1 / 20
1話
しおりを挟む
総代として宣誓を読む声に、鼓動が早まるのを感じる。
無意識にブレザーの胸の辺りを掴んで、その姿に見惚れていた。
この世界には大きく分けて3つの階級が存在する。
ーーー王族・貴族・平民である。
王族は今は3人しか居なくて、その1人が彼だった。
「ミコト、礼、礼!」
「…あっ」
俺は慌てて頭を下げる。
どうやら彼に見惚れていてタイミングを逃したらしい。
幼馴染であり、親友でもあるリノが声を顰めて脇腹を小突いた。
気づいたら総代の挨拶は終わっていて、俺は脳内に焼きついた彼の姿を思い出す。
現実に話すことは難しいけど、想うことは自由のはずだ。
「毎年思うけど飽きない?毎回フリーズしてるよね?」
「うぅ…だってカッコいいんだもん…」
「まあ、確かにミカド様はかっこいいよね。オレはタイプじゃないけど」
式典後、渡り廊下を歩きながらまた彼の姿を思い出す。
ミカドーーーそれが彼の名だ。
王族であり、俺の想い人であり、全校生徒の憧れでもある。
「まぁでも、今年で最後だしね。見れてよかったね」
リノの一言に脳内のミカドが霧散する。
春に生まれた俺がこの学舎に居られるのはあと数日だった。
3人の王族と、人口の0.01%を占める貴族と、大多数の平民。
この中で唯一貴族にだけ、ある儀式を受けることが義務付けられている。
ーーー16歳の誕生日に、王様から『祝福』という贈り物を賜ることだ。
『祝福』の正体は箝口令が敷かれているらしく、調べたけれどよく分からなかった。
「…そうだね。どうして俺、貴族なんだろ」
「またその話~?『祝福』貰ったって別に学校が変わるわけじゃないでしょ?」
「そうだけど…リノとあまり一緒に居られなくなるじゃん…」
『祝福』を受けた者は、専用の校舎で貴族としての専門的な知識を身につける授業が中心になるという。
一般の平民が進学する先の授業も受けられるらしいが、どれくらい授業が受けられるかはわからない。
「ミコト…」
いつもは明るく振る舞っているリノが、悲しそうに眉を八の字にした。
そして人目がないことを確認した後、中庭にある桜の木の下に連れ出して、そっと俺を抱きしめる。
「…あの話、考えてくれた?」
少し掠れた声が耳を擽る。
顰められた声は先ほどの式典の時よりも真剣で、少し苦しそうだった。
背中にそっと腕を回す。
「俺のために、いっぱい考えてくれてありがとう。でも俺、頑張れるから大丈夫だよ」
俺が『祝福』の儀式が怖いと打ち明けた日、リノは一緒に逃げようと言ってくれた。
国外には、身分制度がない国も存在するらしい。
しかし国外逃亡は重罪で捕まれば死を意味した。
俺個人のわがままで、この大切な友人に罪を犯させるわけにはいかない。
耳元で、小さくため息をつくのが聞こえた。
「金曜の夜10時、ここに来てほしい」
「金曜日、って…」
リノは俺を抱きしめていた腕をそっと解いた後、両肩に手を置いてそっと伸ばした。
「お別れが言いたいんだ。しばらく会えないかもしれないしね」
金曜日は15歳最後の夜だ。
翌日には王宮からの迎えがくるから、時間を取ることは難しいだろう。
身分のせいで寮が分かれてしまってからは、渡り廊下近くの桜の木の下が俺たちが落ち合う定番の場所になっていた。
「わかった。絶対行くね」
「うん、待ってるから。あと…やっぱり逃げたくなったら、言ってね」
「ありがとう、リノ」
今日の空よりも澄み切ったスカイブルー色の瞳に捉えられる。
自分のくすんだ金髪とは違い、思わず目を細めてしまう程まばゆい金色は彼の人柄を表しているようだった。
「戻ろうか」
リノの言葉に頷き、彼の後に続く。
振り返って見た桜はすでに散り始めていた。
無意識にブレザーの胸の辺りを掴んで、その姿に見惚れていた。
この世界には大きく分けて3つの階級が存在する。
ーーー王族・貴族・平民である。
王族は今は3人しか居なくて、その1人が彼だった。
「ミコト、礼、礼!」
「…あっ」
俺は慌てて頭を下げる。
どうやら彼に見惚れていてタイミングを逃したらしい。
幼馴染であり、親友でもあるリノが声を顰めて脇腹を小突いた。
気づいたら総代の挨拶は終わっていて、俺は脳内に焼きついた彼の姿を思い出す。
現実に話すことは難しいけど、想うことは自由のはずだ。
「毎年思うけど飽きない?毎回フリーズしてるよね?」
「うぅ…だってカッコいいんだもん…」
「まあ、確かにミカド様はかっこいいよね。オレはタイプじゃないけど」
式典後、渡り廊下を歩きながらまた彼の姿を思い出す。
ミカドーーーそれが彼の名だ。
王族であり、俺の想い人であり、全校生徒の憧れでもある。
「まぁでも、今年で最後だしね。見れてよかったね」
リノの一言に脳内のミカドが霧散する。
春に生まれた俺がこの学舎に居られるのはあと数日だった。
3人の王族と、人口の0.01%を占める貴族と、大多数の平民。
この中で唯一貴族にだけ、ある儀式を受けることが義務付けられている。
