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第4章
証拠です。
しおりを挟む夕飯を終えて片付けも終えると、気が付いたらコルダの姿は消えていて、ヨハネスが暗くなってきたからお家に入りましょうと言うので家の中へ。
部屋数が少ないので
僕とノヴァ
ヨハネスとコルダとガンナー
ホルス様とオーレさんとルゲイエさん
で一部屋を使うことに。
夕飯はコルダが獲って来たパオだけでお腹いっぱいになったので、明日の朝食ではガンナーとヨハネスが獲って来てくれた獲物と木の実を食べる。
こんなサバイバルな感じは前世含め初めてなので正直楽しい。
僕は狩りに出てないけど…。
「ルナイス。眠れそうか?」
「うん。ノヴァのおかげで寝れる。」
環境が変わるとなかなか眠れない僕をノヴァが抱きしめてくれて家から持ってきていた毛布でくるんでくれるので、余裕で睡魔が襲って来てます。
伴侶というより、親子っぽいとは僕も思うけれど…僕もノヴァもガツガツヤるぜ!というよりはイチャイチャしてくっついていたいタイプ。
気が付いたらぴったりとノヴァにくっついていて、ノヴァも僕が近くにいるのにあんまり離れているとすごく自然に僕を横に移動させてる。
仲が良いねと言って笑ってくれる人もいれば、どこでもイチャイチャするなと文句を言う人もいる。
ちなみによく文句を言ってくるのはお馴染みのヒュー様だ。
そんなこんなで、ぴったりとくっついて眠った翌日。
ハビット辺境伯領からは全ての妖精が姿を消した。
昨夜からほとんどの妖精が枯れた土地の方へ移動して、今朝完璧に領から妖精が去ったのだ。
そして今日はカンカン照りのお天気。
さっそく土地は干上がり始め、植物達は元気をなくしている。
すぐにハビット辺境伯や領民達が水魔法を展開して地を潤すが、妖精が完全にいなくなった領は少しずつ魔素が薄くなっており昨日までのような威力が出ない。
皆困惑した様子で、中には魔力を多く使い過ぎてしまい倒れた領民もいるみたい。
後で回復薬持って行くから我慢してねぇ。
慌ただしく動き回るハビット辺境伯達を領地の外の木の上からのんびり観察をして、夕刻。
僕達はハビット辺境伯の屋敷の扉を叩いた。
「あ…貴方達一体何をなさったの!?倒れた民もいるのですよ!?こんなことが許されると思っておいでですか!!」
応接室に通されて直ぐにやってきたハビット辺境伯は鬼の形相で声を荒げた。
「証拠もないのに我々を疑うのですか。」
ノヴァが視線を鋭くしながらハビット辺境伯に凄む。
「っ証拠もなにも!貴方達が来た翌日にこのようなことになったのですよ!!原因は貴方達しか考えられないでしょう!」
ハビット辺境伯は一瞬怯むも、再び大きな声でノヴァに食って掛かる。
僕は大きな声や音が苦手なのでヨハネスがすっと僕の耳を塞いでくれている。
「遅かれ早かれ、私達が来ずともこのような状況になっていたと思いますよ。原因はこの土地から妖精が消えたというだけのことです。」
「そ…そんなはずないわ…妖精がいないだけで…こんな…」
ノヴァの言葉にハビット辺境伯は愕然とした様子で僕達の対面のソファに座り込む。
「それで?ハビット辺境伯はどのような証拠を提示してくれるのですか?」
衝撃を受けているところ申し訳ないですが、僕は一刻も早くこの面倒な状況から脱却したいので話を進めます。
ヨハネスが凄く微妙な表情で見てくるけど僕気づいてません。
「…ハビット家に代々受け継がれてきた史書よ。どうやってこの領地を豊かにしてきたかが書かれているわ。」
ハビット辺境伯は疲れた様子でひとつの本を僕達に差し出した。
ノヴァがパラパラ―と読んで、しばらく目を閉じた後僕達に分かりやすく掻い摘んで史書の内容を話してくれた。
ノヴァから聞いたハビット家の史書の始まりは3代目から。
水路を確保したり、地を耕して植物を植えたりと試行錯誤しながら領民と力を合わせて土地を守り発展させてきたことがよく分かる本で、こういう時はこうすると良いなどという助言も記されており歴代当主たちの領地への熱い思いが感じ取れる。
「ハビット辺境伯様。これが王家の書庫にあった西の地にまつわる史書です。」
ヨハネスが机の上に置いた、たまに届けてもらった王家保管の史書をハビット辺境伯が手に取り読み進めていく間僕達は静かにお茶を飲んで待つ。
しばらくして重たい息を吐き出したハビット辺境伯がそっと本を閉じ、机に置いた。
「…最後に押されていた魔判は確かにハビット家のものと王家のもので間違いない…」
項垂れてぼそりと呟くハビット辺境伯の気持ちは僕には分からない。
尊敬していた先祖が妖精族の力を借りていたことへの失望なのか…それとも今まで信じていたハビット家当主の誇りの喪失か…
「妖精族の功績を我が物顔で…私は…私達は…」
ついに顔を手で覆ったハビット辺境伯の声は震えている。
「ハビット辺境伯様。初めに申し上げた通り、僕達はなにも妖精族だけの力でこの地が豊かになったとは言っていません。妖精族達の力で地が潤い緑豊かになりましたがその地を整えてきたのはハビット辺境伯達です。この地を良いものにするため妖精族に協力を申し出たのは初代ハビット辺境伯様であり、彼がそうしなければこの地は今も枯れ果てた生き物の住めない地だったでしょう。そしてこの地を他国から守って来たのは間違いなくハビット辺境伯家です。」
別に励ますつもりで言ったんじゃない。
何度も言うように僕達は最初から妖精族の存在を認め共存を目指してもらいたいだけで、ハビット辺境伯が西の地を豊かにしたわけではないとは言っていないのだ。
事実を言っているだけなので、うるうるきらきらした目で見つめてくるのは本当に辞めてもらいたい。
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