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第3章
隠してませんよ聞き逃していたのでは?
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予想に反してクラージュ殿下とのお話は穏やかなものだった。
僕の知らない学校や殿下達の前でのにぃ様のお話を聞くのは楽しく、また王族ならではのお話もなかなかにスリリングで聞いている分には面白い。
当人はニコニコと笑って話しているけど…なかなかに人生ハードモードなようだ。
「ところで、ずっと気になっていたのだけれど…君の後ろでのんびり寛いでいらっしゃる御仁はどなたかな?」
殿下の視線が僕から僕の背後へ向けられたので、僕も後ろを振り返るとそこには椅子に座りまったりと寛いでいるホルス様が。
ホルス様は僕の護衛だけど、ドラゴンなので、人間のあれこれ面倒臭いしがらみは関係ないのだ。
ホルス様じゃなければ殿下がいらっしゃる前でとんでもない愚行であるが、ホルス様なので僕も使用人達も何も言わなかったのだ。
それは殿下も分かっているから、純粋に「あれ誰です?」って聞いてきてる。
「あの方はホルス様です。以前学園の裏にある勇竜の寝床で出会ったブラックドラゴンさんです。」
「!!ホルス様、お初にお目にかかります。私はアーナンダ国第二王子、クラージュ・F・アーナンダでございます。ご挨拶が遅れまして大変申し訳ございません。」
あ、これ最初にお知らせしておかないと駄目なやつだったっぽい。
殿下が物凄く慌てた様子で立ち上がり、ホルス様に深めに頭を下げているので、僕も慌てて立ち上がってしまった。
「良い。我は今ルナイスの護衛。お主がルナイスを害することがないのであれば我は何もせぬし、お主も我のことは気にせんで良い。」
片手をひらひら振って答えたホルス様と殿下の温度差がすごい。
そして殿下って第二王子だったんだってちょっとビックリ。
王族にはクラージュ殿下以外まだお会いしてないからなぁ…他の王族ってどんな感じなんだろう。
っというか、王族よりドラゴンさんって偉かったんだね。
あの魅惑の体は確かに拝みたくなるよね。
呼び捨てにしてなくてよかった、よかった。
「あぁ…気にせんで良いと言ったが、我からひとつだけ言わせてもらおうか。…お主、何を探りにきた。」
ホルス様の静かでありながら威圧感のある声に殿下の喉がゴクリと動いた。
まぁ、本当に偶々世間話をしに来た…なーんて僕も思っていない。
何かしら裏があって僕に会いに来たんだろうことは分かっている。
しかし、にぃ様が仕えていて、更に今までお話した感じ、僕は殿下が嫌いではないことが分かった。
基本的には、とても優しく穏やかな人であると思う。
「…ルナイス、君は闇魔法に適正があるのかい?」
しばらくして、何やら覚悟を決めたらしい殿下の鋭い視線が僕へと向けられる。
その鋭く厳しい視線の中にほんの少しばかりの揺れが見える。
きっと本人はそう言ったデリケートな部分に踏み込んで、他者の心を荒らすような真似はしたくはないのだろう。
だけど王太子殿下という立場がそれを許さない。
「はい。」
「っそうか。…何故今までそれを王家にまで隠していた。」
「隠してなどいません。聞かれなかったので話さなかったのだと聞いています。それに戸籍には適正魔法が闇であることは記されているはずです。」
「しかし、アーバスノイヤーに闇属性の適合者が産まれた報告は受けていないと国王が申していた。何故王族にその知らせが届いていない。」
「国王様があまりに多忙で聞き逃していた可能性はありませんか?出生届はとーさまが出していますので、僕は存じ上げません。それに…その言い方ではアーバスノイヤーに闇属性の人間が居てはいけないような口ぶりですね。何か理由でもあるのですか?」
誤魔化さずに闇属性の適合者であることを認めた僕を殿下は驚いた顔で見た後、すぐに表情を厳しいものに変えて質問を何度か繰り返す。
僕も淡々とそれに答え、そして何故僕が闇属性であることをそんなにも気にするのかを探る。
「あまりにもアーバスノイヤー家のものが王家から君を遠ざけ、隠すものだから国王は気にしているのさ。…まさかアーバスノイヤーが王族を裏切るのではないか…と。」
殿下はじっと僕を真っすぐに見てくるので、僕も無言で真っ直ぐ見つめ返す。
「…ルナイス・アーバスノイヤーの戸籍を登録する手続きを請け負った者を探し出せ。…アーバスノイヤー家に末子の闇属性適合を隠す意図はなく、我々王族が知らなかったのは多忙な時期にそれほど重要事項でないと判断した役員がさらっと告げたのを聞き逃していたようだ。アーバスノイヤー家が王家に末子を会わせないようにしていたのは今は亡き公爵夫人の忘れ形見である末子が可愛いが故に過保護になりすぎ、家の仕事から遠ざけたかったため…国王にはこう報告することにしよう。ルナイス、どう思う?」
最初の言葉は恐らく何処かに潜んでいる影の者に。
そして最後は僕に。
「どう思うと言われましても…今殿下がおっしゃられたことは全て間違いない事実です。アーバスノイヤー家としても忠義を疑われたままでは守れるものも守れません。国王の疑念がなくなることを切に願っております。」
どうかと問われて、それにあからさまに賛同するのも、否定するのもよくない。
そう判断した僕はただニコリと微笑み、それとなくそれ以上アーバスノイヤー家を疑い探るなら守りの手を緩めるかもしれませんよーっと告げる。
「うむ。さて、そろそろ王都に帰らねばならないな。急に邪魔して悪かった。見送りは不要だ。失礼する。」
僕の返答に満足そうに頷いた殿下はひらりと手を振って、屋敷を去っていった。
馬車に乗って去っていくまでを応接室の窓からそっと眺め、見えなくなってほっと息をつく。
バン!
「ルナイス!!」
「にぃ様!」
残っていたお茶とお菓子を摘まんでいると応接室の扉が勢いよく開き、にぃ様がやってきた。
「殿下が突如来訪されたと…大丈夫だったか?」
「うん。どうして僕が闇属性の適合者であることをアーバスノイヤー家は王家に隠しているのかって聞かれましたけど、予定通り隠していませんって答えました。」
「そうか。よくやった。」
実は殿下に影から先輩を取り出すところを見せてしまっていることに気が付いて、にぃ様から
隠してません
王家の人が忙しいあまりちゃんと聞いていなかったんです
それ以上追求するなら王家からのお仕事の手を抜きますんでぇ
と不敬罪で処されないギリギリぃっなところを狙った返答をするように言われていたのだ。
恐らくクラージュ殿下が率先して僕に探りを入れに来てくれるだろうから、それだけ言っておけばいいよって言われていたけれど、やっぱりにぃ様の期待を裏切らない王太子殿下…僕はもう少しあの人とお話してみたいかもしれない。
僕の知らない学校や殿下達の前でのにぃ様のお話を聞くのは楽しく、また王族ならではのお話もなかなかにスリリングで聞いている分には面白い。
当人はニコニコと笑って話しているけど…なかなかに人生ハードモードなようだ。
「ところで、ずっと気になっていたのだけれど…君の後ろでのんびり寛いでいらっしゃる御仁はどなたかな?」
殿下の視線が僕から僕の背後へ向けられたので、僕も後ろを振り返るとそこには椅子に座りまったりと寛いでいるホルス様が。
ホルス様は僕の護衛だけど、ドラゴンなので、人間のあれこれ面倒臭いしがらみは関係ないのだ。
ホルス様じゃなければ殿下がいらっしゃる前でとんでもない愚行であるが、ホルス様なので僕も使用人達も何も言わなかったのだ。
それは殿下も分かっているから、純粋に「あれ誰です?」って聞いてきてる。
「あの方はホルス様です。以前学園の裏にある勇竜の寝床で出会ったブラックドラゴンさんです。」
「!!ホルス様、お初にお目にかかります。私はアーナンダ国第二王子、クラージュ・F・アーナンダでございます。ご挨拶が遅れまして大変申し訳ございません。」
あ、これ最初にお知らせしておかないと駄目なやつだったっぽい。
殿下が物凄く慌てた様子で立ち上がり、ホルス様に深めに頭を下げているので、僕も慌てて立ち上がってしまった。
「良い。我は今ルナイスの護衛。お主がルナイスを害することがないのであれば我は何もせぬし、お主も我のことは気にせんで良い。」
片手をひらひら振って答えたホルス様と殿下の温度差がすごい。
そして殿下って第二王子だったんだってちょっとビックリ。
王族にはクラージュ殿下以外まだお会いしてないからなぁ…他の王族ってどんな感じなんだろう。
っというか、王族よりドラゴンさんって偉かったんだね。
あの魅惑の体は確かに拝みたくなるよね。
呼び捨てにしてなくてよかった、よかった。
「あぁ…気にせんで良いと言ったが、我からひとつだけ言わせてもらおうか。…お主、何を探りにきた。」
ホルス様の静かでありながら威圧感のある声に殿下の喉がゴクリと動いた。
まぁ、本当に偶々世間話をしに来た…なーんて僕も思っていない。
何かしら裏があって僕に会いに来たんだろうことは分かっている。
しかし、にぃ様が仕えていて、更に今までお話した感じ、僕は殿下が嫌いではないことが分かった。
基本的には、とても優しく穏やかな人であると思う。
「…ルナイス、君は闇魔法に適正があるのかい?」
しばらくして、何やら覚悟を決めたらしい殿下の鋭い視線が僕へと向けられる。
その鋭く厳しい視線の中にほんの少しばかりの揺れが見える。
きっと本人はそう言ったデリケートな部分に踏み込んで、他者の心を荒らすような真似はしたくはないのだろう。
だけど王太子殿下という立場がそれを許さない。