ーーー16歳の誕生日に、王様から『祝福』という贈り物を賜ることだ。
『祝福』の正体は箝口令が敷かれているらしく、調べたけれどよく分からなかった。
「…そうだね。どうして俺、貴族なんだろ」
「またその話~?『祝福』貰ったって別に学校が変わるわけじゃないでしょ?」
「そうだけど…リノとあまり一緒に居られなくなるじゃん…」
『祝福』を受けた者は、専用の校舎で貴族としての専門的な知識を身につける授業が中心になるという。
一般の平民が進学する先の授業も受けられるらしいが、どれくらい授業が受けられるかはわからない。
「ミコト…」
いつもは明るく振る舞っているリノが、悲しそうに眉を八の字にした。
そして人目がないことを確認した後、中庭にある桜の木の下に連れ出して、そっと俺を抱きしめる。
「…あの話、考えてくれた?」
少し掠れた声が耳を擽る。
顰められた声は先ほどの式典の時よりも真剣で、少し苦しそうだった。
背中にそっと腕を回す。
「俺のために、いっぱい考えてくれてありがとう。でも俺、頑張れるから大丈夫だよ」
俺が『祝福』の儀式が怖いと打ち明けた日、リノは一緒に逃げようと言ってくれた。
国外には、身分制度がない国も存在するらしい。
しかし国外逃亡は重罪で捕まれば死を意味した。
俺個人のわがままで、この大切な友人に罪を犯させるわけにはいかない。
耳元で、小さくため息をつくのが聞こえた。
「金曜の夜10時、ここに来てほしい」
「金曜日、って…」
リノは俺を抱きしめていた腕をそっと解いた後、両肩に手を置いてそっと伸ばした。
「お別れが言いたいんだ。しばらく会えないかもしれないしね」
金曜日は15歳最後の夜だ。
翌日には王宮からの迎えがくるから、時間を取ることは難しいだろう。
身分のせいで寮が分かれてしまってからは、渡り廊下近くの桜の木の下が俺たちが落ち合う定番の場所になっていた。
「わかった。絶対行くね」
「うん、待ってるから。あと…やっぱり逃げたくなったら、言ってね」
「ありがとう、リノ」
今日の空よりも澄み切ったスカイブルー色の瞳に捉えられる。
自分のくすんだ金髪とは違い、思わず目を細めてしまう程まばゆい金色は彼の人柄を表しているようだった。
「戻ろうか」
リノの言葉に頷き、彼の後に続く。
振り返って見た桜はすでに散り始めていた。
33
あなたにおすすめの小説
僕を嫌っていた幼馴染みが記憶喪失になったら溺愛してきた
無月陸兎
BL
魔力も顔も平凡な僕には、多才で美形な幼馴染みのユーリがいる。昔は仲が良かったものの、今は嫌われていた。そんな彼が授業中の事故でここ十年分の記憶を失い、僕を好きだと言ってきて──。
兄をたずねて魔の学園
沙羅
BL
俺と兄は、すごく仲の良い兄弟だった。兄が全寮制の学園に行ったあともそれは変わらなくて、お互いに頻繁に電話をかけあったりもしたし、3連休以上の休みがあれば家に帰ってきてくれた。……でもそれは、1年生の夏休みにぴったりと途絶えた。
なぜ、兄が急に連絡を絶ったのか。その謎を探るべく、俺は兄が通っている学校の門の前に立っていた。
※生徒会長×弟、副会長×兄、といった複数のカップリングがあります。
※弟×兄はありません。あくまで兄弟愛。
※絶対ありえんやろっていう学園の独自設定してますが悪しからず。
花香る人
佐治尚実
BL
平凡な高校生のユイトは、なぜか美形ハイスペックの同学年のカイと親友であった。
いつも自分のことを気に掛けてくれるカイは、とても美しく優しい。
自分のような取り柄もない人間はカイに不釣り合いだ、とユイトは内心悩んでいた。
ある高校二年の冬、二人は図書館で過ごしていた。毎日カイが聞いてくる問いに、ユイトはその日初めて嘘を吐いた。
もしも親友が主人公に思いを寄せてたら
ユイト 平凡、大人しい
カイ 美形、変態、裏表激しい
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
雪解けに愛を囁く
ノルねこ
BL
平民のアルベルトに試験で負け続けて伯爵家を廃嫡になったルイス。
しかしその試験結果は歪められたものだった。
実はアルベルトは自分の配偶者と配下を探すため、身分を偽って学園に通っていたこの国の第三王子。自分のせいでルイスが廃嫡になってしまったと後悔するアルベルトは、同級生だったニコラスと共にルイスを探しはじめる。
好きな態度を隠さない王子様×元伯爵令息(現在は酒場の店員)
前・中・後プラスイチャイチャ回の、全4話で終了です。
別作品(俺様BL声優)の登場人物と名前は同じですが別人です! 紛らわしくてすみません。
小説家になろうでも公開中。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
さかなのみるゆめ
ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる