陛下の弟君。
王家の男子は恋愛に積極的で、盲目的なところがあるのだ。
『兄上こそが、マルクルを信用していない。 私にはそのように見えますね。 マルクルを信用するなら王妃の提案を受けるべきでしょう。 何も問題がなければ、何も無いままマルクルは王位を継ぐのですから』
そう言われ……フェルザー様に第二王位継承権を与え、全てにおいて殿下と対等とする権利を与えた。 ソレ殿下の抑止としては幼くして公爵家を出て王宮で住まうと言う事。 そんな彼のために公爵は王宮内に屋敷と使用人を配備した。 それが、現在レーネが使用している屋敷と使用人なのだ。
昔は……酷かったなぁ……。
腹は立つが、殿下はレーネ様に慕われマシになった。 レーネ様があんな野郎のものになると思えば腹立たしいが……留学先から戻ってからと言うもの、殿下は多少の進歩を遂げている。 ……それがあのアリアーヌ姫のお陰と聞けばとても複雑な気持ちになるのだ……マシになったのならレーネ様を大切にしてくれればいいのに。
あと、仕事しろ。
思い出と、現在進行中の出来事が入り乱れながら、ノーラは色々考えていたが国王夫婦が戻ってきた事で、身を引き締めた。
「良かった。 お戻りになってくださって。 私、嫌われてしまったかと……」
アリアーヌ姫が悲しそうな顔をすれば、マルクルが慰める。
「姫を嫌いになれる者なんかいるはずありませんよ」
「そう、かしら?」
チラチラと国王夫婦を見れば王妃は、笑顔を向けた。
「えぇ、マルクルはとても素敵な女性を連れ帰ってきたと、噂になっていますし、私もとても感謝していますのよ。 それで、その感謝の気持ちとして、マルクルとレーネの婚姻を無効にしてしまおうと考えておりますの」
「えぇ!! それは……」
「喜んではくれませんか?」
「いえ……その、レーネ様とは先ほどのあの可愛らしい方ですよね? あのようなお可愛らしい方を悲しませるなんて……とても心苦しくて……。 あの、私は、あの子と仲良くなって共にマルクル様を支えていきたいと考えておりますの。 どうか、紹介していただけないでしょうか?」
「あの子は、とても繊細で……最近は体調も悪くて表に出る事は控えさせておりますの。 どうか、勘弁してやってくださいませ。 それで、マルクル、貴方とあの子はもう夫婦ではないそのように考えるように」
「ですが……私は、いえ……私達は、このアリアーヌ姫とは違う愛ではありますが、確かに愛し合っていたのは事実です。 勝手に離縁等と決めつけないで下さい。 それと……お母様は政治には疎い方なので知らないでしょうが、王族の離婚手続きはとても難しいのですよ?」
「それは子供がいる場合でしょう。 貴方とレーネのように身体の関係が無いとなれば、簡単に手続きが済みますわ」
「……なぜ、無いと言えるのですか?」
「あれば分かります。 それにあの子には常に侍女と護衛がついていますからね。 貴方は其方のアリアーヌ姫様を幸せにする事だけをお考えなさい」
自分の血を引いた息子マルクルと、娘のようにかわいがっているレーネがずっと幸せに王宮で過ごしてくれる。 そんな夢をあきらめきれない国王陛下は……テーブルの下で延々と太腿を王妃につねられながら、沈黙を保つのだった。
マルクルは柔らかく滑らかな耳に心地よい声をしていた。
その声で、愛を語れれば一夜の間違いであっても喜び身を捧げる者は多く、多くの侍女達が餌食になった。 レーネ様を思えば腹立たしいけれど、レーネ様に手を出されるよりは良いと割り切り考えている。
腹を立てつつもレーネは戸惑いを覚えていた。
マルクルの語る言葉の大半は視点を変えて見える真実として許容できるものだと言うのが……昔から厄介なのだと思い出す。
昔から、傲慢で尊大で、周囲に対して命令的だった。
今は……まともに見せている所が、周囲の支持を集め問題になっているのですよね。 以前はもっと簡単だったのに……。
支配的で暴力的、独善的で傲慢、周囲を下僕扱いし暴力をふるう。 ソレに反論しようなら国王陛下に嘘の報告をし制裁を与えていた。 ソレを止めていたのは王妃とフェルザーだった。
今はそんな分かりやすい事はしていませんからねぇ……まさか文官に仕事を振っていたなんて……他にも色々と裏がありそうですよね。 見せては、くれませんが……。
レーネに対する抑圧的な言葉を周囲に聞かれるような失態だけは、気を付けているマルクルなだけにノーラは何処か安易に考えていた。
殿下は子供のころから問題が多かった。
ノーラは思い出す。
殿下の価値観に危機意識を覚えた王妃様は、もし殿下の傲慢が国を亡ぼす事になった時のために、殿下と同等の地位を与える者が必要だと進言した。
その時も、国王様と王妃様は大きな喧嘩を行い、長引かせ周囲を不安にさせたものだった。間に入ったのはバルテン公爵家に婿入りした国王陛下の弟君。
