永久糖度

すずかけあおい

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永久糖度

永久糖度④

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 今日は一日叶が静かで変な気分だった。不気味と言ったら言いすぎかもしれないが、違和感がすごかった。帰りの今もまだ叶は口を開かなくて、ずっとなにかを考え込んでいる様子だ。
「平和すぎる」
 つい呟いてしまうくらい、叶がおかしい。勝手なもので、しつこくくっつかれたらうるさがるくせに、静かだと物足りなく感じる。それにうるさいほうが叶らしくて、ほっとする。
「恵吾」
「おー、考えごと終わったか?」
「本当の恋愛ってなに?」
 ぴたりと足が止まる。叶を振り仰ぐと、真剣な瞳を恵吾に向けている。
「『本当の好き』ってなに?」
 今さらなにを、と思うのに焦りが生まれた。叶の迷いが瞳の色から見て取れる。
「叶?」
「……俺の恵吾への好きってなんだろう」
 緊張でどきりと心臓が跳ねる。なにかおかしな結論を出そうとしているのではないだろうか。
「これは『本当の好き』なのかな」
 今さらなに言ってんだ、と一蹴することもできる。でもそれで解決する問題ではないとわかる。今迷っている叶が出した答えによっては、恵吾から離れていくのかもしれない。真っ暗な穴にはまったような恐怖が突如襲ってきた。
「本当の好きって……なに言ってんだよ」
 指先が震えるのを、ぎゅっと手を握り込んで隠す。動揺を悟られたくないのに、声まで揺れてしまう。
「恵吾はわかるの?」
「それは……わからないけど。でも、叶が迷うのは違うだろ」
「どうして?」
 真剣に問われるとなんと返したらいいかわからないけれど、叶はそんなことで悩むような男ではないはずだ。恵吾が嫌がっても好意を向けてきて、ぐいぐいと押してくる。それが叶で、そうしない叶なんて違う。
「……」
 本当にそうなのか。ただ恵吾が叶をわかっていなかっただけではないか。叶は繊細なところがある。こういう悩みをいつもかかえていたのかもしれない。それに気がつけていなかったのではないだろうか。
「悪い。先帰る」
 叶を置いて走り出す。これ以上問いかけられても答えられないし、せつなさに圧し潰されそうだった。
 叶はなにがあっても恵吾の味方で、恵吾を好きだと言ってくれると思い込んでいた。そんな自分がいかに叶の好意の上に胡坐をかいていたかを思い知らされる。息切れの苦しさ以上に胸に迫ってくるものがあった。
「叶の馬鹿」
 いつもみたいに、自信満々に「恵吾が好き」って言えよ。
 叶以上に、自分のほうが彼に多くを求めていたのだろうか。考えても考えてもわからなくて、ただもやもやが心の内にいつまでも渦巻いた。
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