王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第5章

子踊る店主

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明日ノヴァが帰ってくるため、僕は頑張って早起きしてノヴァお帰り会の準備の為下町へと足を運んだ。


あちらではノヴァの魔法がとても重宝されたようで、何時もは使わない杖を使って魔力をゴリゴリ削り戦で荒れた領地を整えたり、ヒフミ殿の命を狙う者を捕まえたり、これからの未来に不安になり暴動を起こす者達を宥めたり、病人達を癒したりと働きまくったようで、2年の間に3度ほど限界を迎えた杖が粉々になったと聞いている。

今はアイダオ領も落ち着いたので今のが壊れたら次のは買わないと言っていたので、お祝に良い杖を贈ろうと企んでいる。




普段は必要ないと思うけれど、いつ何時何があるかなんて分からないし、また杖が必要になるほどのことがあるかもしれないので持っていて損はないだろう。

どうせなら良い杖を使ってもらおうと思いヨハネスから良い武器屋があると聞き下町に来たのだ。






「これなんかどうでしょう。ウォード男爵様は魔力量が多いですし魔法の扱いもとても優れておられるので杖は補助に向いた物がいいかと思います。これは魔力を回復する葉がなる木から造った物で杖事態に魔法を強くするような補助や魔力量を補う効果はありませんが魔法を扱いやすくしたり使用する魔力量を抑えるのには一番向いている杖です。」


ヨハネスおすすめの武器屋の店主はおおらかな御仁で、お店で扱っている武器全ての特徴が頭に入っているようで、どの武器のことを尋ねても詳しく丁寧に答えてくれる。




「この杖につける魔力晶を変えることは可能ですか?」


「可能ですが…杖との相性がありますので合わせることで使い物にならなくなる場合もございます」


すでにつけられている魔力晶でも十分良いと思ったのだが、変えられるなら変えたいと思い店主に尋ねると、ちょっと厳しい顔つきになった。



「できれば…その…僕の魔力晶が使えないかと思いまして」

武器への冒涜だと思われただろうかとちょっとびくびくしながら言うと、店主は顔つきを一瞬にしてほわっと変えた。


「なるほど。でしたら一度変えてみましょう。最悪取り付けた瞬間に杖が壊れた場合はお買い上げしてもらうことになりますが、それでもよろしければ」


「それはもちろん。よろしくお願いします」




微笑ましいという感情が伝わってきてむず痒い気持ちになるが、念の為に持ってきていた魔力晶を店主に渡した。










店主が杖の魔力晶を変えている間に他の武具も見て周り、ヨル達が使えそうな武器も数点買うことにした。

この2年の間に信用を得た彼等は最近になってやっと給金が支払われるようになったけれど、最初は元重罪人であった為に必要な物は申請を出して許可を得たものしか買えないよう給金はなかった。


そのことに関して彼等は文句の一つも言わなかったし、それを当然と受け入れていて最近になってもらえるようになった給金は全てアイダオ領に居る家族の元へ仕送りしているらしく自分達の武器は最初に与えられた必要最低限の武器しか使ってないことがずっと気になっていた。



一度自分達の為にお金を使いなさいって言ったら仕送りも頼まれているわけではなく、自己満足のためにやっていることだと言われてしまいそれ以上何も言えなかった。






アイダオ国民はずっと重税を強いられていて王族と貴族以外の平民達はとても貧しいくらしをしていたそうで、今でこそ回復しつつあるがまだ中には路上生活をせざるおえない状況にある孤児や新しい環境に慣れずにいる者達もいて支援が必要な状態ではある。

ヒフミ殿とノヴァを中心に土地の整備をし、領民達の生活の支援も頑張ってはいるが…元々国だったアイダオ領の領地は広くなかなか端から端まで支援が行き届かないのが現状。







大分落ち着いたからとノヴァは帰ってくるが、月の半分はまだあちらへ通わないといけないとも聞いている。






「おぉ!これはすごい!」

4人への武器を見繕ったところで店の奥から店主の興奮した声が聞こえてきた。



なんだろうかっとヨハネス達と顔を見合わせて店主が奥から出て来るのを待っていると杖を持った店主が満面の笑みを浮かべて表へと出てきた。





「ルナイス様!あなたの魔力晶でこの杖はとても素晴らしい進化を遂げましたよ!見てください!魔力晶を変えたことで、支援だけでなく防御にも向いた杖となりました!!」



まるで幼い子のように目をキラキラと輝かせて店主は杖を僕に見せてくる。

その様子は微笑ましく、見せられるまま見てみると杖は僕の魔力に反応してか一度ピカっと輝きそれを見た店主が更に興奮し小躍りを始めてしまった。






結局、良い経験をさせてもらったからとヨル達の武器はおまけって形で貰えることになり、ほくほくの僕はまたここにお邪魔しようと決めて帰路についた。







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