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旅の道中
⑬
しおりを挟む「これ、お姉ちゃんが作ったの?」
「そうだよ、美味しかったならよかったよ」
何か言おうか言わないかもごもごしてたが、不意にルルーゼちゃんが声をかけてきたのでそれに応える。
決して逃げたわけではない。
「すごいね! お兄ちゃんのご飯はおいしくないのよ!」
にこにこキラキラしながらもアルベルト君を貶すルルーゼちゃん。
いや、貶すってかルルーゼちゃんからしたら本当のことしか言ってないのかもしれないけど。
ルルーゼちゃんの本音にクロスを睨んでいたアルベルト君だけど気まずそうに目をそらす。
お母さんがいつ病気になったのかわからないけど昔っからではなかったんだろうね。
料理が下手でも妹の為に頑張ってるんだろうと予想はつく。
「でもね、ルルはお兄ちゃん大好きなの!」
「お兄ちゃんもルルーゼちゃんが大好きだと思うよ」
これまでお父さんの話題が出てないけど複雑な家庭なのかもしれない。
シングルマザーなのかもしれないし、ここは突っ込んで聞かない方がいいでしょ。
にこにこしてるルルーゼちゃんを見ながらもお茶を飲む。
ルルーゼちゃんとお話をししていると可愛いからか時間が経つのがわかる。
そろそろまた進む予定でクロスと話し合い、アルベルト君とルルーゼちゃんも玄関までお見送りにきてくれた。
「長いことお邪魔しちゃったね」
「いえ、ルルも楽しそうにしていましたしありがとうございます」
食堂で働いていた時は三人としか話してなかったし、こんな可愛いルルーゼちゃんとお話出来て楽しかった。
キース達への用事が終わった後の帰り道にまた寄るのもいいかな。
ルルーゼちゃんも村からあまり出たことないみたあだし、お土産でも買ったら喜んでくれるでしょ。
「またきてね!」
「うん、今度来る時はお土産持ってくるからね」
「ルル、甘いのがいい!」
この世界は砂糖は高いらしいからあまり食べたことないって言ってたもんね。
たまに咲いてる花の蜜を良く吸ってるらしいけど、花によっては毒もあるからアルベルト君はあんまり吸わせたくないみたい。
私も小さい頃は花の蜜を吸ったことあるけど毒もあるって聞いてからは止めたし。
君子危うきに近寄らずってやつだね。
……ちょっと意味が違うかもしれないけど。
「じゃあ、ありがと……」
「キャー!!」
手を振って帰ろうとした時、入口の方から叫び声と獣の唸り声が聞こえてきた。
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