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好きだからキスしたい④
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昨日は幸せだったな、とまだふわふわしながら玲央くんが待つ教室に戻る。俺は委員会の集まりがあったから、その間玲央くんは待ってくれている。少し足早に廊下を進んで教室に入ると、玲央くんとクラスメイトの山原くんが楽しそうに喋っていた。
「実晴」
「あ、実晴くん戻ってきたね。じゃあ俺は帰るかな」
まず玲央くんが俺に気づく。山原くんは俺が戻ってきたのを見て、通学バッグを持ち、教室を出て行ってしまう。山原くんは玲央くんとたまに喋ったりしていて、仲がいいと言えばいい、かもしれない。
「邪魔しちゃった?」
「いや、実晴を待っていると言ったら付き合ってくれていただけだから大丈夫だ。帰るか」
「……うん」
なんだかもやもやする。玲央くんが俺以外といたことが、俺以外と楽しそうにしていたことがあまり面白くない――なんて、すごく心が狭い。さっきまでのふわふわな幸せ気分が一気にしぼんでしまった。風船から空気が抜けたみたいだ。
「実晴? どうした」
「ううん。なにもないよ?」
「そうか?」
玲央くんにこんな醜い気持ち、知られちゃいけない。なんでもないようにして玲央くんと一緒に帰る。いつものようにお隣にお邪魔して、玲央くんの部屋に行く。
隣り合って座ったら抱き寄せられた。まだちょっともやもやがあったけれど、どきどきにかき消されてただ玲央くんの体温を感じる。
「そういえば、山原がさっき――」
山原くん……?
玲央くんの唇が俺の名前以外の形に動き、もやもやが復活する。ちょっとした話をしているだけなのに、お腹の中に黒いものが溜まっていく。
「実晴?」
玲央くんが俺の様子がおかしいことに気がついたようで、小さく首を傾げる。少し高い位置にある肩に手を置き、唇を重ねて動きを強引に止めた。俺以外の名前を呼ばないで。顔を離して玲央くんを見つめる。
「実晴……?」
「あ……」
キスしちゃった……。しかもこれ、完全に嫉妬でのキスだ。初めて俺からしたキスが嫉妬からしたキスなんて、そんなの嫌だ。
驚いた顔をしている玲央くんにぎゅっと抱きついて、もう一回、えいっとキスをする。顔を離したら、後から頬が熱くなってきた。
「……昨日のリベンジか?」
「今のは、リベンジ」
すごい勢いで顔が熱くなっていく。どこまで熱くなるんだろう。頬を手で押さえると、その手を玲央くんが取ってぎゅっと握られた。
「じゃあ一回目のは?」
「……」
言いたくない……。山原くんに嫉妬してキスしたなんて、嫌われちゃうかも……。
つい俯くと、玲央くんが握った手の先にキスをして俺の顔を上目遣いに見る。
「教えてくれ、実晴」
……そんな顔、ずるい。かっこよすぎてくらくらする。
「……一回目のは、嫉妬」
「嫉妬?」
上目遣いのまま玲央くんが聞くので目を逸らす。その角度と表情は心臓に悪すぎる。どきどきがどんどん加速していく。
「玲央くんが山原くんと楽しそうに話してたときから、嫉妬してた。それでさっき、玲央くんが山原くんの名前呼んだのが……嫌で……」
「……そうか」
呆れられたかな。嫌われたかもしれない。ぎゅっと目を閉じて俯くと、握られていた手が離されて、かわりに頬が温かい両手で包まれた。
「目を開けて俺を見ろ」
「……」
ゆっくり瞼を上げて玲央くんを見る。穏やかな瞳をして俺を見ている。呆れられていない、みたい……?
