王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

文字の大きさ
167 / 422
第3章

午後の部の始まり

しおりを挟む
テトラ君とオスカル君も交えて殿下達とお話しているうちに段々慣れてきて、敬意は払いつつも少しばかり砕けた言葉で接することができるようになった頃、午後の部の始まりの音が鳴らされた。

ちなみに長いものには媚びを売っとけ精神のオスカル君はここぞとばかりにエイド様に話かけていた。(さすがに殿下にはいけなかったぽい)
そしてちゃんと気に入られているのだからすごい子だ。









自分達のクラスの観覧場所に座る。

テトラ君はこの後始まる剣技披露に出場するので、競技場の方に居る。




剣技披露の部は、二人一組で剣の打ち合いをする中で、それぞれの技を魅せるという競技だ。

実戦や相手を負かす戦いとは違うのでやや迫力には欠けるが、時には思わずおぉっと声の上がる技を魅せる生徒もいる。



テトラ君は僕達の居る所からは少し遠いけれど、とーさま達が居る所(ハデス家とノルデン家も同じ所にいる)に近いので気合が入っていることだろう。





剣技披露が終わると、次に行われるのが剣舞。

これは競技の合間のちょっとした娯楽種目である。


この剣舞に関しては、参加者が生徒、教師からの推薦で決まる。





そして選ばれたのがオスカル君。

彼の軽やかな剣さばきはまるで剣が宙で踊っているようで、綺麗だし、楽しくなる。


他生徒もオスカル君とは系統の違う力強い剣舞を魅せる子もいて、すごく勉強になるし、面白い。






終わりには教師席、生徒席、観客席からも割れんばかりの拍手が送られた。






そして剣舞の次は魔法遊戯。


この種目では魔法を使って芸を魅せる。

戦闘向きというより名前の通りお遊戯向きの魔法を魅せるのだけど、これも推薦で参加者が決められる。



そして目出度く僕は選ばれてしまった。

グリシャム先生に「無理です」ってはっきりきっちり言ったけれど、「大丈夫です」とはっきりきっちり返されて結局今日まできてしまった。

何が大丈夫なのか詳しく聞かせろと言っても貴方と違って忙しいので、何て嫌味を言われた。

いや…事実ではあるが…僕はわりと暇だし、先生は忙しいけれども…





「頑張ってください!」


「腹括れ。」



競技から帰ってきた二人に見送られ、渋々競技場へと向かう。



注目されるのは嫌だし、闇魔法も使えない。
本当に何が大丈夫なのか教えてほしいけど、ここまできたらとーさま達も見ているのだしきちんとしようと思う。


思うのだけど…憂鬱だ。








魔法遊戯は魔法が広範囲で使われることを想定して、剣技や剣舞より参加人数が少ない。

それも憂鬱。



このストレスを魔法でぶっ放してやる!と憂鬱な気持ちを怒りに変えて


幻想魔法で周りに魔獣を可愛くしたもの(前世でいうミニキャラのような感じ)を出現させ、それらを観客の方へ在在所所ざいざいしょしょ飛ばしていく。

幻影魔法は夢魔事件の時に習得した魔法で、バグさんがたぶん使えるよって教えてくれてからバグさんとノヴァに教わってきた魔法がまさかこんな所で役に立つとは…。



夢の中で想像力が鍛えられたことと、幻影魔法は闇魔法よりの魔法だから使えるようになったぽい。






近くに飛んできた可愛い姿の魔獣に色んな所から「可愛いー」だとか「すげぇ!」だとか聞こえてくるから、無事この魔法は受け入れられたようで安心。

しかしこれだけでは芸が足りないと言われそうなので、もうひとつ披露しなくてはいけないだろう。





重力魔法を使い、幻影と一緒に皆をふわふわ浮かせてみようか…何てメルヘンな光景を想像したけれど、重力魔法を他者に使用し万が一失敗してしまった場合、死者を出す可能性があるので辞めた。

魔力は有り余るほどあるけれど、この場にいる全員をふわふわ浮かせるだけの繊細な魔力操作ができる自信はない。




なので、オスカル君に氷魔法を付与してもらった魔法付与札を風魔法で空高く上げて、当たっても痛くない氷を降らせる。

晴れてる日に空から降ってくる氷はキラキラと光り輝いて幻想的だ。



それだけじゃない。



落ちてきた氷を手に取ってもらえば、氷の中で火花がばちばちと弾けているのが分かる。

触っても熱くないことは確認済み。




さっそく手に取った誰かが綺麗だと声をあげてくれたことで、皆が落ちてくる氷を手に取ってくれた。

他の生徒は炎魔法で日輪を幾つか作り出し剣舞と合わせてみたり、水魔法と風魔法で水の球体をぐるくる螺旋状に回してたりして何だかサーカスみたいって思った。





そういえば、雑技団とか見世物屋とかそういう類の言葉を耳にしたことはないけれど、この世界にもそう言ったパフォーマンスをする集団は存在するのだろうか?

サーカスとか前世の僕は好きだった記憶がある。



何か怪しくて、怖くて、でも楽しくて、キラキラしてて…

まるで夢の中にいるかのような感覚になるあの場所が好きだった。




歴史を辿れば、少し悲しくて人間の残酷さにウンザリするものもあるけれど…

体に特別な特徴をもって産まれた人達にとってあの時代を生きるために必要な場所だったのかもしれないとも思う。








思考を違うところに飛ばしだしたところで、終了の声が聞こえて慌てて魔力を体の中におさめる。


皆楽しんでくれたようで、拍手をして退場する僕たちを見送ってくれた。






しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

断罪回避のはずが、第2王子に捕まりました

ちとせ
BL
美形王子×容姿端麗悪役令息  ——これ、転生したやつだ。 5歳の誕生日、ノエル・ルーズヴェルトは前世の記憶を取り戻した。 姉が夢中になっていたBLゲームの悪役令息に転生したノエルは、最終的に死罪かそれ同等の悲惨な結末を迎える運命だった。 そんなの、絶対に回避したい。 主人公や攻略対象に近づかず、目立たずに生きていこう。 そう思っていたのに… なぜか勝手に広まる悪評に、むしろ断罪ルートに近づいている気がする。 しかも、関わるまいと決めていた第2王子・レオンには最初は嫌われていたはずなのに、途中からなぜかグイグイ迫られてる。 「お前を口説いている」 「俺が嫉妬しないとでも思った?」 なんで、すべてにおいて完璧な王子が僕にそんなことを言ってるの…?  断罪回避のはずが、いつの間にか王子に捕まり、最後には溺愛されるお話です。 ※しばらく性描写はないですが、する時にはガッツリです

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

処理中です...