王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第5章

実はこっそり連れてきた

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「貴様ぁ!!誰かこの者を処せ!!」



肥えた国王の命令で彼の背後に控えていた護衛共が僕に向けて剣先を向け迫って来る。

こんな多くの国の王が集まるそう広くはない部屋で簡単に兵に剣を抜かせるなんて頭がイカれているとしか思えないね。




「ぐぅあ!」

「なんっがぁ!!」


剣を僕に振り下ろそうとする兵が僕の所へ辿り着く前に兵達は黒い煙に纏わり着かれ情けなく床に転がった。



「ありがとう坊。助かったよ。」


「なっ!そ、それは!!キメラ魔獣!!」


「なにぃ!?」


「だ、誰かすぐにそれを排除せよ!」




兵を床に寝かせた煙の正体は僕のペットの坊。

出会った頃より大きくなって、小さかった背中の羽や鋭く大きい立派な牙は一目見て只のオスクロマオではないことが分かる。


最初小さい頃はノヴァにも坊がキメラ種であることは隠していたのだけど、成長と共に隠せなくなりバレた時にはすっごく呆れられた。



でも坊はよく懐いて僕の言う事をきくお利口さんだったから引き離されることはなかった。







一般的にキメラ魔獣は通常の魔獣よりも力が強いので恐れられている。

人がよく通る森等で発見された時には高順位の冒険者へ討伐依頼がだされるような種である為、周りの王族達は慌てて席を立ち僕から離れて行く。


国王様はじろりと僕を睨み、隣にいるクラージュ殿下は頭を抱えている。




「大丈夫ですよ。この子は僕やこの子に危害を加えない限り貴方方を害することはありません。先程は愚かにも自分の機嫌を損ねたからと僕を殺そうとした輩が居たのでこの子が守ってくれただけです」



ほら、可愛いでしょ?と坊をずいっと前に出せば坊もあざとく首を傾げ可愛い声で鳴いた。

しかしキメラ魔獣が余程怖いのかひぃっという悲鳴が上がるばかりで誰も坊を可愛いとは言わなかった。










「ふぉっほん…キメラ魔獣をペットにするという報告は受けておらんはずだが…取り合えず今は良い。躾られておるようだしな」


「なっ!我が兵を害しておきながら躾られていると申すのか!!」


「先に刃を向けたのは其方であろう?あー…もうよい!そちらが我が国を見下し愚弄するのであれば我が国は貴様の国との国交は絶つ!」



「横暴な!!戦争だ!戦争!」




バン!!





「仮にも一国の王が軽々しく戦争するなどと口にするな!戦うのは騎士!傷つくのは民!貴様が武器を手に取り戦地に行ってみろ!戦場を掛けたこともない阿呆が軽々しく戦を口にするでない!!」


机を叩いたのは、アマ国の王。


確か彼は戦争が自国で起きれば、自ら戦地に赴いていると聞いている。
だからこの場の誰よりも戦場の過酷さや悲惨さを身に染みて分かっているからこそ、軽々しく戦争だと声を上げる阿呆が許せないのだろう。




先程は高圧的な態度で鼻で笑われたが…国王としては尊敬に値するお方だ。




アマ国王の迫力に唖然とする他国の王達をジロリと見渡して、そして僕をジロリと睨む。




「そもそも我等がアーナンダ国を不安視したのはそっちにやたらとドラゴンに好かれる奴が居るからだ。その上キメラ魔獣まで手懐けているだぁ?きっちり証明してみろよ。そいつらを使って俺達を従属させようって意思がないってことをな」



「もちろんです。そのために僕は国王様にも黙ってこの子達を連れてきたのですから」




「まてルナイス。この子とは何だ?」





アマ国王へ胸を張って言う僕にクラージュ殿下が待ったをかける。





「よく知らないから怖いのでしょ?ならよく知ってもらえばいいのです。よく知ってもらうには実際に経験をしてみないとですよ?では、広場に移動をお願いします」


待て待て待てと声を上げるクラージュ殿下を放って僕はさっさと会議室を出て広場へ向かう。


只の専門家が国王達を動かすだなんて不敬極まりないことなのは承知してるけれど、移動してもらわないと証明できないのだから仕方ないよね。







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