「リベンジは、昨日のリベンジか?」
問いかけに首を横に振る。
「……初キスリベンジ」
「初キスリベンジ?」
頷く。呆れられていないみたいだから、ちゃんと説明しよう。
「……俺からの初めてのキスが嫉妬からのキスなんて嫌だから、リベンジ」
「それで初キスリベンジか」
玲央くんが笑い出す。なにかおかしかったかな、と見ていたら、わしゃわしゃと髪を撫でられて抱き締められた。苦しいくらいぎゅうっとされる。
「れ、玲央くんっ」
「嫉妬する恋人はこんなに可愛いんだな」
ぎゅうぎゅう抱き締められて、玲央くんが力いっぱい喜んでいるのが伝わってくる。まさか可愛いなんて言われると思わなかった。顔が見たくなったからもぞもぞと動き、身体を少し離して玲央くんの顔を見る。
「嫉妬なんてしたら玲央くんに嫌われちゃうかと思った」
「俺が実晴を? 嫌うはずないだろう」
両頬を指で軽くつままれてふにふにと上下に動かされ、今度は俺が笑ってしまう。
「もう……玲央くん、やめて」
手が離れて、玲央くんがまっすぐ俺を見つめてくれる。
「ごめんな、嫉妬させて。話してくれてありがとう」
「ううん。俺こそ、嫉妬してごめんね」
「謝ることじゃない」
「玲央くんこそ」
なんだかおかしくてふたりで笑っていたら不意に目が合って、玲央くんが真剣な顔になる。
「実晴、嫉妬でもリベンジでもないキス、してくれるか?」
「え……」
「無理にとは言わないが」
「……」
俺も……したい。
どきどきしながら玲央くんの手を握ると、握り返してくれた。
「じゃあ……目を閉じて?」
玲央くんが目を閉じてくれる。どきどきしながら顔を寄せて、ゆっくり唇を重ねた。嫉妬でもリベンジでもない、ちゃんとしたキス。唇を離して瞼を上げると、俺より少し遅れて玲央くんが目を開ける。
「好きだよ、玲央くん。大好き」
「俺も実晴が大好きだ。実晴からのキスは幸せだな。また欲しい」
「うん……玲央くんみたいに簡単にはできないけど」
俺の言葉に玲央くんが笑うので、なにかおかしいことを言ったかな、と首を傾げる。
「俺が簡単にしていると思っていたのか?」
「? うん」
「毎回心臓がおかしくなるくらい、どきどきしているぞ」
「えっ、本当!?」
玲央くんがどきどき!?
顔にも態度にも全然出ていないけど……。
「本当だ。実晴にキスをするのに、簡単になんてできない」
頬を撫でられる。玲央くんも俺と同じなんだと思ったら嬉しくなった。
「じゃあ、どきどきしながらいつもたくさんキスしてくれてるの?」
「実晴が好きだからキスしたいんだ」
柔らかなキス。今も玲央くんはどきどきしてるんだ、と玲央くんの左胸に触れる。確かにどきどきしてるかも。でも絶対俺のほうがどきどきしてる。
「俺も、玲央くんが好きだからキスしたい……」
もう一回玲央くんに顔を近づける。どきどきして恥ずかしいけど、俺からのキスは玲央くんの幸せだから。
そっとキスをした。
(終)
「実晴」
「あ、実晴くん戻ってきたね。じゃあ俺は帰るかな」
まず玲央くんが俺に気づく。山原くんは俺が戻ってきたのを見て、通学バッグを持ち、教室を出て行ってしまう。山原くんは玲央くんとたまに喋ったりしていて、仲がいいと言えばいい、かもしれない。
「邪魔しちゃった?」
「いや、実晴を待っていると言ったら付き合ってくれていただけだから大丈夫だ。帰るか」
「……うん」
なんだかもやもやする。玲央くんが俺以外といたことが、俺以外と楽しそうにしていたことがあまり面白くない――なんて、すごく心が狭い。さっきまでのふわふわな幸せ気分が一気にしぼんでしまった。風船から空気が抜けたみたいだ。
「実晴? どうした」
「ううん。なにもないよ?」
「そうか?」
玲央くんにこんな醜い気持ち、知られちゃいけない。なんでもないようにして玲央くんと一緒に帰る。いつものようにお隣にお邪魔して、玲央くんの部屋に行く。
隣り合って座ったら抱き寄せられた。まだちょっともやもやがあったけれど、どきどきにかき消されてただ玲央くんの体温を感じる。
「そういえば、山原がさっき――」
山原くん……?
