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3話
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「ここは…?」
歩きにくかったので、逃げないから腕を解いてほしいと頼んだ。
一瞥した後、腕を掴んでいた手のひらは下降し手首に再度巻き付く。
俺、そんなに信用ないのかな…
ミカドとの初対面は、あまり…いや、かなり良くないものになってしまった。
今だってピンチには変わりない。
でも、ミカドってこんなに良い勾いがするんだ…なんて見当違いなことを考えていた。
「僕の部屋だ」
目的地に進むに連れセキュリティが厳しくなっていくのがわかる。
重厚なドアを開けると、俺の寮の部屋の何倍も広く、アンティーク調の高そうな家具で統一された部屋が現れた。
ミ、ミカドの部屋だ…!
「…?どうした?」
「あ、ごめんなさい…!」
思わずフリーズしてしまった俺に、ミカドは不思議そうな顔をする。
この領域を侵してはいけない気がして立ち尽くしていたが、先を進むように促されたのでもう少し部屋を眺めているという選択肢は消えた。
「そこのソファへ」
俺が寝転がっても尚余裕がありそうなソファを示された。
どこに座ればいいか分からなくて、なんとなく端っこに座る。
「え!?」
驚いて思わず声が裏返ってしまった。
だっておかしいよね?
どうして向かいのソファじゃなくて、隣にミカドが座るわけ?!
「何か?」
「あ、えっと……何でもないです」
何でもあるけど、もしかしたらミカドの中では何もないのかもしれない。
王族はソファに座る時、隣同士とかルールがあるのかも。
疑問符だらけの脳は早々に思考を放棄した。
「それで、先ほどのことだが…」
………どうしよう。
ぜんっぜん頭に内容が入ってこない。
鼻は彼の匂いを強く感じ、耳は囁くような声と息遣いを拾ってしまう。
ちゃんと聞かなきゃダメなのに頭がクラクラして何も考えられない。
「それで、君はどうしたい」
「………へっ?」
「彼のみを罰するか、二人で罰を受けるか」
ーーーちなみにどちらを選んでも、彼は投獄せざるを得ないが
惚けた頭が、冷水を浴びたかの如く覚醒していく。
「どっちも嫌です。俺だけを罰してください」
「先ほども言ったが、発言をしたのは君ではない。彼を罰することはあれど君だけを罰する必要はないが」
「それは彼が俺を重んじてのことです。元はと言えば俺のせいなんです」
見下ろす瞳には微かな怒気が含まれていた。
きっと俺が口答えしたのが気に入らないのだろう。
でも、俺だってここで引くわけにはいかなかった。
お互い睨み合ったあと、ミカドが小さくため息をつく。
「……1つだけ方法がある。彼も罪に問われず、君も罪に問われない方法が」
「本当ですか!?」
俺はミカドのことをあまり知らない。
でも未来の国王らしく慈悲を持ち合わせているようだ。
安堵の息をつく。
「今ここで、僕からの『祝福』を受けるなら罪を不問にする」
安堵したのも束の間、俺はすぐに息を呑むことになった。
「『祝福』って……心配しなくても俺、明日ちゃんと儀式を受けますよ?」
「僕は君が今ここで、一貴族として忠誠を誓えるか試したい」
「えぇ…でも儀式って王様じゃないとできないんじゃ…?」
「『祝福』は王族なら誰でも授けることができる」
ーーーもちろん、僕でも。
気づいたら熱い手のひらに手首が捉えられていた。
軽く払おうとしたら、逃がさないとでも言うように力を込められる。
動揺して逸らした視線の先に時計が見えた。
あと数分で今日が終わる。
「……断ったら、どうなるんですか」
緊張からか、少し声が掠れてしまった。
みっともなく震え出した体をミカドは優しく抱き寄せる。
「………そうだね。明日の儀式が終わるまで君をこの部屋に閉じ込めて、」
内緒話をするかのように、甘く蕩けてしまいそうな声が耳朶をくすぐった。
ドドド…と心臓が速くなる。
たぶん俺の顔は真っ赤で、見られたくなくて、俯いた。
「悪いことができないように、……………閉じ込めてしまおうか」
内容に反して、ふふっと少し楽しげな吐息を感じた。
俺はその吐息に驚いて、ビクンと体を跳ねさせてしまう。
「………なーんてね。その時は儀式が終わった後、彼だけに罰を与えようかな」
パッと全ての拘束を解くと、少しおどけた声がした。
反射的に顔を上げる。
「さあ選んで、ミコト」
目の前の男は、俺が今まで出会った誰よりも絶対的な支配者の目をしていた。
歩きにくかったので、逃げないから腕を解いてほしいと頼んだ。
一瞥した後、腕を掴んでいた手のひらは下降し手首に再度巻き付く。
俺、そんなに信用ないのかな…
ミカドとの初対面は、あまり…いや、かなり良くないものになってしまった。
今だってピンチには変わりない。
でも、ミカドってこんなに良い勾いがするんだ…なんて見当違いなことを考えていた。
「僕の部屋だ」
目的地に進むに連れセキュリティが厳しくなっていくのがわかる。
重厚なドアを開けると、俺の寮の部屋の何倍も広く、アンティーク調の高そうな家具で統一された部屋が現れた。
ミ、ミカドの部屋だ…!
