勘違いラブレター

ぽぽ

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「創が俺の事好きじゃなかったって知ってたし、あのチョコも創のじゃないって知ってた」

 俺は開いた口が塞がらなかった。
 え、マジで?でもあの時は全然嘘をついているようには見えなかったし、俺達両思いだ!って無邪気に喜んでいたと思っていたのに。
 湊は間抜けな顔をしている俺を見てくすくす笑う。全然笑うところじゃない。
 
「真野先輩ってチョコに書いてあったけど創の字はもうちょっと丸みを帯びてる。好きな子の文字なんて直ぐに見分けられるよ」
「は、え?ちょっと待ってください。ついていけません」
「はは、創が一生懸命嘘ついてるの可愛かったよ。首に凄い汗かいてたしキョロキョロ目を動かして挙動不審でさ」
 
 それ可愛くないだろ。ただの不審者だ。
 湊はその後も俺のエピソードを語る。恐ろしいことに言った覚えがない嘘までこの人は覚えていた。
 つまり、最初から湊は分かって好き好き言っていたのか?俺が好きじゃないって知っていながらあんなイチャイチャしてきたってこと?有り得ない。というか信じたくない。騙されていたのは俺の方だなんて。
 
「でもまさか創が俺の事をこんなに好きだなんて嬉しいよ。すっごく嬉しい。一生大切にする。今日これ額縁に入れて部屋の壁に飾るよ」
「やめてください!そんなの捨てて下さい!」
「絶対嫌だ。いやぁ、意地悪言って悪かったと思ってたけど創は俺の想像をいつも超えてくるなぁ。可愛い。ほんとに可愛い。可愛すぎて野放しにしてるのが心配だ」
 
 監禁とか首輪とか不穏な声が聞こえるのは気の所為だと思いたい。

「今日から本当に恋人になるって思って良いか?」
「ちょっと待って下さい!妹のことは?」
「ん?」
「妹を好きになったんじゃないんですか?」
「は?」
 
 蕩けるような笑みを浮かべていた湊が突如真顔になる。ヒィ、前から思ってたけどその顔怖い!
 怯えた様子の俺に気付いたのか彼は直ぐに笑顔に戻った。目は全く笑っていないが。
 
「まだ勘違いしてるのか。創はどこをどう見て妹が好きだと思ったんだ?」
「だって妹は宇宙で一番可愛い天使で男は全員好きになるのが当たり前なんで」
「創の妹へ向けるフィルターは相変わらず凄いな。確かに創と似ていて可愛いけど、創に比べたらそこら辺の雑草と変わらないよ」
「え……正気?真面目に病院行った方が良いですよ」
 
 雑草と一緒なんて有り得ない。あんなに可愛いのに、天使なのに。テレビに出ているそこら辺の女優やアイドルなんて屁でもない程可愛いのに。
 俺は本気で彼を心配すると湊は頭を抱えた。やっぱり頭をぶつけたのかもしれない。
 
「お前がどんなに妹を可愛がっていたとしても俺が可愛いと思うのは創なんだよ」
「な、なんで?妹はこの世で一番可愛いんですよ?」
「その前提がおかしい。創、目を覚ませ。お前が可愛いと思う物でも嫌いな人はいるんだ。例えば創は甘い物が好きだけど嫌いな人もいるだろう?それと一緒なんだ。お前がどんなに妹が好きでもそうじゃない人もいる。それが俺だ。分かったか?」
 
 湊がいつになく真面目な顔で俺に語った。
 成程、湊は妹が好みじゃないのか。確かにギャルが好きとかそういう趣味はあるだろう。湊はつまり男が好きだったということか。そういえば元彼がいたし。
 余計な事を思い出して心が沈む。湊は俺の顔を覗いて何故か同じように悲しげな顔をした。
 
「どうした?まだ何か悩んでるのか?この際だから何でも俺に言ってくれ」
「え、えっと、湊が好きな男性のタイプってどんな人ですか?なるべく俺合わせるんで」
 
 流石に元彼のことを思い出して落ち込みました、なんて恥ずかしくて言えないため、オブラートに包んで言った。
 けれども湊は俺の考えていた答えとは全く違うことを言った。
 
「創だよ」
「いや、その、例えば元彼のタイプを教えて欲しいっていうか」
「元彼?元カレ?元カノじゃなくて?」
「え?瑠愛先輩が元彼がいたって言ってましたけど」
 
 すると湊は再び頭を抱えて大きなため息を吐いた。
 
「創、瑠愛の事は信じるな。アイツは中学の頃から俺に付きまとって嘘ばかり言うんだ。多分その元彼ってやつは瑠愛を追い払う為に傍にいた俺の親友のことで、俺は男と付き合ったことは一度もないしゲイじゃない」
「え、じゃあ何で俺を好きに?男なのに」
「創は特別なんだ。今まで彼女が出来たことはあったが、相手の押しに負けて付き合っただけで本当に好きになったことは一度も無かった。だけど、創は男とか関係なく俺が好きになった相手なんだ」

 俺が特別だなんて。信じられなかったが、その事実は素直に嬉しかった。
 湊はそれから俺を好きになった経緯を話し始めた。
 
「初めて創を見た時、背も小さいし体力も無くてバスケ向いてないって思ったんだ。でも、へこたれず毎日練習してるところを見て応援したくなった。それで甘い物差し入れしたら嬉しそうに笑って、可愛いなって思った。それから自然と創を目で追ってたんだ」
 
 バスケ部に入部した理由は正にこの小さな身長を伸ばしたかったからだ。
 ジャンプをすれば伸びるって聞いたからバレー部と迷って入部したけども、大して成長しないし試合でも点を入れられず、悔しい思いをしながら自主練をしていた。その時、湊が親切に俺に教えてくれたり差し入れを持ってきてくれたり色々お世話になった覚えがあるが、まさかその時から好意を寄せていたとは思わなかった。単にお人好しな先輩なのかと思ってた。
 
「廊下で他の奴らと笑ってるのを見たら羨ましくて仕方なくて俺も創と同じ一年だったらって何度も思った。同時に創が女だったら俺が付き合って独り占めできるのに、って想像してさ。そこで創が好きなんだって気付いた。それから創の色んなところを知る度にもっと好きになってさ」
 
 話を聞くうちにどんどん頬が熱くなってきた。こんなに想われていたことに気付かなかった自分が情けない。
 湊は少し屈んで俺と目を合わせて口を開いた。
 
「俺の初恋は創なんだ。この先も創しか好きになれない」
 
 色んな感情が込み上がる。俺は思わず湊を抱き締めた。すると湊は戸惑いながらも俺を優しく包み込んだ。トクトク、と心臓が速く鼓動する音が聞こえる。俺も同じでさっきから心臓が痛い程鼓動して苦しい。でも、その苦しさも今は幸せで堪らなかった。
 
「俺も、湊が好きです。一番大好きです」

 そして俺達の勘違いは無事解けて、正式にお付き合いをすることになった。
 妹へ報告に行き、何故か湊と妹がバチバチに喧嘩してるのも、作り直したチョコレートを渡すのも、湊の過保護が激しくなるのも、そう遠くない未来である。
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