素直に同棲したいって言えよ、負けず嫌いめ!ー平凡で勉強が苦手な子が王子様みたいなイケメンと恋する話ー

美絢

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9.結婚するから

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 動かなくなった理人をどうにか立ち上がらせた。呆然としていたけど、課題の問題を見せるとペンを動かした。気まずさを埋めるように分からないところを聞きまくる。
 どうにか課題が終わって、時刻は8時を過ぎている。いつの間にか理人がデリバリーを頼んでくれていた。まだ時間があったのでバスソルトは譲ることにした。ソファに寝転がりながらスマホを眺める。

「…偏差値鬼すぎんだろ」

 理人の親の大学は医学部の中でも群を抜いている。俺でも知ってる大学だったし他の学部も異次元レベルの偏差値だ。もはや努力でどうにかなる数字ではない。高校だって、本当はもっと偏差値の高いところに行けた。

 理人が今の高校を選んだ理由は家から近いから。
 そして俺が高校を選んだ理由は理人がいるから。どちらの理由も将来の決め手には弱すぎる。

「あれ、穂積じゃん」

 メッセージを知らせるアイコンをタップする。うつ伏せになった。

「…もう球技大会の季節か」

 この間体育祭が終わったと思ったのに、時間が流れるのは早い。競技決めは心理戦である。
 この学校の球技大会の種目は4つ。バスケットボール・サッカー・ドッジボール・テニスである。一番人気がないのがテニスだ。クラスから2人が代表としてダブルスを組む。負ければ早く終われるが競技人数の関係から必然的に目立つ。
 逆に一番人気なのはサッカー。人数が多いから少しサボっても目立たない。でも人気だからジャンケンで負ければテニスにされる可能性がある。俺は思案した。

「ドッジか、…でも残ったらいやだよなぁ」

 静かに目を瞑る。昔からボールは取れないのに避けるのは天才的にうまかった。ドッジボールは最後の一人になる可能性がある。
 バスケットボールは走る距離が多いから疲れる。サッカーに比べて人数も少ないし突っ立っていたら目立つだろう。穂積といてなんだが、俺は目立ちたくなかった。

「なら僕もドッジにする」

 いつの間にか理人がいた。お揃いのスウェット着ている。顔を見上げた。

「いやいやお前はテニスだろ」
「テニスはもう十分。スオと同じのがいい」

 僕が当ててあげる、と笑った。ちなみにこの男、2年連続テニスで優勝している。史上初かは知らないが3連覇まであと1勝。自分にボールを当てたいから、という理由で棄権させる訳にはいかない。

「終わったら見に行くから、な?頼むよテニスにして!」
「…本当に見にくる?」
「た、多分?」
「ドッジ」
「嘘だって!絶対行くから勝ち残って待ってて!」

 思わず視線を逸らした。梅雨のこの時期にわざわざ外に行きたくはない。胡散臭いものを見るような目をされた。
 ちなみにデスマッチは球技大会に向けての練習である。これだけ意気込んでテニスを選ばないなんて血迷いすぎだ。何より理由がバレたらファンを敵に回す。
 …話している途中で配達を知らせる通知が鳴った。

「ちょっと行ってくる!」

 逃げるように部屋を出た。

「ちょっとハワイに行こうか」

 戻ってきて開口一番に言われた。ちょうど靴を履いていたからそのまま行こう、として立ち止まる。思わず頷きそうになって急いで首を振る。

「学校」
「夏休み」
「…?学校!」
「夏休み」

 同じ言葉が続く。我が校は進学校なので夏休みには夏期講習がある。理人のクラスは俺たちよりも更にカリキュラムが多い。とてもじゃないけどハワイに行く暇なんてない。

「…時間」
「作る」
「………お金?」
「出す」

 単語での会話が続く。百歩譲ってハワイに行くのはいい。時間を作ることもできなくはない。しかしお金だけはダメだ。

「どうしてハワイ?」
「結婚するから」
「へぇ~おめでとう」

 理人には兄がいる。もしかして結婚するのだろうか。でもこの会話、玄関じゃなくても絶対できる。とりあえず手に持ったピザが熱い。一刻も早く置いてすぐにでも食べたい。そんなことを考えていると理人がピザを奪った。

「続きはリビングで」

 CMかよ…と思わず呟いてしまう。ウェイトレスがお皿を持つようにピザを持った。そのままご案内されてリビングのテーブルに腰を下ろした。
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