王家の男子は恋愛に積極的で、盲目的なところがあるのだ。
『兄上こそが、マルクルを信用していない。 私にはそのように見えますね。 マルクルを信用するなら王妃の提案を受けるべきでしょう。 何も問題がなければ、何も無いままマルクルは王位を継ぐのですから』
そう言われ……フェルザー様に第二王位継承権を与え、全てにおいて殿下と対等とする権利を与えた。 ソレ殿下の抑止としては幼くして公爵家を出て王宮で住まうと言う事。 そんな彼のために公爵は王宮内に屋敷と使用人を配備した。 それが、現在レーネが使用している屋敷と使用人なのだ。
昔は……酷かったなぁ……。
腹は立つが、殿下はレーネ様に慕われマシになった。 レーネ様があんな野郎のものになると思えば腹立たしいが……留学先から戻ってからと言うもの、殿下は多少の進歩を遂げている。 ……それがあのアリアーヌ姫のお陰と聞けばとても複雑な気持ちになるのだ……マシになったのならレーネ様を大切にしてくれればいいのに。
あと、仕事しろ。
思い出と、現在進行中の出来事が入り乱れながら、ノーラは色々考えていたが国王夫婦が戻ってきた事で、身を引き締めた。
「良かった。 お戻りになってくださって。 私、嫌われてしまったかと……」
アリアーヌ姫が悲しそうな顔をすれば、マルクルが慰める。
「姫を嫌いになれる者なんかいるはずありませんよ」
「そう、かしら?」
チラチラと国王夫婦を見れば王妃は、笑顔を向けた。
「えぇ、マルクルはとても素敵な女性を連れ帰ってきたと、噂になっていますし、私もとても感謝していますのよ。 それで、その感謝の気持ちとして、マルクルとレーネの婚姻を無効にしてしまおうと考えておりますの」
「えぇ!! それは……」
「喜んではくれませんか?」
「いえ……その、レーネ様とは先ほどのあの可愛らしい方ですよね? あのようなお可愛らしい方を悲しませるなんて……とても心苦しくて……。 あの、私は、あの子と仲良くなって共にマルクル様を支えていきたいと考えておりますの。 どうか、紹介していただけないでしょうか?」
「あの子は、とても繊細で……最近は体調も悪くて表に出る事は控えさせておりますの。 どうか、勘弁してやってくださいませ。 それで、マルクル、貴方とあの子はもう夫婦ではないそのように考えるように」
「ですが……私は、いえ……私達は、このアリアーヌ姫とは違う愛ではありますが、確かに愛し合っていたのは事実です。 勝手に離縁等と決めつけないで下さい。 それと……お母様は政治には疎い方なので知らないでしょうが、王族の離婚手続きはとても難しいのですよ?」
「それは子供がいる場合でしょう。 貴方とレーネのように身体の関係が無いとなれば、簡単に手続きが済みますわ」
「……なぜ、無いと言えるのですか?」
「あれば分かります。 それにあの子には常に侍女と護衛がついていますからね。 貴方は其方のアリアーヌ姫様を幸せにする事だけをお考えなさい」
自分の血を引いた息子マルクルと、娘のようにかわいがっているレーネがずっと幸せに王宮で過ごしてくれる。 そんな夢をあきらめきれない国王陛下は……テーブルの下で延々と太腿を王妃につねられながら、沈黙を保つのだった。
65
あなたにおすすめの小説
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。
クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」
平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。
セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。
結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。
夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。
セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。
夫には愛人がいた。
愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される…
誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
白い結婚はそちらが言い出したことですわ
来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかパーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる