好きだからキスしたい

すずかけあおい

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好きだからキスしたい①

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甘く柔らかなキスの後、唇が離れて瞼を上げると整った顔が目の前にある。このとき、どこを見ていいのかいつもわからない。その眼前の端正な顔が思案するような表情をした。

「たまには実晴みはるからキスしてみろ」

玲央れおくんの言葉に固まってしまう。俺からキスをする? 玲央くんに? ぶわっと顔が熱くなった。

「そ、そんなの恥ずかしいよ……」

思わず俯いてしまう。みんなの憧れの玲央くんと付き合えていることだって恐れ多いのに、俺からキスをするなんて……。

「嫌なのか?」
「い……や、じゃない、けど」

嫌じゃない。全然嫌じゃない。嫌なわけない。でも――。

「いつも俺からだろう。というより俺からしかしたことがない。俺は実晴からのキスが欲しい」
「っ……」

顎を持たれてくいっと上を向かされ、また玲央くんと目が合う。まっすぐ見つめられると恥ずかしすぎて落ち着かない。

「そもそも、付き合って半年も経つのにキス止まりだからな」
「ま、まだ五か月だよ……」
「あと一週間と一日でちょうど半年だ」

こういうところ、昔から変わらない。つい笑ってしまうと、玲央くんの片眉が上がった。

「余裕だな」
「えっ」
「それならしてみろ」
「してみろって……」
「ほら」

玲央くんが目を閉じる。その顔がすごく綺麗で見惚れてしまう。ぼんやりと見入っていたら、瞼が上がって睨まれた。

「なんでしない?」
「だって」
「実晴」
「……恥ずかしすぎるよ」

想像しただけで頬が熱い。今すぐ逃げ出したいくらいだ。でも玲央くん逃がしてくれるはずがない。唇を指でなぞられてびくりと震えてしまう。玲央くんの表情が色っぽすぎて見ていられない。本当に同い年かなと思うときがある。

「実晴は昔から思いきりが足りないな」
「……」

玲央くんは幼馴染で、恋人。
色素の薄い髪が陽の光に当たるとキラキラするのが綺麗だといつも思っていた。その明るい茶色の瞳に特別に映るのは誰だろうと思っていたら、俺だった、なんて夢のよう。
ぼけぼけした俺をいつも助けてくれる、しっかり者の玲央くんがずっと好きだったし、今も大好き。同じ高校に行けたのも、玲央くんが勉強を見てくれたから。玲央くんは、「実晴と同じ高校じゃないと嫌だから勉強を見るのは俺のためだ」と言っていたけど、そんなのは絶対俺に気を遣わせないために決まってる。本当に、どんなに感謝しても足りない。

玲央くんから高校に入ってすぐに告白されて、すごく嬉しかったけど付き合う勇気がなくて……どう返事をしていいかわからないから悩んでいたはずが、気がついたら付き合っていた――不思議。
付き合って二か月の日に初めてキスをした。ぴったり二か月だと玲央くんが言っていたからそうだ。
誕生日や記念日を大切にする玲央くん。いつかはうちのお父さんとお母さんが結婚記念日を忘れていたのに玲央くんが覚えていたということもあった。
初めてのキスの日からもう数えきれないくらいキスはしているけれど、いつも玲央くんから。それが彼には不満だったようだ。

「実晴」
「はっ、はい」

低い声で名前を呼ばれ、ぴんと姿勢を正す。玲央くんが声変わりしたときのことを突然思い出してしまった。あのときはどきどきした。俺よりはっきり声が低くなって、“男の子”じゃなくなったとわかった。

「キスしろ」
「……」

しろ、と言いながら顔を近づけてくる玲央くん。わ、と思ったら唇が重なった。

「真似してやってみろ」
「そ、そんな……できないよ、玲央くん」

恥ずかしすぎる。頬が熱い。俺が頬を両手で押さえていると、またキスをされた。びっくりして飛び上がりそうになる。

「……仕方ない。今日は可愛い実晴が見れたことで満足ということにする」
「玲央くん……」
「送ってく」

玲央くんが俺の通学バッグを取る。もうそんな時間か。ふたりでいると時間が経つのが早い。たぶんカーテンの向こうは暗くなっている。

「隣だからひとりで帰れるよ」

わざわざ送ってもらう距離じゃない。玲央くんからバッグを受け取ろうとすると、ひょいと隠された。

「一秒でも長く一緒にいたいのは俺だけか?」
「……」

嬉しくて口元が緩んでしまう。玲央くんのこういうところ、本当に大好き。

「ううん。俺も玲央くんと少しでも長く一緒にいたいから、やっぱり送ってくれる?」
「言われなくても送る」

もう一回キスをもらってから、ふたりで玲央くんの部屋を出る。階段を下りて、玄関を出て、うちの前まで。

「また明日」
「うん。ありがとう、玲央くん」

手をぎゅっと握り合って、明日までお別れ。この後もメッセージアプリでやり取りをするんだけど、今日会えるのは最後だから。
握り合った手をじっと見る。この手を離したら、玲央くんは帰っちゃうんだよな、と思うと離したくない。でも、いつまでもこうしているわけにはいかない。玲央くんの手を見つめる。

「実晴」
「えっ」

おでこをくんっと指で押されて顔が上がる。そこには玲央くんの不機嫌顔。

「どこを見てるんだ」
「ごめん……」

頬を軽くつねられる。手が離れて、指の腹で唇をなぞられた。

「明日は期待している」
「えっ」
「じゃあな」

玲央くんは優しく微笑んでから帰って行った。


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