「…?どうした?」
「あ、ごめんなさい…!」
思わずフリーズしてしまった俺に、ミカドは不思議そうな顔をする。
この領域を侵してはいけない気がして立ち尽くしていたが、先を進むように促されたのでもう少し部屋を眺めているという選択肢は消えた。
「そこのソファへ」
俺が寝転がっても尚余裕がありそうなソファを示された。
どこに座ればいいか分からなくて、なんとなく端っこに座る。
「え!?」
驚いて思わず声が裏返ってしまった。
だっておかしいよね?
どうして向かいのソファじゃなくて、隣にミカドが座るわけ?!
「何か?」
「あ、えっと……何でもないです」
何でもあるけど、もしかしたらミカドの中では何もないのかもしれない。
王族はソファに座る時、隣同士とかルールがあるのかも。
疑問符だらけの脳は早々に思考を放棄した。
「それで、先ほどのことだが…」
………どうしよう。
ぜんっぜん頭に内容が入ってこない。
鼻は彼の匂いを強く感じ、耳は囁くような声と息遣いを拾ってしまう。
ちゃんと聞かなきゃダメなのに頭がクラクラして何も考えられない。
「それで、君はどうしたい」
「………へっ?」
「彼のみを罰するか、二人で罰を受けるか」
ーーーちなみにどちらを選んでも、彼は投獄せざるを得ないが
惚けた頭が、冷水を浴びたかの如く覚醒していく。
「どっちも嫌です。俺だけを罰してください」
「先ほども言ったが、発言をしたのは君ではない。彼を罰することはあれど君だけを罰する必要はないが」
「それは彼が俺を重んじてのことです。元はと言えば俺のせいなんです」
見下ろす瞳には微かな怒気が含まれていた。
きっと俺が口答えしたのが気に入らないのだろう。
でも、俺だってここで引くわけにはいかなかった。
お互い睨み合ったあと、ミカドが小さくため息をつく。
「……1つだけ方法がある。彼も罪に問われず、君も罪に問われない方法が」
「本当ですか!?」
俺はミカドのことをあまり知らない。
でも未来の国王らしく慈悲を持ち合わせているようだ。
安堵の息をつく。
「今ここで、僕からの『祝福』を受けるなら罪を不問にする」
安堵したのも束の間、俺はすぐに息を呑むことになった。
「『祝福』って……心配しなくても俺、明日ちゃんと儀式を受けますよ?」
「僕は君が今ここで、一貴族として忠誠を誓えるか試したい」
「えぇ…でも儀式って王様じゃないとできないんじゃ…?」
「『祝福』は王族なら誰でも授けることができる」
ーーーもちろん、僕でも。
気づいたら熱い手のひらに手首が捉えられていた。
軽く払おうとしたら、逃がさないとでも言うように力を込められる。
動揺して逸らした視線の先に時計が見えた。
あと数分で今日が終わる。
「……断ったら、どうなるんですか」
緊張からか、少し声が掠れてしまった。
みっともなく震え出した体をミカドは優しく抱き寄せる。
「………そうだね。明日の儀式が終わるまで君をこの部屋に閉じ込めて、」
内緒話をするかのように、甘く蕩けてしまいそうな声が耳朶をくすぐった。
ドドド…と心臓が速くなる。
たぶん俺の顔は真っ赤で、見られたくなくて、俯いた。
「悪いことができないように、……………閉じ込めてしまおうか」
内容に反して、ふふっと少し楽しげな吐息を感じた。
俺はその吐息に驚いて、ビクンと体を跳ねさせてしまう。
「………なーんてね。その時は儀式が終わった後、彼だけに罰を与えようかな」
パッと全ての拘束を解くと、少しおどけた声がした。
反射的に顔を上げる。
「さあ選んで、ミコト」
目の前の男は、俺が今まで出会った誰よりも絶対的な支配者の目をしていた。
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