玲央くんの唇が俺の名前以外の形に動き、もやもやが復活する。ちょっとした話をしているだけなのに、お腹の中に黒いものが溜まっていく。
「実晴?」
玲央くんが俺の様子がおかしいことに気がついたようで、小さく首を傾げる。少し高い位置にある肩に手を置き、唇を重ねて動きを強引に止めた。俺以外の名前を呼ばないで。顔を離して玲央くんを見つめる。
「実晴……?」
「あ……」
キスしちゃった……。しかもこれ、完全に嫉妬でのキスだ。初めて俺からしたキスが嫉妬からしたキスなんて、そんなの嫌だ。
驚いた顔をしている玲央くんにぎゅっと抱きついて、もう一回、えいっとキスをする。顔を離したら、後から頬が熱くなってきた。
「……昨日のリベンジか?」
「今のは、リベンジ」
すごい勢いで顔が熱くなっていく。どこまで熱くなるんだろう。頬を手で押さえると、その手を玲央くんが取ってぎゅっと握られた。
「じゃあ一回目のは?」
「……」
言いたくない……。山原くんに嫉妬してキスしたなんて、嫌われちゃうかも……。
つい俯くと、玲央くんが握った手の先にキスをして俺の顔を上目遣いに見る。
「教えてくれ、実晴」
……そんな顔、ずるい。かっこよすぎてくらくらする。
「……一回目のは、嫉妬」
「嫉妬?」
上目遣いのまま玲央くんが聞くので目を逸らす。その角度と表情は心臓に悪すぎる。どきどきがどんどん加速していく。
「玲央くんが山原くんと楽しそうに話してたときから、嫉妬してた。それでさっき、玲央くんが山原くんの名前呼んだのが……嫌で……」
「……そうか」
呆れられたかな。嫌われたかもしれない。ぎゅっと目を閉じて俯くと、握られていた手が離されて、かわりに頬が温かい両手で包まれた。
「目を開けて俺を見ろ」
「……」
ゆっくり瞼を上げて玲央くんを見る。穏やかな瞳をして俺を見ている。呆れられていない、みたい……?
「リベンジは、昨日のリベンジか?」
問いかけに首を横に振る。
「……初キスリベンジ」
「初キスリベンジ?」
頷く。呆れられていないみたいだから、ちゃんと説明しよう。
「……俺からの初めてのキスが嫉妬からのキスなんて嫌だから、リベンジ」
「それで初キスリベンジか」
玲央くんが笑い出す。なにかおかしかったかな、と見ていたら、わしゃわしゃと髪を撫でられて抱き締められた。苦しいくらいぎゅうっとされる。
「れ、玲央くんっ」
「嫉妬する恋人はこんなに可愛いんだな」
ぎゅうぎゅう抱き締められて、玲央くんが力いっぱい喜んでいるのが伝わってくる。まさか可愛いなんて言われると思わなかった。顔が見たくなったからもぞもぞと動き、身体を少し離して玲央くんの顔を見る。
「嫉妬なんてしたら玲央くんに嫌われちゃうかと思った」
「俺が実晴を? 嫌うはずないだろう」
両頬を指で軽くつままれてふにふにと上下に動かされ、今度は俺が笑ってしまう。
「もう……玲央くん、やめて」
手が離れて、玲央くんがまっすぐ俺を見つめてくれる。
「ごめんな、嫉妬させて。話してくれてありがとう」
「ううん。俺こそ、嫉妬してごめんね」
「謝ることじゃない」
「玲央くんこそ」
なんだかおかしくてふたりで笑っていたら不意に目が合って、玲央くんが真剣な顔になる。
「実晴、嫉妬でもリベンジでもないキス、してくれるか?」
「え……」
「無理にとは言わないが」
「……」
俺も……したい。
どきどきしながら玲央くんの手を握ると、握り返してくれた。
「じゃあ……目を閉じて?」
玲央くんが目を閉じてくれる。どきどきしながら顔を寄せて、ゆっくり唇を重ねた。嫉妬でもリベンジでもない、ちゃんとしたキス。唇を離して瞼を上げると、俺より少し遅れて玲央くんが目を開ける。
「好きだよ、玲央くん。大好き」
「俺も実晴が大好きだ。実晴からのキスは幸せだな。また欲しい」
「うん……玲央くんみたいに簡単にはできないけど」
俺の言葉に玲央くんが笑うので、なにかおかしいことを言ったかな、と首を傾げる。
「俺が簡単にしていると思っていたのか?」
「? うん」
「毎回心臓がおかしくなるくらい、どきどきしているぞ」
「えっ、本当!?」
玲央くんがどきどき!?
顔にも態度にも全然出ていないけど……。
「本当だ。実晴にキスをするのに、簡単になんてできない」
頬を撫でられる。玲央くんも俺と同じなんだと思ったら嬉しくなった。
「じゃあ、どきどきしながらいつもたくさんキスしてくれてるの?」
「実晴が好きだからキスしたいんだ」
柔らかなキス。今も玲央くんはどきどきしてるんだ、と玲央くんの左胸に触れる。確かにどきどきしてるかも。でも絶対俺のほうがどきどきしてる。
「俺も、玲央くんが好きだからキスしたい……」
もう一回玲央くんに顔を近づける。どきどきして恥ずかしいけど、俺からのキスは玲央くんの幸せだから。
そっとキスをした。
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