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第3章
大規模観覧の競技会開始
しおりを挟む今日は少し憂鬱な日。
競技会の日である。
「例年当学園の競技会は高次元であり、国王陛下からも楽しみにしているとのお言葉を頂いております。怪我はつきものであるが、命に係わるような危険行為は禁じていますので規律は守りましょう。本年度は多くの方が見学に来訪されています。皆さん自信の有能さを見せつけてやりましょう。」
始まりは学園長のご挨拶。
最初は穏やかに丁寧に話していたが、最後は何故か言葉に熱が籠められ拳を突き上げた。
教員の中にはオロオロした様子の者や、スッと目を細めた者(主にグリシャム先生)、大きなため息を吐き出す者がいたが、生徒の大半は『おー!』と学園長と同じように拳を突き上げている。
一部は僕と同じように無である。
学園長が言っていたように、今日の見学人の数は例年よりも多く、また身分の高い者が多いことから観覧専用の席が設けられている。
にぃ様達の競技会は色々大きな問題があったせいで中止となってしまった。
次の年からは再会されたが、念の為、安全がきちんと保障されるまでは学園の者のみでの競技会となっていた。
それが今年からは保護者達はもちろん、学園外の者(庶民含め)の観覧が許された。
大きな事件で揺れた国がもう安全で問題ないのだと国民達に感じさせる国の企みもあるだろう。
学園長はそういった国絡みが学園に介入することをよく思っておらず、最初は保護者のみで行う予定だったみたいだけど、王太子殿下が直々に学園へ赴き今回の競技会を多くの人に見学させることによって生徒達の有能さを知ってもらうことで、勧誘を受けたり等、生徒達の将来の選択の幅が広がる利点があるのではと説得されたことで本日のような大規模な観覧のある競技会となったそう。
ちなみにこの情報源は、生徒会の役員となったオスカル君。
なんでも
『情報は日常でも仕事でも政でも戦闘でも必要不可欠なので、学園の情報が集まる生徒会の役員になれば色んな裏事情を知れて面白いですし、防衛にもなりますし。』
とのこと。
そんなこんなで今日。
観覧席には宣言通りとーさまとにぃ様、それからノヴァが居る。
とーさまは38歳という年齢であるが、息子の僕でも偶に見惚れる程の美貌は変わらない。
その美貌に寡夫でありながら、未だに恋文が送られてくるだけあって、今日もあらゆる女性からの視線を集めている。
その中には隣に旦那様がいらっしゃるご婦人もいるが…
視線を集めているのはもちろんとーさまだけではない。
息子であるにぃ様はとーさまより漢らしい顔つきと体格だがその精悍な顔つきであらゆる令嬢を魅了している。
しかしにぃ様は僕第一主義で、度々ご令嬢をドン引かせてしまっている。
その為、未だに婚約者が定まらなくてワイアットは頭を抱えている。
とーさまは気にしていないご様子だし、僕も困ったなと言いながら全然困ってなどいなく、寧ろ僕の中の優越感が大喜びなので僕からにぃ様に何か言うことはない。
でも安心して欲しい。
にぃ様は弟の僕が贔屓目なしに言っても優良物件。
そう遠くない未来、良いご縁に恵まれるに決まってる。
まだ20歳で成人の儀を終えたばかりなんだ。
確かにこの時点で婚約者がいないのはこの国では遅いけれど、人のあり方は人それぞれ。
…と、それはそうともう1人注目を浴びている人、ノヴァ。
彼はこの4年間の間ににぃ様達と鍛錬をし始め、体つきが以前よりもずっと逞しくなった。
着痩せしているが、脱ぐとすごい…って感じだ。(庭で汗を拭くため上裸になった姿を偶然見たので知っている)
ノヴァが鍛えだしたのは、僕の影響を受けてらしい。
強くなければ搾取される。
いざという時、大切な、守りたいものを守れない。
確かにそうだと思うことがあったらしい。
何をキッカケにそう思ったのかは教えて貰えなかったけど…
まぁ…そんな感じで、以前よりも逞しさを兼ね備えた美人が注目を集めないわけもなく。
それに2年ほど前に国で起こった小規模なスタンピードを1人で鎮静した功績を国から称えられ男爵位が与えられた。
強くて美人な御仁を乙女たちが放っておくわけもなく、そして美人なノヴァには子息達からも釣書が届いている。
今話題のその人なのである。
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