「はい。」
「っそうか。…何故今までそれを王家にまで隠していた。」
「隠してなどいません。聞かれなかったので話さなかったのだと聞いています。それに戸籍には適正魔法が闇であることは記されているはずです。」
「しかし、アーバスノイヤーに闇属性の適合者が産まれた報告は受けていないと国王が申していた。何故王族にその知らせが届いていない。」
「国王様があまりに多忙で聞き逃していた可能性はありませんか?出生届はとーさまが出していますので、僕は存じ上げません。それに…その言い方ではアーバスノイヤーに闇属性の人間が居てはいけないような口ぶりですね。何か理由でもあるのですか?」
誤魔化さずに闇属性の適合者であることを認めた僕を殿下は驚いた顔で見た後、すぐに表情を厳しいものに変えて質問を何度か繰り返す。
僕も淡々とそれに答え、そして何故僕が闇属性であることをそんなにも気にするのかを探る。
「あまりにもアーバスノイヤー家のものが王家から君を遠ざけ、隠すものだから国王は気にしているのさ。…まさかアーバスノイヤーが王族を裏切るのではないか…と。」
殿下はじっと僕を真っすぐに見てくるので、僕も無言で真っ直ぐ見つめ返す。
「…ルナイス・アーバスノイヤーの戸籍を登録する手続きを請け負った者を探し出せ。…アーバスノイヤー家に末子の闇属性適合を隠す意図はなく、我々王族が知らなかったのは多忙な時期にそれほど重要事項でないと判断した役員がさらっと告げたのを聞き逃していたようだ。アーバスノイヤー家が王家に末子を会わせないようにしていたのは今は亡き公爵夫人の忘れ形見である末子が可愛いが故に過保護になりすぎ、家の仕事から遠ざけたかったため…国王にはこう報告することにしよう。ルナイス、どう思う?」
最初の言葉は恐らく何処かに潜んでいる影の者に。
そして最後は僕に。
「どう思うと言われましても…今殿下がおっしゃられたことは全て間違いない事実です。アーバスノイヤー家としても忠義を疑われたままでは守れるものも守れません。国王の疑念がなくなることを切に願っております。」
どうかと問われて、それにあからさまに賛同するのも、否定するのもよくない。
そう判断した僕はただニコリと微笑み、それとなくそれ以上アーバスノイヤー家を疑い探るなら守りの手を緩めるかもしれませんよーっと告げる。
「うむ。さて、そろそろ王都に帰らねばならないな。急に邪魔して悪かった。見送りは不要だ。失礼する。」
僕の返答に満足そうに頷いた殿下はひらりと手を振って、屋敷を去っていった。
馬車に乗って去っていくまでを応接室の窓からそっと眺め、見えなくなってほっと息をつく。
バン!
「ルナイス!!」
「にぃ様!」
残っていたお茶とお菓子を摘まんでいると応接室の扉が勢いよく開き、にぃ様がやってきた。
「殿下が突如来訪されたと…大丈夫だったか?」
「うん。どうして僕が闇属性の適合者であることをアーバスノイヤー家は王家に隠しているのかって聞かれましたけど、予定通り隠していませんって答えました。」
「そうか。よくやった。」
実は殿下に影から先輩を取り出すところを見せてしまっていることに気が付いて、にぃ様から
隠してません
王家の人が忙しいあまりちゃんと聞いていなかったんです
それ以上追求するなら王家からのお仕事の手を抜きますんでぇ
と不敬罪で処されないギリギリぃっなところを狙った返答をするように言われていたのだ。
恐らくクラージュ殿下が率先して僕に探りを入れに来てくれるだろうから、それだけ言っておけばいいよって言われていたけれど、やっぱりにぃ様の期待を裏切らない王太子殿下…僕はもう少しあの人とお話してみたいかもしれない。
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