王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

第3章

絶対わざとな訪問者

競技会が無事に終わり、あれから２カ月の謹慎処分になったユーリス先輩と会うこともなく平和な学生生活を過ごしている今日この頃。



「久しいなルナイス。」


「っ！ぁ…ぁぁ…ホルス様ぁー！」



学園がお休みの日は起きるのが少し遅い僕。


いつもは好きなだけ眠らせてくれるヘレナやヨハネスが起こしにきたので、着替えて食堂へ向かうとそこには相変わず艶やかで綺麗な黒髪をなびかせ、はだけた襟元からムッチリとした胸筋をチラつかせた色気むんむんなホルス様が居た。


しばらくの間事件の後始末や、強力してくれた精霊達への労いなどなど…忙しくしていたホルス様には会えてなかった。




なので、久しぶりに見るホルス様は色気むんむん過ぎて、ドストライク過ぎて…


うがぁあああぁああっとなった僕は訳の分からないテンションで掌で顔を覆い、その場にしゃがみ込み、ホルス様の名前を叫んだ。





小さく丸まる僕をホルス様は笑いながら軽々と抱き上げる。

浮遊感と共にムチッとした筋肉を感じ、思わず掌をそっと胸筋に乗せてしまう僕。
ホルス様から変態認定されていないことを願う。




ホルス様は僕を抱えたままその場で２・３回転ほどし、そして僕をそっと椅子の上に下ろす。



「ホルス様もご一緒にお食事しますか？」


「あぁ。」


「よければもう少しお席を近くしませんか？」


「かまわない。」




少し離れたところの席に料理が用意されているのを見て、一緒に食事ができるのかと尋ねると頷かれたので、折角ご一緒できるのならという僕の我儘にホルス様は快く頷いてくれて、メイド達が素早くホルス様の席と食事を移動させてくれる。



今日はとーさまもにぃ様もすごく早い時間からお仕事で屋敷を出ているから、一人ご飯で寂しいなぁっと思っていたので、一緒に食べる人がいてとても嬉しい。

きっとそんな僕の気持ちを考えてくれて、使用人達がホルス様のお食事も用意してくれたのだと思う。





朝食を一緒に食べながら合間にお話をするなかで、ホルス様はご用事が終わったのでまた僕の護衛になってくれることが分かった。

ヨハネスとガンナーが居て、更にホルス様まで護衛についたらもう最強の守り過ぎて安心しかない。





わーい、わーいと喜び食後にホルス様と遊んでいるとめちゃくちゃ慌てた様子のたまがやってきた。


「ル、ルナイス様！クラージュ王太子殿下がもうすぐそこまで来てるとのことです！」


「…コルダ！すぐににぃ様呼んで！」


「御意。」




聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない


ふざけんな

王族だろうともっと早く御達しするのが常識でしょうが



否、絶対わざとだ…

今までとーさまとにぃ様が僕に会わせないようにしていたから、絶対二人がいない時を狙い、かつ僕に会えない理由を作らせないためにわざとこんなギリギリにしたんだ。





ドタバタ、ドタバタと皆で屋敷を走り回り王太子殿下が訪れてもいいように準備をする。

コルダ達警備隊も王家の影の者の動きを制御しつつ、接待しないといけないし…しかも今日に限ってワイアットはとーさまについて王都へ行っているため不在。



皆がどたばたする中、ホルス様は優雅に紅茶を飲んでいて、日に照らされてるその姿は見惚れてしまいそうになるが今はそんな場合じゃない！














「予想以上に早い再会、大変光栄にございます。クラージュ殿下。」


何とか殿下が到着するまでに身なりまで整えた僕は、少しだけ嫌味を混ぜて殿下へ礼をとり出迎える。



「競技会ではやっと待望のアーバスノイヤーの末子に会えたというのに、あまり話す時間がなかったのでな。たまたま近くで公務があってな、君が居ると聞いたのでこうして会いに来たのだ。前触れが遅くなりすまなかったな。」


そんな僕何て歯牙にもかけず微笑む殿下をゆっくりと応接間へ案内する。

少しでも時間を稼がないと、この人の相手は僕じゃ無理だ。
ボロがでそうで怖い。




にぃ様…早く帰ってきて…